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バガン最強のセールスガール

旅のくだらない噺手帖「ミャンマー・ラオス旅編」
前回『ポッパという山』も是非お読みください。

ポッパ山から帰って来てからも精力的に観光。バガンの最後を楽しむべく、Eバイクをレンタルし、再び街中を駆け抜ける。

最初に向かったのは、シュエズィーゴン・パゴダ。長い外廊と黄金に輝く仏塔が有名。

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かなり派ー手ーに作られていて、敷地も広い。現地の女の子に話し掛けられ、水たまりに映る逆さパゴダを教えてくれた。親切に感謝を告げると「もっと素敵な場所を教えてあげるわ」と勝手にガイドを申し出て来られたので、すでに勉強済みの私は丁重にお断りした。

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頼まれていないが、ここでようやくわたしたちの色違いロンジーお披露目としよう。黄金の仏塔に負けない、派手なカラーリング。しかし、日本での使い方は未だに分からないでいる。

続いては、シュエサンドー・パゴダへ。平原を走っていると突如現れるレンガの仏塔。広い庭に囲まれていて、どこかのリゾート地に来たような雰囲気もある。かつては上に登ることができ、日の出日の入りスポットだったそうだが、今は「DON’T CLIMB」上がれなくなっている。

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上がれないだけでなく、中に入ることも出来ない。その代わり、離れのような建物に涅槃像がいた。ふと気づくと友人がいない。庭を探していると、現地の物売りの少年と何やら話をしていた。そばにいくと「ポストカード買っちゃったぁ」と言う。今までそれなりに旅をしてきた人間なら分かると思うが、正直ポストカードなんて買っても使い道がない。お土産にもならないし、誰かにハガキを出すなどこのご時世皆無に近い。買っただけならまだ良いが、買ったのをキッカケに他の物売りも密集し始めていた。漆塗りの女の子、タイパンツ(ズボン)売りの女性×2~3人、続々と集い始めた。

友人も旅慣れている。なのになぜ買ったのか聞くと「ミャンマー最後の日だから、お金使っちゃわないと」と返って来た。・・・確かにそうだ。私たちは、物価の安いミャンマーで、食事とEバイク以外にほとんどお金を使っていなかったのだ。つまり、お金は、余っていた。そう思いはじめたら、買わずにはいられなかった。ただ、そもそも貧乏性なので、いらないものは買いたくない。売ってあるものの中で、タイパンツだけは正直買いたいなと思っていた。

しかし柄はごまんとあった。何度も言うが、貧乏性の私は、買うとしても気に入った柄しか買いたくない。バイヤーばりの鋭い目をして並んでいるタイパンツを物色し始める。すると、物売りがひとり、ふたりと私の周りに集まってくる。最初に声を掛けてきた者がいた。まだ中学生と思われる女の子だ。

「何色?赤?青?」

女の子が手にしているパンツをサラっと見たが、私の欲しいと思う柄はなかった。すると別の女性が自分の手に持つパンツを出してきた。その中でひとつだけ、「あ!ほしい」と思う柄があった。なので「コレ買います!」と女性に告げた。すると女の子の形相が変わり、

「It's not fair !!」

と抗議ののろしを上げた。彼女の言い分はこうだった。

「私が最初に声を掛けたのに、他の人から買うなんて酷い!不公平だ!」

というわけである。これを英語で捲し立ててくる。だが、こちらとて単なるお人好しの日本人ではない。それが商売というものだろうと相手にしなかった。それでも彼女は諦めずに食い下がってくる。

「お姉さんには肌が白いから緑が似合うよ。青もあるよ。他の色もたくさんあるよ、これなんてどうかしら」

ーごめん、ふたつもいらないから。

「私は学校に通ってるの。兄妹もたくさんいる。だからお金を稼がないといけないの」

ーでもね、気に入ったものがないのよ。

「(無視して)これ似合うよ!ほらこれもいい!お土産にどう?」

ーうーん、いらないな。

「・・・不公平だ!不公平だ!私からも買ってよ!ほらコレ似合うって!」

ーよっしゃ、君から買ったろ!その根性気に入ったわ!!

結局、彼女から私はふたつも(!)パンツを買ったのだ。自分用ではなく、お土産用に。もちろんセット売りで値切ったけれど。

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彼女はとても気が強く、負けず嫌いで、賢くて、そして美しかった。このパンツの収入(大した額じゃないけれど)でたくさん勉強して、何か成し遂げてほしい。いや彼女ならきっと何者かになるだろうとそう思いながらパゴダを後にした。しばらくは「It's not fair !!」が頭から離れなかった。

最後のパゴダは、ダヤマンジー寺院。調べて知ったが、ここは未完成の寺院で曰くつきらしい。(参考ブログ

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入口に大きな門があるが、天井が筒抜けだった。まさか未完成だったとは。しかし敷地も広く、内部には広い回廊があり、仏像もたくさん並んでいた。確かにどこかヒンヤリしたような記憶はあるが、それがこの寺院にまつわる何かだったのだろうか。当時の私たちは最後までバガンを楽しみつくすことに集中していたので、何も気づくことはできなかったが。

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日の入りも雨季の雲に邪魔をされて見ることは出来なかった。だけど、本当に充実した、密度の濃い、たった2日間のバガン。たくさんの人と出会い、歴史ある建造物を見て、自然を感じて、五感ともしかしたら六感も使いながら、フルに活動した。

しかし旅はまだ中盤。夜行バスでヤンゴンに戻って、次はラオスに飛ぶ。

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