あちらこちらぼくら、BLについて(随時更新)

※「あちらこちらぼくら」のネタバレを含みます。

たなと先生作の「あちらこちらぼくら」という漫画がとても好きだ。漫画のジャンルとしてBLに振り分けられるが、連載はBL漫画の雑誌ではなかった。主に青年漫画が掲載されているマンガワンというアプリである。連載当時から愛読していた私は、結末がどうなるか分からずドキドキしながら読んでいた。しかしたなと先生は主にBL漫画を描いており、ストーリーも男子高校生二人の友情がメインの日常を描くものであったので、結末の想定はしていた。つまり最終的にお互い恋愛として好きになり、二人が付き合う形で物語が終了するというものである。

最終回が掲載された当時、コメント欄は賛否両論に分かれた。多くの女性読者、というと差別的なので多くのBL漫画愛読者は納得していたかのように思える。作者の他の作品を知っている者、または二人の友情とも言えない関係が愛に変わる事を望む者は少なくなかったと思う。しかし、その中にも今までのストーリーから急に数年後、同棲する二人が描かれていた事については少し不満の声が上がっていた。また、二人は友情のままで終わってほしかったと言っている人もいた。

私はそのコメント欄を見て、どちらにも共感が出来た。もともと二人の関係性を中心にストーリーが展開する漫画であり、漫画だけど思った事を言葉にしない行間を読む部分もあり、人物の心情が読めない所も多かった。しかし現実では当たり前のことで妙にリアルさがあった。私は二人の心の距離感が近くなる度ときめいて、二人がやがて結ばれる未来を思った。しかし、この伝えたくても伝えられないムズムズ感があるままでいてほしいとも思った。今まで友達だった人が、恋人になるところはなぜか見たくないとも思っていた。実際、BL漫画では思いが通じ合って性行為をするという流れが描かれる。私は他のBL漫画でもその性行為は見たくないと思ってしまう時がある。

少女漫画では男女が出会い、好きになって最後告白するシーンがクライマックスである。私が少女時代読んでいた漫画は、その先二人が付き合うなどの後日譚が描かれることはあまりなかった。それに慣れ親しんでいるから見たくないというわけではない。現在はBLがジャンルとして成立し、商業BLは膨大な量が発刊されており、様々な物語が描かれている。私が思っていることは、その中で良し悪しは必ずあり、最後の性行為シーンを見たいがために存在している漫画もある。悪い方向に思い出補正されているかもしれないが、エロ漫画同然の内容もある。

私は人物の心情変化が繊細に描写されている漫画が好きで、BLこそその描写に作家の力量が見られると思っている。「あちらこちらぼくら」には、繊細過ぎて逆に伝わりにくい程に描かれている(読めていないのは私の読解力の乏しさのせいでもある)。

たなと先生はポップでどこか懐かしさがある作画が魅力である。デビュー作の「スニーキーレッド」は、暴力に快楽を覚える主人公とすぐ手を出す男との特殊な関係性の物語であり、私はそれを読んで少し敬遠してしまった。それくらいBLは普遍的な物語からニッチな趣味を盛り込んだものまである。しかし、たなと先生の漫画には他の作家さんにない独特さがあり忘れることはなかった。

何かのきっかけで、スマホにマンガワンというアプリを入れて掲載されている漫画を読んでいた時期があった。そして、そこで「あちらこちらぼくら」という漫画に出会ったのである。これから、ストーリーの詳細について触れていこうと思う。(続)

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