【小噺】木陰で休もう
「あっつ〜い!!!おい、あそこの木陰で休もう、死ぬ!」
鴨川をテクテク歩いていた我らは
今年猛暑に参りましたと白旗を上げ
河原の大きな木の下のベンチに腰を落とした。
「いや、もうなんやねん。台風は来るわ、地震は起きるは、火山は大爆破!そしてトドメの疫病や」
「あぁ、もうどうにでもなれだな」
「ほんまに。そんでこの猛暑やろ、フザてとんのか?」
「誰が?」
「神様やないかい」
「あぁ、神様はいつだってふざけとるな」
「ほんまにな!…しかし、なんやな。こんなに暑いのにコロナってやつはなんで元気やねん?人間の方が死にそうやっちゅーのに」
「あはは、ほんま君死にそうな顔しとるわ」
「なんやねんお前は。つーかコロナはそんな強いんかいな」
「いや、それほど強くはないはずだ」
「んじゃなんでやねん?」
「そこは俺らと一緒だよ」
「…?なにが?」
「木陰で休んでいるんだよ」
「はぁ?」
「ウイルスは人間の体内にいるわけだから、多少外が暑かろうと問題ないんだよ」
「いやでも人間に熱が出ることもあるやんか」
「それでもせいぜい40度までだろ?」
「あぁ、そっかー」
「そんで、そうなったら人間ちゃんと木陰というか、部屋に入って休んでくれるからな。ウイルスにとっちゃ人間は安心な部屋なんだよ」
「あぁ、そっかー…ってお前なんかウイルスの肩持つな、お前はウイルスの味方なんかいや?」
「…、いや味方というか俺がウイルスなんだよ」
「はぁ?…なに言うてんねん?」
「うーん、まぁ体は人間やねんけどな、今はウイルスの我々が脳を支配して乗っ取ってる、っつーことなんだよね」
「…はぁ?お前熱あるんちゃうか?」
「と言うか君、いくら外やから言うても三密は守らなあかんで」
「…?」
「こんな近くで大声で喋って、移ってしまうがな」
「…ん?…けほっ!」
「どや、なんか頭ボーッとして来たやろ?…それ熱中症と違うで」
「…いや、ちょ、ちょっと待てや!…あれ?」
「ふふふ、ええねんで。体は大丈夫や。基礎疾患とかなかったり老人じゃなければ大丈夫」
「…」
「我々は増えることが仕事や、こうやって人間に取り憑いてごそっと増える」
「…ふふっ」
「そしていっぱいになったら、外に飛び出して、また仲間を増やす。な、簡単やろ?」
「…よし」
「お、完了したか?」
「ん…まだ完全じゃないが、そのうち馴染むだろう」
「よっしゃ、そんじゃ飲みに行こか!」
「おぅ、そうだ。ビアガーデン。ビアガーデン行こ」
「そら、ええ考えや。行こ行こ」
『わははははははは!!』
とても愉快な昼下がり。
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