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<陸自幹部候補生学校生活記録>奇襲的な“非常呼集訓練”で発生したとある同期の爆笑大失態と早朝からボコボコにされて区隊が壊滅状態になった思い出

こんにちは。

元・国防男子/陸上自衛隊応援団/初級・中級幹部サポーターのMr.Kです。
幹部自衛官として13年間勤務し、主な経歴は🪂最精鋭部隊第1空挺団、🇺🇸米国陸軍留学、✏️陸自最高学府の指揮幕僚課程、🇺🇸在日米陸軍司令部、🇺🇳国連南スーダンミッション軍事司令部等で勤務して参りました。
現在は、民間企業の危機管理部門で海外セキュリティ担当として危険国の情勢分析、セキュリティ対策の立案など、陸自時代よりもよりリスクの高い仕事をしています。

今回の記事では、陸上自衛隊幹部候補生学校での『非常呼集訓練』で僕が経験した笑い話をお伝えしたいと思います。

油断をしてしまったある候補生が、突然に教官達から洗礼を受けた話です。


⏩ ある夏の日の出来事

「はっ!!」いつもと違う目覚め何か嫌な予感が・・・

時間は、04:50頃。

陸上自衛隊の各駐屯地を始め、幹部候補生学校の起床時間は、06:00。

敏感な僕は、いつもと違う只ならぬ嫌な雰囲気を感じて目が覚めてしまい、ベッドの中で毛布に包まり、携帯電話でニュースの記事を読んでいた。

すると、

コツ、コツ、コツ・・・、コツ、コツ、コツ、コツ・・・

コツ、コツ、コツ・・・

居室の隣に面した廊下で、3名くらいが歩く足跡が聞こえる。 

コツ、コツ、コツ、コツ。

・・・・・・・・・・

1名の足音は、居室のドアの前で止まった。

他の同部屋の候補生は、まだ皆寝ているようだ。

(誰かな?)

居室のドアの方を見ると、ドアのガラス部分から居室を覗き込んでいる人がいる!

でも、ぼやけているのでよくわからない。

(当直の教官が巡察に来たのかな?)

なんでこんな時間に?????

ぼやけてよくわからないが、ちらっと、シルエットの腕の辺りに赤い腕章が見えた。

やばい!付教官だ!なぜこんな時間に見回りに!?

僕はすぐに、毛布を被り寝たふりをした。

(どうした!?これから何かが始まるんだろうか・・・・)

ドックン、ドックン、ドックン、ドックン・・・・・

目を瞑って、これから起こる出来事に不安と恐怖を感じながら、冷静にならなければと一生懸命気持ちを落ち着かせる。

高鳴る心臓の鼓動に合わせて、フランスベッドの頭上の小物入れの引き出しの扉が、カタ、カタと音を立てている・・・・

(いつ、来るんだ?・・・・・・・)

⏩ そして、その時は遂にやってきた!

ぱらぱら、ぱっぱーぱーー。 ぱらぱら ぱっぱぱーー

トキ、05:00。

いつもの起床ラッパとは異なる、初めて聞くラッパの音。

候補生、非常呼集〜」「候補生、非常呼集〜」という全館放送とともに、準備すべき装備品や小銃を搬出する旨などが放送された。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 

静かな朝が、一瞬にして慌ただしく緊張感溢れる戦場に変わった。

付教官が居室のドアを開けて、真剣な表情をして入ってきた。 

付教官 :「急いで、布団を畳めー!

     「5分以内で準備しろー

     「早く、早くしろー!」「オイ!K候補生、遅いぞ!

みんな、まだ何が起こったのかが理解できていないようだ。

何が何だかわからないまま、とりあえず全館放送で示されたとおりの準備を急いでする。

脳がまだ完全に起きていない状態だが、止め処無く付教官の怒号が居室中に響く

急き立てられながら、全力で布団を畳み着替えをして、示された装備品を準備する。

「何を準備するって言ってたっけ?」居室内の候補生同士で、放送で定められた装備品を確認しあって、準備を進めていく。

T候補生やその他の準備が早い候補生が遅い候補生を助けながら、的確に指示を出していた。

(すごい!こういう切羽詰まった時にも、全館放送で示された背嚢(はいのう)入れ組品をきちんとメモをし、みんなに指示を出している。流石だ!僕も早く自分の準備を済ませて、同期を助けてあげなければ・・)

まずは、それぞれの区隊毎に居室のすぐ隣の廊下に並んで点呼(てんこ)。

付教官が鬼の形相で、候補生の一つ一つの動作を注視していた。

(ドキドキ・・・)

(これからどんな厳しい訓練が始まるんだろう・・・) 

そんな中、

⏩ こんな緊迫した状況の中で、隣の区隊で事件は起きてしまった・・・

整列が完了した僕達の区隊は、隣の区隊の準備状況を高みの見物。

なんか隣の区隊がザワついている・・・

隣の区隊当直が、「ヤバイ!!H候補生がいないんだけど!」「誰か知ってるー?」「おーいH、どこだー?」と泣きそうになりながら必死で叫んでいる。

察するに、どうやら隣の区隊の候補生が1名、行方不明らしい・・・

(脱走したのかな? それともトイレでも行ってるのかな?)

