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なんでもないこと 3

バイブル

バイブルとは、
1.聖書。キリスト教の経典。
2.(その方面で)権威のある価値の高い書物。
そして3つ目の意味として、自分に大きく影響を与えたものを表す言葉でもある。それは、本でも映画でも、歌でも何でもいい。

たまに近所の図書館に行って、気になったものを借りて帰る。忙しかったり、読む気がなくなったりして読まずに返すことも多々。「タダ」で借りられるのは大変ありがたいが、『読むぞ!』のモチベーションは支払いが生じたときと比較して、どうしても低くなるのは人間の性か。わたしの意識の低さか。

借りた4冊の本を一切読まずに返しに行った日、わたしのバイブルを見つけた。

灰谷健次郎さんの書籍だ。

教育に携わる人なら知らない人はいないと思う。わたしも教育学部に通っていた頃、教授に勧められて読んだ。有名なのは『天の瞳』シリーズ。内容は思い出せないのに、読むたびに涙があふれたことだけ覚えている。

借りたのは『兎の眼』
教師を辞めた後に書いた、灰谷さんのデビュー作であった。
これも当時読んだはずだけど覚えていない。
とある小学校で起こる様々な出来事が、1年生の鉄三と小谷先生を中心に描かれている。

時間があったので図書館のイスで序盤だけ読んだ。
鉄三がカエルを殺すという衝撃的な物語のスタート。その場面をイメージすると、顔が引きつるくらい、映像化するとR指定入りそうなくらい、インパクトがあった。

あとで鉄三の行動の理由は明らかになるわけだけど、彼はほとんど口をきかないし、授業も聞かないし、誰かと仲良くすることもない。だから様々な問題が起こしてしまう。今で言うと発達障害とか自閉症の類を診断をされるであろう生徒だ。

ただ、小谷先生はひたすらに鉄三と向き合う。向き合って受け入れて少しずつ理解して愛を深めていく。もちろん鉄三だけではなく他の生徒とも。

そうして様々な困難に生徒と共に立ち向かい、問題を解決していく。

教師や大人が「上」ではない。同じ人間として尊重し、ともに生きていくことを求め続ける。

だからこそ、小谷先生と鉄三の心が通ったシーンに胸が熱くなった。
マクドナルドで涙をこらえるのに苦労した。

そして、人に優しくありたい、と心から思う。
だけど、優しくできてないな、と心から反省する。

最近、人に対してイライラしたり、冷たくしてしまったり、そういうことが多かった。そうなってしまう自分も嫌になって、負の繰り返しが続いていた。本当に優しい人は、「優しくありたい」なんて思わなくても優しくできるのだから、わたしは努力しないと優しくいられない人間なのだ。

そんな時に何十年ぶりに灰谷さんの本と再会した。

そして、優しさの意味を考えた。

言葉にするのは難しい。
だが、ぼんやりと、でもちょっとだけ温かな輪郭が見えた。

手紙

20年来の友人に手紙を書いた。
誕生日のお祝いが、まだだった。
プレゼントに添えるメッセージではなく、ちゃんとした手紙。
自筆で。かわいい便箋に書いて、封筒に入れて。

粋なことでも書きたいけれど、ぶっつけ本番はなかなか難しい。
でも下書きなんてのは野暮だ。
ただ頭に浮かんだことを整理しながら、そして愛をこめて。

字は不安定になる。
丁寧に書こうとするが、書きたい言葉が手を追い越して、雑な文字になる。
脳みそと手を動かす神経は繋がってるはずなのに不思議。

パソコンだったら、スマホだったら、何度も消して書き直せるけど、手紙はそうはいかない。いやもちろん紙を破り捨てて、また書けばいいけど、そういうもんじゃないだろ?

書けた手紙に満足した。
あながち文章を書き続けてきた意味がなかったわけではない。
読んだ友人の感想はさておき。

手紙はいい。
たまに書こう。


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