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ブルペンに新風を起こせるか、小野郁

こんにちは、Syu.です。

とうとう、この日を迎えました。開幕です。

開幕前となると今年のチーム状況、展望を題材とするのが普通なのですが、既に前回のnoteで記載致しましたので、長文ですが宜しければ、こちらの方をご覧になってください(まさか執筆後に西野勇士が右肘靭帯損傷で離脱とは…)。

当初は練習試合の内容を振り返ろうと思い、このnoteを執筆しましたが、書けるほどの内容が皆無な練習試合だったので断念しました。
しかし、細分化すると自粛期間を経て、3月のオープン戦から私の中で大きな変化を感じた投手がおり、少しイチオシに名乗り出てきたかという事で今回取り上げます。その名は小野郁です。


☆経歴

西日本短大附属高校から2014年のドラフトで楽天に2位指名を受けて入団。楽天での5年間は通算39試合全て中継ぎ登板、防御率7.30という成績ではあったが、2軍では1年目から22試合で防御率3.09を記録、18年には39試合で3勝3敗20セーブ、防御率1.86, 19年には35試合で2勝3敗14セーブ、防御率3.32をマークし、2軍で2年連続最多セーブのタイトルを獲得しています。

19年オフに鈴木大地のFA移籍の人的補償によりロッテに移籍。この時、松本球団本部長も若くて勢いのある投手に狙いを定めたと仰っておりました。最速153キロの直球に2種類のスライダーを武器にする、今年で6年目, 24歳の右腕です。


☆練習試合の投球を振り返る

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図1. 小野投手 練習試合成績

上の図は小野投手の練習試合における成績です。5試合で防御率1.76をマーク。最初の2登板では久しぶりの実践ということもあってピンチを作りながら抑える形となりましたが、その後3試合では打者11人に対し被安打1本, 6奪三振, 無四球とほぼ完璧な投球を見せました。吉井投手コーチもこの練習試合でイキの良かった投手に挙げていました。

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図2. 小野投手 練習試合における投球割合

次にこちらは、小野投手の練習試合における全投球の割合です。たった1球だけカーブを投げていたようですが、基本はストレート(63%), スライダー(28%)で9割を占める形となっています。

3月のオープン戦で吉井コーチは小野に対し「真っ直ぐでしっかり追い込んで、変化球を生かすように」とコメントしており、その教えを受けた影響でしょう。勝負球として、高速スライダーをこの時期に習得しており、今回の練習試合ではその投球スタイルを構築したように思えます。


平均球速とも兼ねて下の図でもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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図3.各球種における平均球速、左右別投球割合

先程、投球の9割をストレートとスライダーで占めると述べましたが、細かく見ると残り8%のフォークは主に左打者に対して、この練習試合では投じていることが明らかとなりました。

ストレートの平均球速は145.8km/h, 最速は6月14日西武ドームでの153km/hを記録しております。おおよそ140km/h台後半は再現性を保ってマークするという見立てでいいでしょうか。

スライダー、フォークも平均130km/h台と速い部類に入るでしょう。フォークと異なりスライダーは左右同じ程度の割合で投げています。

ただし、いずれも西武ドーム登板時における平均球速がフォーク138km/h, スライダー134.6km/hと高めに表示されていた為、その分高くなっているという考慮は必要かもしれません。特にスライダーは+2.5キロ差がありました(ストレートも同様に差があり)。それでも速い部類ですが。

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図4. 各球種における投球の内訳

次に投球内容の図に移ります。ここからはサンプル数が少ない為、投球割合の多いストレート、スライダーに焦点を当てます。そして絶対とは言い切れないので参考程度に考えてください。

赤掛けの項目を見ると、スライダーの空振り率が20%と突出している事が分かります。全体の7奪三振のうち5つをスライダーで奪っており、本人もコメントしていた通り大きな武器となっています。

一方、青掛け項目を見ると、投球の軸となるストレート、スライダー共にボール率が高めのように思えます。特にストレートは見逃し率との隔離が大きく、見た感じでもボール球が少し多かったように思います。全体で1つしか四球を出してはいませんが、これを見るとシーズン中も制球に苦しむ場面があるのは否定出来ないかもしれません。

ただし、スライダーに関しては空振りを狙うとなるとボールゾーンの割合は高めに出ると思いますので、彼がこの球を長所としてる以上、その点は許容すべきだとは思っています。


