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全てを滝に流したら。

旅のくだらない噺手帖「ミャンマー・ラオス旅編」
前回『托鉢とゲテモノ市場、消えた傘。』も是非お読みください。

朝ご飯を済ませた私たちは、昨夜申し込んだシェアタクシーに乗って、クアンシーの滝へ向かうことになっていた。メコン川下流にある絶景の地で、なんと泳ぐことも出来るという。どうしてか私は「絶対に泳ぐぞ!」と、そう心に決めていた。

しかし市内からは約1時間かかると聞いたときは恐怖だった。なぜなら私のお腹は調子が悪い。そしてその頃には友人も同じようにお腹を下していた。ネットで調べるとそれは「旅行者下痢症」であることが分かった。原因は水や生物、香辛料、油などが原因だとある。さすがに水道水は飲んでないが、生野菜を食べたし、辛い物も食べた。しかし、何よりもピンと来るものがあった。

「油だ、油に違いない」と。

ミャンマーでのオイルライス(詳細はコチラ)がここに来て、本気を出してきたと見える。どうあがいても、なってしまったものはしょうがない。どう付き合っていくかが大切だ。タクシーに乗る前に何度もトイレに行き、出すものは出して乗り込んだ。そして車内では「無」になった。半分の時間は寝ていたと思う。それが功を奏したのか、一度も危機は訪れることなく、クアンシーの滝に到着した。

生い茂る木々の下を通り、マイナスイオンを感じながら歩いていく。滝はこの森の一番奥にあるらしい。

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入口にあったトイレはスルーし、ただ歩いていた。ただ、少し、ほんの少しだけ気が緩んだ。そのとき、何かが起こった。だけど、何も起こってないと信じて、歩き続けた。

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ここはツキノワグマの保護センターでもあり、間近でクマを見ることができた。野生の熊は、設えられた寝床をバリバリと破壊して迫力満点だった。

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しばらく歩くと滝の下流が現れた。水の色が乳白色で、木々や苔に反射してか、エメラルドグリーンに輝いていた。心が癒されて行くのを感じた。

滝までの中間地点にトイレがあったので逃げ込むように入った。やはり事は起こっていた。しかし小さな事故だ。その場は応急処置だけ済ませ、とにかく滝まで急いだ。そして、それは現れた。

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降りかかる水しぶき、流れ落ちる水の音、棚田のようになった岩、取り囲む緑、全てが美しかった。そしてここには日本人観光客がたくさん来ていたので、久しぶりに日本語で「写真撮ってもらえますか」を言った。

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本当に不思議な色。ファンタジーの世界に迷い込んだような錯覚すら覚える。

それから遊泳可能エリアに戻り、待ちに待った入水の時。水着は着ていたので、上着だけ脱いでそのまま滝に飛び込んだ。

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最初は冷たかったが、次第に慣れ、岩場までたどり着いた。ライオンキングばりの雄叫びを上げたくなるくらい、童心に帰って川遊びを楽しんだ。

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滝に打たれている私。打たれているのではない。すべてを流しているのだ。クアンシーの滝に着いた時の事故を、ここで私は洗い流した。色んな意味で私はキレイになり、清々しい気持ちであった。

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お腹の冷えもなく、滝に入ってから危機は訪れなかった。短い時間だったけれど、この美しい水と自然の中に存在できたことは貴重な体験だ。大げさではなく、本当にそう思った。

タクシーに乗る前にトイレに行った。やっぱりお腹は治っていなかった。事故が起きないよう、常に気を引き締めて行動すべし。と、心に誓った。




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