忘れないうちに書いておきたい

2020年1月 メキシコを訪問していた神社仏閣ライター・小嶋独観さんへの取材お礼メールに「日本は新型コロナの影響が心配ですが、どうぞお気をつけて」なんて書いていた時には、全く遠い国の話のようだった。

2020年2月 カリブ海にあるコスメル島を訪問中、クルーズ船を眺めながら「あの客船、まさかアジアからじゃないよな?」なんて軽口を叩く某雑誌社のカメラマン。彼の発言と私の顔を見比べながら、曖昧な反応をしていたメキシコ人ライターたちの表情を見ていた時も、新型コロナはやっぱり自分とは関係ない話のままだった。

2020年3月 グアナファト州観光省の人々を従えてのお大尽旅行中、これからメキシコの観光への影響はどうなっていくんだろう、なんて話をしていながらも、それでもまだ自分は大丈夫、とゆったり構えていた。

2020年4月 新型コロナの影響下で半減する給与(しかもそれがいつまで続くかわからない)と、この期に及んで今回の更新時にガンと上がる家賃という不均衡に対応するために、取り急ぎ手狭で安いアパートを探し、5月号の校了から退去期間ギリまで使った1週間で引っ越しをしなきゃならない、というタスクを負う。

この3月と4月の間の落差たるや。そしてここまできてようやく、新型コロナの影、のようなものを感じるに至った訳。ニュースであれだけ毎日、世界で何人の人が亡くなっているかと数字は見ていても、結局は自分に影響がない限りは他人事なんだな、というのがよくわかる。

さりとて。

一度新居に落ち着いてしまえば通常営業。私は来月号の打ち合わせを始め、娘もオンライン授業を再開し、夫はなぜか家の中でポケモンGOをやっている。完全に、いつも通り。

ちょっと前まで、悲壮感すら抱いて荷造りしていたのに今日はもう本を読みながらソファでゴロゴロしている私ってなんなんだろう。新型コロナの影「のようなもの」を感じたアレはなんだったんだろう。

生理前独特の気分の浮き沈みもあいまって、普段だったら瞬間的に流してしまうようなこともなんとなく心に引っかかってしまったのではあるが。

結論として。こんなにすぐに「通常営業」と、少なくとも気持ちの上では思えるようになれたことは本当にありがたい。身勝手なようだけれど、この緊急事態と言われる世の中をいつも通りで過ごせるって、この上ない贅沢だろう。

図々しい私は、多分、このありがたさをすぐに忘れちゃいそうなので、近い将来の私への自戒の意味も込めて、今日はこれを書いておこうと思った次第。



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