鑑賞ログ数珠つなぎ「しびれ雲」
数珠つなぎ経緯
「どうやらビターソウル」の時に一度諦めた「しびれ雲」。
【以下引用】
本多劇場でやっているのは、KERA・MAP「しびれ雲」。
観たい、確かに見たい。だがチケット完売。
まぁいいわ。だって、ケラさんの世界はちょいと前に見たばかりだし・・・なんて強がりを言ってみたり。思ったけど、ケラさん作品は「世界は笑う」も観たばかりだし…
・・・と、追加公演の案内が届いた。
実はこの「しびれ雲」、開幕延期(一部公演中止)しており、その代わりというわけではなかろうが、追加公演が決まったようである。
行けるやん!大好きな本多劇場に。
観たいに決まってるやん!キャストも好きな役者さんばかり。
井上芳雄さんは最近『奇蹟』で初めて舞台上で拝んだばかり。そう言えば、その時共演していた鈴木浩介さんはKERA・MAP『修道女たち』に出演していて、「芝居うまぁ…」と感嘆をもらしたな。
ともさかりえさん、萩原聖人さんあたりはやはりテレビの印象が強く、生のお芝居を見るのが楽しみ。あと菅原永二さんは小林賢太郎さんのコントユニット「カジャラ」に出演されていたから見たことがあって、コントではないお芝居を観るのが初めてで楽しみ。
本多劇場の最前列!?
チケットを発券した時から「前方だなぁ」とは思っていた。
なにせ、C列。
絶対に前方。
正直、自由席だったら絶対に選ばない、前方。
しかも本多劇場。
中段あたりが一番見やすいことは百も承知である。
しかし席は選べないから仕方ない。
劇場に入って、席を探す。
C列だから、大抵は3列目。
なのに・・・
舞台がせり出していて、わたしの席は一番前!
一番前!
上手側ではあったが、一番前なのよ、前に誰もいないのよ!
あぁビックラこいた。
開演まで、肉眼で舞台セットを隅々まで見たよね。
客入れのBGMは波の音。
それが逆に新鮮でよかった。
OP演出が好き
ケラさん作品のオープニングはテレビっぽくてカッコイイ。
壁やボードにキャストの名前が映し出され、その当人が照明でスパッと抜かれて、ビシッとポーズを決める。それが音楽とダンス(動き)に合わせて、軽快に繰り返される。
このOP手法、『修道女たち』で初めて見たとき、マジで感動した。
そしてどの作品で見ても、感動するし、「やりてえ!」って思う。
ただ、最前列だったから、ちょっと見にくかった…!下から煽りで見る感じになるから、全体像は掴めなかったのが残念…
でも逆に、いつも見えない照明が当たってないキャストを目で追えたのは、それはそれで良かった!舞台だから当たり前なんだけど、どんな人気俳優も大御所も、板をもちあげたり、セットや小道具を動かしたり、影の動きを懸命にやっている姿が見れてキュンとした。当たり前なんだけど、ね。
方言が独特だりよ
最初はどっかの地方の方言かなぁと思っていたけれど、途中からそんなわけないよな、オリジナル方言だなと確信した。
あとで知ったことだが、2016年に初演、2019年に再演の『キネマと恋人』の舞台背景となった架空の島“梟島(ふくろうじま)”でのお話だった。
「〇〇だり」「〇〇がっさ」という語尾はどこか聞いたことがあるようでないようだし、「ごめんちゃい」というおちゃらけた謝罪はおちゃらけてなくても使われる。丁寧語のようで馬鹿にしているような「〇〇しくさる」っていうのが一番好きだった。
方言を言い間違えたら指摘されると松尾さんがインタビューで言っていたのが面白かった。ケラさんのこだわりを感じる。
こちらで方言ちょっと聞けます。
狭小な視界で見る舞台
正直、最前列だったから、俯瞰で見るのが難しかった。
特定のキャストを目当てに来たのなら、その人を追いながら物語を味わい観ることができるが、わたしは全体が見たいのでそうもいかない。
ただ、舞台から出るエネルギー、キャストの表情や動きの機微、セットや道具の緻密さは、最前列でないと得られないものがたくさんあった。
いくら全体が見たいと偉そうに言っても、人は心で見たいと思ったものを自然と目で追うようにできているはず。きっと中段で見ていても、そこに視線が行ったはず。広い舞台上で人っ子ひとりが見るエリアなど狭小なのだ。
途中、何度か井上さん演じるフジオの一人語りシーンがある。いわゆるピンスポットがフジオを追従し、それ以外の人は転換作業をしている。わたしはフジオではなく、転換を見ていた。
この人からあの人に引き渡され、滑るようにして袖にはけられる大きな机。一番短い距離で行けばその動きにはならないはずだが、全体とタイミングを合わせるために遠まわりするキャスト。だが無駄は一切ない。緻密に計算された動きが、美しくて、かっこいい。
間近だからこそ、観たいものを、しっかりと、肉眼で、観ることができた。たぶん中段や後ろだったら、観たとしても実態は掴めない。
あと、ものすごく緊張感を持って観劇できるのはメリットかもしれない。
わたしも舞台に立つ人間だから分かるけれど、舞台から客席はほとんど見えない。もちろん最前列であっても。だが客席からは必要以上に役者たちがよく見える。
目線や汗や唾液や、細かい手の動きや、着ている服の素材も、全部全部、見える。だから何だか気が抜けない。全力で演じる役者を、名実ともに目の当たりにして、どうして気を緩めることができるだろうか。否。今までで一番集中して観たかもしれない。
マイMVP
皆さん素敵だったよ本当に。
緒川たまきさんの所作の美しさ、色気、独特の声色、かわいさ、好き。ともさかりえさんの折れそうな足、なのにえげつないパワー、コミカルさ、好き。井上さんスタイルいいしカッコイイし、好き。三宅さんやっぱりの存在感、好き。萩原聖人さん「白鳥麗子でございます」から、好き。他の皆さんも、好き。※芝居がうまいとかは大前提
だが、(頼まれないけど)マイMVPを挙げるとすると、
菅原永二さんかなぁ!
やっぱ面白いのよ。外さないのよ。ちゃんと笑いを昇華させる。
もちろん一番コメディパートを引き受けているからそうなんだろうけど、とりわけ大仰に面白いことをやっているわけじゃないシーンでも、ちゃんと取るのよ笑いを。まったく無理なく、とっても心地よく。
出演作品、探しちゃうなぁ。舞台がいいな。また見たいな。
次の作品
あれ。