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麻利央書店

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高島麻利央による、短編小説~有料版~いつか。
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専用車両は居場所がない。⑥両目‐完‐

専用車両は居場所がない。⑥両目‐完‐

「さっきまでいたのに…どうして」
「やっぱ、いませんよね」
「は?」
「あ、いや。大丈夫です。ありがとうございます」

 僕は子ども専用車両の中を通り抜けようとした。アンパンマンのアニメ、絵本、音の出るおもちゃ、僕もかつて親しんだものがそこには転がっていた。どんなに時代が進んでも、子供の心を捉えるものはそう変わらないのかもしれない。そして、それ以外の車両にいるのは、スマホから目を離せない大人たち。

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専用車両は居場所がない。⑤両目

専用車両は居場所がない。⑤両目

 わたしは子ども専用車両が嫌い。

 ママはわたしが喜んでここに乗っていると思っているみたいだけど、ここで出来た友達と楽しく遊んだフリをしているだけ。ママがそうしたほうが喜ぶから。今日はひとりでいる時間が長くなりそうだから、お気に入りのピンクのワンピースを着せてくれた。そんな風にお洋服を選んでもらうくらいなら、このワンピースなんて着られなくてもいいのに。わたしはママを心配させたくないだけ。
 ママ

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専用車両は居場所がない。④両目

専用車両は居場所がない。④両目

「助けて下さい」

 私はとても焦っていた。というよりも、かなりヤバい状態だった。一緒に乗っていたはずの娘が見当たらない。とは言っても、ここは仕事専用車両なので子連れで乗ることはできない。二つ隣の車両「子ども専用車両」に乗せて、私が来るまで待っているように言っておいた。子ども専用車両は未就学児のみの乗れる車両で、車両には保育士が二人乗っている。娘はその車両でよく友達を作っていて、これまでいなくなる

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