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【2021/4/28】古本屋

図書館も好きだけど、本屋も好き。
そしてもちろん古本屋も好き。

近所にあって気になっていたけど、入れなかった古本屋に初めて入ることができた。

きっと天気が良かったからだ。

天気が良かったから、古本の香りが店の前にまでふわふわっと漂っていて、わたしの足を止めたのだ。まずは外のラックに置いてある、少し埃がついてざらついている本を数冊チラ見しては戻す。

やっぱ入りたいな。よし、入ろう!

決意してからも入るときはちょっとだけ勇気がいった。大きく一歩、ゆっくり足を出して文字通り”敷居を跨いだ”。

店内には薄くラジオが流れていた。どこの局かも分からない。なんだか古びた声と古い音楽が流れているような気がした。昔のラジオを流しているのではとさえ思えた。雰囲気がそうさせただけだろう。

右側と、真ん中と、左側に棚。

棚の上にはセット売りの本が紐で縛って並んでいる。随分古い。棚の下には平積みの本。いわゆる”古書”と呼ばれる類のものだろう。古さに反して値段が高い。そして分厚く、難しそうな内容。触るのも憚られた。

棚に並ぶ本を左から右へサーっと眺める。気になる本があれば取って少し目を通す。”心理”とか”精神”とか入っているタイトルの本が今日のチョイスポイント。ちょうど勉強したいと思っている分野。

店に入って5分くらいして、ようやく店の奥にいる存在をきちんと確かめた。いきなりジロジロ見るのは失礼かと思ったので、機を伺っていたのだ。

見ると、ご高齢の主人がしずかに新聞を読んでいた。まさにドラマや映画に出てきそうな古本屋のご主人そのものだった。何か秘めたパワーを持っているのか?実はものすごい知識や経験を持っている人なのか?過去に訳ありなのか?と、自分が見た作品の設定を当てはめたら、どれもしっくりくるくらい、イメージそのものの人。

それだけで満足したと言ってもいい。そのタイミングで別のお客さんが入ってきたので、そのまま出ていこうとも思ったが、やっぱり何か買いたいと思った。ご主人とコンタクトを取りたいとも思ったからだ。

悩みに悩んで2冊選んだ。

値札などは貼っていない。パラパラと最後の方をめくってみると、一番後ろのページに鉛筆で「250-」と書いてあった。それにもキュンとした。シールとか貼っていないのが、いいよね。消しゴムで消せるのが、いいよね。

ご主人に2冊の本を提出すると(この”提出”が私の気持ちにピッタリくる)、後ろのページを見て「250円」、もう一冊も見て「250円」と口で確認し「500円ね」と会計してくれたので、私は1000円を差し出した。

そしてゆっくりと薄手の紙袋に2冊を入れて、セロハンテープで止めて、渡してくれた。またゆっくりと「500円」とお釣りをくれた。

お店を出て、なぜだかスキップしたい気持ちだった。

おそらく、

わたしは本を買ったのではなくて
古本屋で過ごす時間を買ったのだ。

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