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シビアな世界を生きる、彼ら/彼女ら

プロ野球の試合を見に行った。

テレビでは見たことがあったけど、実際の試合を生で見るのは初めてだった。

仲の良いグループでどこに行こうか考えて、私以外みんなが好きだというから、野球観戦に行くことにした。
みんなが好きならきっと楽しいだろう。
そんな軽い気持ちだった。

実際、試合はとても楽しかった。
早めに行ってオリジナルグッズを見たり、たこ焼きやビールを買ったり、みんなで写真を撮ったり、最近のチームの勝ち負けについて話したり。
お祭りのような、非日常のような感覚にワクワクしながら、私は試合を楽しんだ。

テレビで見るだけでは分からないことが、二つあった。

一つ目は、野球はとてもシビアなスポーツだということ。

アウェイのチームには先攻が与えられるし、ヤジやブーイングが飛ぶようなことはないけれど、ホームの選手だったら活躍を称えるようなシーンが、アウェイの選手だと行われないということがある。
(例えば、ホームランを打ったら、ホームの選手だと大画面でリプレイが映されるけど、アウェイの選手だとそれがない、とか。 アウェイの選手が勝ったらヒーローインタビューは短い、とか。)
また、ホームのチームでも、劣勢になって逆転が難しそうな空気が濃くなると、お客さんが帰ってしまう。どんどん帰っていく。
よく足を運ぶ人ほど、面白いなら見る、つまらないなら帰る、という態度がはっきりしているようだ。
時代の流れ的にも、「スポーツマンシップ」とか「どんな状況でも味方」、「最後まであきらめない」とか、そういう空気が好まれるかなと思っていたけれど、意外とそこは、平等には扱わないし、結果が重視されるのだと知った。

二つ目は、ビールの売り子の世界もシビアだということ。

客席にはたくさんのビールを売るお姉さんがいた。ビールのメーカーもいろいろあったし、ハイボールやその他のお酒、ソフトドリンク、軽食など、提供している種類も多かった。どのビールを飲もうか、何を食べようか、と悩むこともあるだろう。
だけどやはり、「どの子から買おうか」という要素もあるように思う。
お姉さんたちは(私が見た限り、その日はお兄さんはいなかった)、手を挙げて客席をくまなく見まわし、少しでも買うつもりの人、買う意志のある人を見逃さない。そして目が合うとにっこり笑い、近づいてくる。
ビールを注ぐ、渡す、お金を受け取る、お釣りを渡す…の動作も無駄がない。最後に笑顔で「ありがとうございました!」というのも忘れていない。
私は買わなかったけど、試合中に何人か、とてもかわいい売り子さんが目についた。
このご時世マスクをしているから、見える表情は主にだ目けなんだけど、「あ、この子かわいいな」というのは伝わってきたし、立ち振る舞いからも、視線を惹きつける子はいた。
「ビールを飲みたくなったら、買うならこの子かな…」
と思ったりした。

視覚情報、つまり容姿が売り上げを左右する世界。

「人は見た目じゃない、中身だ」ということが「正しく聞こえてくる」世の中だけど、見た目がかわいいことが成果に直結する世界がまだまだある。残酷なほどに。

でも、それを否定したいわけではない。

そういった環境が、人を成長させるのは間違いない。
シビアに成果を求められるのであれば、どうすれば勝てるかを考えればいい。考えて、やればいい。
考えて、できた人間だけが勝てるのだ。野球だけでなく、きっと世界はだいたいそうだ。

私は成果を出せているかな。
勝つ方法を常に考えているかな。

そんなことを自分に問いながら、試合を見ていた。
応援していたチームは負けてしまったけど、私は9回裏まで試合を見た。


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