隣の区隊の付教官は、入り口のドアから居室内の候補生の動作の状況を見ながら、次第に顔の表情が険しくなり、今にも怒りが爆発しそうな状態相当イライラしているのが表情でわかった。自分の近衛区隊が隣の区隊よりも相当遅れてるからだ。

僕たちも緊張状態だったけど、隣の区隊の危機的状況が気になってたまらない・・・内心ワクワクしながら楽しんでいたけど(笑)

隣の区隊の候補生は、ほぼ整列が完了しつつあり、残りの学生がまだ一生懸命準備をしているようだ。

⏩ あっー、いたぁー!!!

そこへ・・・・ひょっこり

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隣の区帯の居室のすぐ横にあるトイレの出入り口から血相を変え、顔を真っ赤にしながら、自分のパソコン(※現在は、私物のパソコンの持ち込みは禁止されているが、当時は私物のパソコンを使用して課題をしていた。)を開いたまま、イヤフォンをぶら下げ、自分の居室へ急いで飛び込んで行くH候補生。

居室のドア付近で怒り狂って仁王立ちの付教官の後ろを、H候補生は申し訳なさそうに通過する(笑)

付教官がH候補生を見つけて、怒り狂って問いただす。

 付教官  「おいっ、H! 今までどこに行ってたんだ!」

 H候補生 「はい!お腹が痛かったため、トッ、トイレに行っていましたー!」

 付教官  「パソコンを持ってかぁー!」「何をしていたんだ!」

(付教官、そこの詳細はあまり突っ込まないであげて。。。)

こんな時にパソコンを持ってトイレに籠もっているとは・・・なんと、不運な・・・

この後、H候補生がどうなったのかは、ご想像にお任せします。。。w 

その後・・・

示された装備品を背嚢に全て入れて、武器を搬出して、急いで隊舎の外へ。 

⏩ 次は、「隊容(たいよう)検査」

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(出典:陸上自衛隊公式HP)

隊容検査とは、示された装備品がしっかり準備できているか、服装はしっかりと着こなされているか、すぐに出動できる準備ができているか等をチェックする検査のこと。 

付教官:「背嚢の中の入れ組品を全部出せ!

そんな切羽詰まった状況での準備なので、当然、装備品を忘れてしまう候補生が出てくる。 

付教官:「おい、O。何で水筒に水を入れていないんだ?

O候補生:「すみません! 入れるのを忘れていましたー!」  

 一人のミスは、全員のミス。

付教官:「お前ら、中弛みか?始まって、5ヶ月位経つけど、最近、気が緩んでるんじゃねーのかっ!」

    「腕立て伏せ、よーい。」「はじめっ!

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(出典:陸上自衛隊公式HP)

延々と区隊全員での腕立て伏せの『反省』が続く

いつ終わるかわからない腕立て伏せほどキツイものはない

かなりの悲鳴が聞こえたが、何とかやり終えた。

はぁ・・・やっと、終わった・・・ 

(さあ、これで装備品を片付けて、朝食を食べに行けるぞ。)

でも、そんなに甘くはなかった。

⏩ 最後のトドメのハイポート!!

背嚢を担ぎ、銃を持って、区隊まとまっての『ハイポート(小銃を体の前方に保持し、掛け声を出しながらひたすら駆け足)』へ突入。

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(出典:陸上自衛隊公式HP)

「いっち、いっち、いち、にー」「ソーレ!」

「いっち、いっち、いち、にー」「ソーレ!」

「せいきょー(精強)!」「1区隊!」

起きたばかりで、朝食も食べていない状態。

夏真っ盛りの朝で、日が登ってきて、次第に気温も上昇してきた。

しかも、いつ終わるかもわからない・・・

どんどん同期が悲鳴をあげながら、一人、二人と列から脱落していく・・・

遅れた同期に、その他の同期が励ましの言葉をかけながら、何とか隊形を保持しようと頑張っていく。

「いっち、いっち、いち、にー」「ソーレ!」

「いっち、いっち、いち、にー」「ソーレ!」

「せいきょー(精強)!」「1区隊!」

「せいきょー(精強)!」「1区隊!」

 ・・・・・・

 数十分程度の時間だったが、かなり長い時間走っているように感じた。

 多数の脱落者を出した後、地獄の非常呼集訓練はやっと終わった・・・

 人間って肉体的・精神的に追い詰められた時に、本性が出てしまうんです。

 ・ 責任を誰かに押し付けてしまう。

 ・ できない人に文句を言ってしまう。

 ・ 見られていないところで楽をしてしまう。

 ・ 我慢ができずに、泣き言を言ってしまう。

 ・ 途中で投げ出してしまう。

苦しい場面に直面した時、部下はリーダーの言動を見ているもの。

 ・ 狼狽せずに、冷静な状況判断ができるか?

 ・ 苦しい局面でも、部下のことを考えてくれているか?

 ・ この上司は、信頼するに足る人間か?

 ・ 自分の命を預けられる人物か?

実践を通じてこんな人間力を向上させるような教育を受けられるのは、自衛隊だけでしょう。

幹部候補生学校って本当に楽しいところだと思いませんか?

陸上自衛隊幹部候補生学校での生活での『非常呼集訓練』を紹介しました。

入校中、必ず1回はあります。候補生たちが中弛みした頃に(笑)

ちなみに、新隊員教育でも非常呼集はあり、最後の総合訓練の時に計画されることが多いです。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

元国防男子 Mr.K

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