見出し画像

手紙の香り

透明な手紙の香り。
一言でいえば、そんなところだろうか。
私には到底届かない。
あぁ、負けた…と。

好きになった人との別れ。
そこに登場する、この手紙。
不思議なことに、今までにも同じことが起こった。

「これで、三回目か…」

彼の部屋のデスク、本棚の一番端から少し顔を出している紙。

淡い絵の具がにじんだような、やわらかい色。

手に取らなくてもわかる。
あれは、彼へ綴られた手紙。
私ではない、誰かからの。
中には、透明な香りのする手紙が入っている。

女の勘というものは、こういう時、よくはたらく。


好きになる人は、手紙が好きな人だった。
純粋な気持ちが綴られたその紙は、いつだって透明な香りがするのだ。

私の手紙も、そうだったのだろう。


透明だった私の手紙にも、いつしか色がつく。
お互いを知れば、ずっと透明でなんていられない。

それでいい。
それが、楽しい。
そう思っていた。

最後くらい、もう一度。
透明な、純粋な。
自分の気持ちだけを置いていこう。

かつて透明な香りのする手紙を書いていた私だ。書けないこともないだろう。

選んだ便箋は、空色。
純粋な気持を、はっきりとくっきりと綴った。

透明な香りは、しない。
今日の空のような、爽やかな香りがすると信じている。




小牧幸助さんの楽しい企画に参加させていただきました。
(ん〜…でも!文章書くの難しくて。
楽しい、難しい、苦しい…なんとか乗り越える。やっぱり楽しい!そんな感じです。笑)



この記事が参加している募集

#やってみた

37,232件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?