子供に追い抜かされる感覚って、それなりに気持ちがいいものだ
わたしには10歳の息子がいる。
おもちゃが好きで、ゲームが好きで、Youtubeが好きで。学校ではそれなりに友達とグラウンドで駆け回っているようだが、休日は家にこもって一人遊びに講じるのが何よりも大好きな息子である。
その息子が、ドラゴンクエストⅤをプレイ中に誤って「ぼうけんのしょ」を消してしまい、失意の底から立ち直ってエンディングを迎えるまでの話を、先日書かせていただいた。
ここでも書いてあるが、息子はゲームが大好きだ。この「好き」というのは、「放っておくとずっとプレイしている」という類の「好き」ではない。ゲームの世界を知り、学び、記憶し、得た知識を試し、失敗し、成功し、そして自分のものにする。そういった全てのことに対し、ものすごい情熱を注いでいる。正直、親でも引くくらい色んなゲームに詳しいし、話し出すと止まらないし、内容がマニアック過ぎて、「一生懸命話す子供ってかわいいな」とすら思えない瞬間が度々訪れる。最近はもう、「何でそんなことまで知っているんだ」と感心するか、「何言っているか全然分からない」と理解するのを諦めるかの、どちらかになっている。
そんな息子であるが、様々な場面で得たゲームの知識を活かしている場所がある。ゲーム作りだ。
”scratch”という、ブロックを組み合わせて命令を作り、ゲームやアニメーションを制作できるサイトがある。小学校のプログラミング授業でも使われているのだが、ご存じだろうか。
息子はこのサイト上で、インプットした知識をフル活用し、様々な種類のゲームを作っている。最近マイページを見せてもらったのだが、かれこれ3年以上やっていて、公開した作品が47個、作成した作品がなんと1,100個を超えていた(作りかけのもの、作ったけれど公開していないものを含む)。
1年前にこのようなゲームを公開していたので、共有させていただきたい。
タイトル:【コロナ、バラバラにしろ!】
https://scratch.mit.edu/projects/413551141/
(引きこもり生活大好きの息子にとって、コロナによる外出自粛は痛くも痒くもないと思っていたが、友達と休日に遊べなかったり、世の中がなんだか暗い雰囲気だったり、そういうことには心を痛めていたようだ。それにしても、コロナを剣やミサイルで破壊するという発想が、何とも子供らしい。)
ところで、実はわたし自身、最近ゲームを作る機会があった。(注)
(ちなみに、このゲームの基となったストーリーはこちら。)
作ってみたら、けっこう大変だった。まず、自分の頭の中のイメージをうまく命令にできない。できたところで、正常に動かない。そして動かない原因がなかなか分からない。パソコンへの負荷も大きかったみたいで、常にパソコンが熱くなっていた。壊れちゃうんじゃないかと心配になった。
何度も「うー」となった。「できないかも」と何度も思った。
そんな時、息子がパソコンに向かってゲームを制作をしている後ろ姿を見た。
彼は、「イラストを挿入し、ブロックで動きを指定し、場所や速度を修正して、プレビューで確認する」という地道な作業を、ひたすらカチカチと繰り返していた。いくつもある命令ブロックから迷わず一つを選び、パシパシと慣れた手つきで数字を打つ。
SEさんを間近で見たことがないが、きっとこんな感じで作業しているのではないか。もはや小さなSEだと、わたしは思った。
その時息子が作っていた作品を見せてもらった。実在するオンラインゲームを再現しているそうで、敵キャラが細かく動いていたり、複雑な攻撃の判定が組まれたりしていた。
「これが完成して公開したら、『いいね』がいっぱいもらえそう!」
そのゲームの完成はまだまだ遠いらしいが、にこにこしながら息子は作業を続けた。
その瞬間、わたしは「息子に追い抜かれた」と思った。
ゲームを作るためのプログラムを組むこと。そして、その作業を楽しんでやり続けること。
その点において、彼は完全にわたしを超えていた。
基本的にわたしは負けず嫌いなので、追い抜かれると良い気持ちはしない。だけど自分の子供に追い抜かれるのは、とても清々しい気分だった。
当たり前なのだが、彼がわたしとは違う人間に育ってくれていること、わたしが彼の世界を狭めていないことに、安心した。
そして、彼が夢中になれるものを見つけてくれてよかったし、夢中になれることを存分にやらせてあげられている自分のことを、少しえらいなと思った。
「たくさんの人に遊んでもらえて、『いいね』がもらえるといいね。」
わたしは息子にそう声を掛けて、すっかり大きくなっていた頭をぽんぽんと撫でた。
「いいね」の数が100になる作品が作れたら、わたしは息子と約束していることがある。
それが当面の目標だが、今のところ「1」が最高らしい。
がんばれ、息子よ。
(注)補足すると、このゲームを作ろうなんて面白いことを思いついたのはわたしではない。そして先月はさきいかじゃんけんのゲームはほとんど一人で作ったが、今月は仲間と一緒に作成することができた。彼は、雑で穴だらけのわたしのプログラムを即座に指摘し、修正し、バージョンアップしてくれた。エンジニアではないけれど、さきいかじゃんけんに魅せられたわたし達が作成したゲーム、よかったら一度遊んでみていただけるとうれしいです。
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