「古墳からの四季便り亅 あるイラストからのインスピレーションです


 わたくし達はこの古墳群一帯を治める土地神様に仕える精霊でございます。悠久の昔、人であったわたくし達姉妹は寿命全うすることなく命を落としました。四人の魂は離れ難く、共にあらんとする想いが強過ぎた為天界へも黄泉の国へも移ることが出来ず、肉体が朽ち果てた後もここに留まっておりました。


 それを哀れに思われた土地神様がわたくし達を召抱え精霊として仕えることをお命じになりました。精霊となるにあたり、わたくし達には一つの枷が与えられました。わたくし達は共に過ごせるならばとそれを受け入れ、今この時もお仕えしております。


 精霊となりわたくし達は新しい名前を戴きました。わたくしは春風と申します。わたくし達は主神様の領域内の四季を司っております。季節の移ろいと共に蓄えた力を使い、司る季節の終わりに眠りにつきます。わたくし達姉妹は共に在る代わりに共に過ごす時を失くしました。それを哀れに思われた神様は節句の日だけは四人共に起きて語らえるようにしてくださったのです。


 本日は春分。冬風は力を使い果たし子どもの体に戻り、わたくしは力に満ちております。傍らでは夏風と秋風が半分眠りながら冬風の便りを聞いております。


 是日好哉。

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