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【2021/5/26】二度目の野田地図

今日はNODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』を観劇した。

最近は観劇する機会も減っていたが、少しずつ仲間の公演を見に行ったり、こうして大規模な有名どころの公演に足を運んだりするようになってきた。ある意味コロナのおかげで、その有名どころのチケットが簡単に手に入るという不幸中の幸いというべき事例が起きている。

NODA・MAPは2016年の『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』ぶり2度目。この作品は故・十八代目中村勘三郎へのオマージュとして書かれ、宮沢りえ・妻夫木聡・古田新太と主役級の役者を揃えた舞台としても注目された。とはいえ、私的には初NODA・MAP。右も左も分からぬ初心者。勉強にと(わたしにとっては)高いチケットを買って、(当時は関西在住だったので)わざわざ東京にて、完全お上り状態での観劇だった。

その舞台の正直な感想は、

意味わからん。。。

だった。とにかく宮沢りえさんのスタイルが良すぎて、裸体に見える衣装にドキドキしたことだけはハッキリ覚えている。あと濡らした足で紙に絵(足跡)を描く演出が面白いなぁ~と思った。しかし本当に内容にはついていけなかった。テンポも早かったし、時代物(江戸)だったし、基礎知識がないと分からない言葉遊びも多かった。なぜ会場が笑っているのか分からないことが何度もあった。

だから今回もそうなるかもしれないなぁ~という不安な気持ちもあった。図書館で過去作品の戯曲(Right Eye.)を読んではみたが、やっぱり難しかったし。しかも今回はシェイクスピアならぬ『フェイクスピア』。シェイクスピアはホントうわばみくらいしか知らないし、ちゃんと読んだこともない。舞台なんてなおさら見たこともない。

なのにまた挑んでしまった。NODA・MAPに。

買ったチケットは2階席の後ろの方だったが、もぎりスタッフの方にチケットを交換するように言われ、受付へ。席がつぶれてしまったのか、新たなチケットを受け取ると、1階席の中央通路のすぐ後ろ、めっちゃいい席になっていた。持ってきたオペラグラスの出番はないかもしれない。なにかいい予感がした。

オープニングはこれぞ舞台!というようなアンサンブルの方の素晴らしい肉体表現が見られ、高橋一生さんの伸びやかな声が長台詞とともに響きわたり、「来たぞ来たぞ!」とテンションが上がった。もちろん肉眼でハッキリと表情も見えた。

次に白石加代子さんが登場。舞台で拝見するのは初めてだったけど、一瞬で好きになった。声も立ち姿もふるまいも。ネタバレになるのでこれ以上は書かないけれど、橋爪功さんも最高だったし(御年80歳だなんて!)、前田のあっちゃんも、川平さんも、皆さん素敵だった。

収穫は、内容についていけたこと。もちろん全部じゃない。NODA・MAPファンからしたら、「そんなのザルだよ!全然掬えてないよ!」って怒られそうだけど、前回に比べたらウン万倍楽しくて、笑えて、ストーリーが見えた。見ながら、次がどうなるかを予測したり、言葉遊びを認識できたり、余裕を持って見ることが出来た。何度かは置いていかれそうになったけど。

一番驚いたのは、最後のほう、橋爪さんと白石さんが立っている姿を見たときに、なぜだか涙があふれたこと。本当に理由は分からない。たぶん泣くシーンじゃない。今までの累積で泣いたのか、おふたりの空気感に感極まったのか、もう全然分からない。分からなくて泣くのは初めてかもしれない。今考えても不思議。自分七不思議のひとつに入るだろう。

こんなに舞台をはじめとするエンタメが虐げられて、不要不急と言われ、それでも抗ってこれだけのステージを行えるエネルギーに魂が震えたのかもしれない。会場はほぼ満席だった。その観劇するお客さんのパワーを感じたからかもしれない。

演者と観客と裏方と劇場スタッフと、みんなが尊い。やりたいことや見せたいものに人生を、時に命をかけている。自分が好きなもの見たいものに時間とお金を捧げている。その空間がやっぱりかけがえのないものだと実感できたから涙があふれたのかもしれない。

わたしがこれから仲間とつくる公演は、NODA・MAPとは比べ物にならないくらい、比べたら本当に失礼なくらい、小さな小さな舞台である。だけど舞台に大も小もない。対抗するくらいの気持ちでやってやる。そう思えた。

野田さんの伝えたいことが分かったなんて口が裂けても言えない。でも感じた。なにか通じるものがあった。それはきっとわたしだけじゃなくて、見ている人も感じた何かだと思う。あの涙があふれた不思議な時間を持てたことが何よりの収穫だ。

To Be or Not to Be.

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涙のお礼にパンフレットを買った。
滅多に買わないのに。

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