☆動画から見る投球

実際の投球を見てみましょう。これは6月14日の西武戦、7回4番手として登板したときのものです。

先頭のスパンジェンバーグを膝下スライダーで、次の源田壮亮を外スライダーで連続三振。1つ失策出塁を挟み、山川穂高を138キロのスライダーで空振り三振に仕留めました。回跨ぎで8回もマウンドに上がり、外崎修太に二塁打を浴びる形で降板しましたが素晴らしい投球でしょう。

いずれも三振に斬って取った球がスライダーです。この動画からは2種類確認できると思います。1つは膨らませる軌道のスライダー。主に左打者に対して膝下を狙う勝負球として使うように見えます。膝下の場合、もう少し膨らみ抑えた方がと思うかもしれませんが、この水準で十分だと思います。強力、西武打線を封じ込めるのですから。

膝下に加えて、源田へのラストボールのように、外低めに入れ曲げるスライダーも使い分けると非常に効果的です。

もう1つは途中までストレートの軌道から滑り落ちるかのようなスライダー。この動画での山川穂高へのラストボールがそれに当たるでしょうか。角度ある直球に見えるも打者が振ったら消えていく…というような素晴らしい球です。現代で言うスライダーとカットボールの中間球を意味するスラッターに近いです(多分、3月から習得を目指したスライダーはこちらの方だと思う)。前述引用の新聞記事においても、

「130キロ後半~140キロくらい出てくれれば。左打者なら内角を突きたいですし、右打者ならセカンドゴロを打たせてゲッツーを取りたい。いい感じです」

とコメントしてる事からも、この球種ではないでしょうか。

このスライダーを速い球速帯で2種類投げる投手はロッテにおいてあまりいない為、これを使い分けられたらかなり貴重な戦力になると思います。

先程ストレートのボール率が高めかと述べましたが、この動画内でもストレートのコマンドには少し課題があるようにも見えます。カウントは取れていますが、狙った構えた箇所にきっちり投げきれてるかといったら、やや微妙に思えます。それでも源田選手のファウルの打球を見ても分かるように、球に力はあります。これだけ力があればストライクゾーン内でも勝負出来るはずです。


☆今季の起用法

吉井コーチのコメントからも期待が伺えそうですが、下記の形態でまずは中継ぎBチームでしょう。

ブルペン開幕ロースター
Aチーム: ハーマン、ジャクソン、益田
A,B中間: 東條、田中(対右メイン)
Bチーム: 石崎、小野、中村稔、チェン

以前、noteでも記載しましたが、この役割は地味ながら役割がいくつもある重要なポジションです(詳しくは下記を参照)。まずは首脳陣の信頼を掴み取ってもらいたいですね。

大きく腕を引き、胸を前にせり出すフォーム、球種や引き出しの少なさ、力押し感のある投球スタイルから見て、今後もリリーフが適任でしょう。長らくブルペンを担ってきた松永、益田、大谷、内らもベテランの域に達しており、新たな風を起こしてもらいたいです。

いきなり入れ替わりで楽天に移籍した酒居知史の穴埋めをといったことは求めませんが、個人的に春先と比べて一番期待値が上がったのは彼ではないかと思っております。


☆まとめ 最後に(開幕にあたって)

・練習試合5戦で好投、直近3戦は完璧な投球
・投球の9割をストレート、スライダーで占めるスタイル
・スライダーは速い球速帯で曲げる、ストレートの軌道から外す2種類がある。西武戦のようにこれを使い分けられたら強力。
・ややストレートのボール球が多い気がするので、そのコマンド力が課題か。力でねじ伏せられるものはある。

ここまでをまとめるとこんな感じでしょうか。ストレートとスライダーの2球種がメイン、中でもスライダーは大きく曲げて膝下を狙う、左打者の外から入れ曲げる、ストレートの軌道から外すなど多彩な起用をしており、これらの再現性を高め、更に落ちる球を上手く使えれば、支配的な投球も可能だと思います。課題はゾーン内で勝負出来る、ストレートのコマンド力でしょうか。彼にとって、飛躍の年になることを期待したいです。


遠回りしましたが、いよいよ、この日がやって参りました。勝ち負け、個人成績も大事ですが、とにかく今年は全員が1年間怪我なく健康に、無事にシーズンを過ごして欲しいです。

そして終わった時に今年はやり切ったと言えるようにしてもらえればと思います。拙い文書だったと思いますが、最後まで読んでくださった方々ありがとうございました。




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