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鑑賞ログ数珠つなぎ「野球の子」

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:映画「コーダあいのうた」

https://note.com/marioshoten/n/ncbedbdbd4ef0

数珠つなぎ経緯

数珠なんて繋がないよ!繋げないよ!最近見たり読んだりした作品が結構あって追いつかないよ!夏だし。忙しいし。

結構見たり読んだりした中で、真っ先に書いたのはタイムリーだから。

9月22日、第104回全国高等学校野球選手権大会の幕が下りた。東北勢として初優勝を果たしたのが仙台育英高校。仙台育英高校と言えば、同世代のバレーボール経験者にとっては絶対に聞いたことがある高校だ。めちゃくちゃ強豪校で、有名選手も数多く輩出した。仙台育英高校はいわゆるスポーツ高で大抵どのスポーツも強い。

・・・と、今年の甲子園を振り返りたいわけではない。

そんな甲子園真っ最中に、読み始めたのが『野球の子』であった。

随分前にネットで購入し、手元にはあった。だが日々のスケジュールに忙殺され(忙殺されるほど忙しくはないが)、読む機会を失っていた。ようやく訪れた読む時間が、この高校野球の終盤だったのは我ながらいいタイミングだ。もちろん発売日の7月26日は、甲子園開幕日(8月6日)を計算されてのことだと思うけれど。

『野球の子』は松竹芸能の先輩であるかみじょうたけしさんの2作目である。かみじょうさんと言えば、高校野球芸人として有名である。内容はもちろん高校野球にちなんだドキュメンタリーで、すべてかみじょうさんが見て、聞いて、感じたことが書かれている。

ちなみにかみじょうさんのデビュー作はこちら。

読み返してみないと正確な感想は言えないけれど、タイトルの通り1作目は「笑」にちなんだ話が多く、『野球の子』は感動的なお話が多かった。


あらすじ

高校野球大好き芸人かみじょうたけしが贈る、感動の野球ノンフィクション

奇跡のホームランを打った子、
廃部寸前だった小さな島の子、
丸刈りを賭けて応援した子、
「最も残酷な一日」を経験した子…

スイングで人生を切り開く球児たちの物語

HPより抜粋

そうすべてがノンフィクション。
どのエピソードもドラマティックで、愛が詰まってて、泣ける。

事件は現場で起こってる!

青島刑事が言ったように、甲子園のドラマも現場で起こっている。毎年仕事があるないに関わらず(むしろ無い時に行っている)現場に駆け付ける――ちなみに現場とは甲子園だけではない。地区予選や練習試合にすら足を運ぶ――かみじょうさんだからこそ見聞きすることができたお話ばかりだ。

それは熱闘甲子園では語られない。
それはメディア取り上げられることのなかったエピソード。
それは誰もが見過ごすような小さな物語かもしれない。

だからこそ胸に刺さるものがある。


嬉しかったこと

かみじょうさんはわたしが大阪に帰るときに連絡すると、忙しい中少しの時間でもつくって会ってくれる。そして半分以上が野球の話を聞かせてくれる。残りはわたしの話を聞いてくれる。

そこで聞いた話が今回収録されていたのがとても嬉しかった。わたしはその話を聞いた時、涙が出るくらい感動して、励まされて、自分の甘さに反吐が出そうだったから。

「2番手とは呼ばせない」というタイトルのエピソード。

是非読んで頂きたい。実際にかみじょうさんから聞いた時も泣けたけど、今読んでも泣けた。貴重な体験だったと嬉しくなった。

それから「あの場所で歌うその日まで」

今は歌手として活躍する強さんのエピソード。実は2017年にイベントでご一緒させて頂いたことがある。

かみじょうさんと強さんのイベントでお芝居をやるということで、脚本と演出と出演をさせて頂いたのだ。

詳しくは過去のブログを。

このエピソードを読むと、強さんが完璧にセリフを入れて稽古に臨んでくれたことや、慣れないお芝居に真っ向から向き合ってくれたこと、最後の最後まで追求する姿勢に、より納得がいった。

そんな見知った方のエピソードが収録されていたことも嬉しかった。

垣間見えたかみじょうさんの苦悩

これは勝手な妄想だけど、どのエピソードを収録するかものすごーく悩んだのではないかと思う。どの選手に対しても愛情たっぷりに、分け隔てなく接するかみじょうさんにとって(もちろんトークで使える使えないはあるにしても)、その見聞きし、体験したことはどれも尊いだろう。球場などでの偶然出会ったり声をかけられたりも数知れず、人づてやSNSで繋がった縁もたくさんあり、かみじょうさんはそのひとつひとつに真摯に対応している。だからこそ、選ぶのが大変だったろうと、勝手に心配してしまうのだ。

そんな中選ばれた珠玉のエピソード。

間違いなく泣ける。
そして甲子園が、高校野球が、いや野球そのものが好きになる。

大人になってもう随分長く経ち擦れてしまったわたしの心が癒された。
そう、わたしも白球(バレーボールだけど)を追いかけた少女だったのだ。勝つことだけを信じて練習していたあの頃。この本に出てくる選手たちの足元にも及ばなかったけれど、わたしは間違いなく『バレーボールの子』だった。「野球の子」を読むことで、わたしは素晴らしい高校時代を過ごすことができたと改めて思えたことに感謝したい。

パート2も必ず出版されると信じている。
ちなみに私が一番泣いたエピソードは「自慢の弟」である。

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