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【2021/8/1】ニラは食べるしニンニクは増すし①

今日王将でレバニラとニンニク激増し餃子を食べたので、何の気なしにタイトルを書いてみたら、なんだかドラマになりそうだと思った。なので、中華大好きアラフォー独身女性が、体力の衰えを感じて身体によいとされる食べ物を探しまわるという設定でくだらない話を書いてみようと思う。(この物話はフィクションです)

夏が来る。というかもう来ている。かの大黒摩季はそう歌った。というか叫んだ。夏が来ると同時に白馬に乗った王子様もきっと来ると信じて歌い続けた。どんなに裏切られようが、あざとい女が邪魔してこようが、恋愛よりも仕事を選んでしまおうが、この物語の主人公である韮崎あに子もそう信じていた。

しかしあに子は夏が嫌いである。暑さにめっぽう弱いのである。しかも恐れていた40代の気配を感じる。まだ姿を見せないが、確実にそこにいる。もうこれは貞子レベルの恐怖である。

たしかに30歳もひとつの山ではあった。29歳から30歳になるその瞬間、あに子は山でいうと富士山の9合目、フルマラソンでいうと42キロ地点、ドラマでいうと最終回クライマックス前のCMのような、そんな盛り上がりと言うか山場を迎える気分だった。しかし到達してみると案外「こんなもんか」と拍子抜けした。友人からくるLINEを見ながら「三十路ってなんで”路”なんだろう」と漠然と考えていた。

そんな30歳のスタートだったから、きっと40歳も同じ感覚だろうと高を括っていたが、今あに子は猛烈に怯えている。なぜなら身体の不具合が著しいからだ。

とにかく体力がなくなった。徹夜したって、肉体労働したって、激しいスポーツをしたって、翌日に響くことはなかった。しかし、30代も後半に差し掛かってからはそうはいかなくなった。

大抵約束には遅れてやってくる元キャバ嬢の友人のように、筋肉痛は二日後にやってくるのがお決まりだし、最高に古びた低反発枕のように、徹夜したらその倍の時間寝ないと元の状態には戻らなくなった。顔についた枕の跡も右に同じ。

とにかくもう「若いね」「元気だね」と言われたあのあに子はどこにもいない。だが、いないのに追い求めてしまう。それが人間の性。どうにかして元気を、体力を、パワーを取り戻したいと思った。

あに子は王将に駆け込んだ。そして、レバニラとニンニク激増し餃子を注文した。明日会う人に申し訳ないと思ったが、よく考えたらマスクをしているし、ソーシャルディスタンスも保っている。お口のニオイなんて気にしなくていい時代になっているのだ。こんな世の中になってほとんどのことが面倒だと憤っていたが、ニラやニンニクを何の気兼ねもなく食べられる世界には少し感謝した。何ならもっとニオイのキツイ食べ物って何だっけと思いを巡らせた。

まもなくやってくるレバニラ炒めとニンニク激増し餃子を食べたら、明日はどんなお口になるのだろう。そう考えるとあに子は少しだけパワーが出てきたような気がした。

続く。

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