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<2022年 元空挺隊員が勝手に選んでみた> 陸自最精鋭部隊・第1空挺団の10年前からの進化〜BEST 3〜

こんにちは。

元・国防男子/陸上自衛隊応援団/初級・中級幹部サポーターのMr.Kです。
幹部自衛官として13年間勤務し、主な経歴は🪂最精鋭部隊第1空挺団、🇺🇸米国陸軍留学、✏️陸自最高学府の指揮幕僚課程、🇺🇸在日米陸軍司令部、🇺🇳国連南スーダンミッション軍事司令部等で勤務して参りました。
現在は、民間企業の危機管理部門で海外セキュリティ担当として危険国の情勢分析、セキュリティ対策の立案など、陸自時代よりもよりリスクの高い仕事をしています。


今回は、僕が第1空挺団に所属していた約10年前から第1空挺団(自衛隊唯一の落下傘部隊)が大きく進化したと思ったことベスト3について書きます。

あくまで僕個人の感覚です。

そのベスト3とは、

1.外国部隊との空挺降投下訓練
2.大規模連続降下
3.女性空挺隊員の誕生

です。

⏩ 外国部隊との空挺降投下訓練

10年前と比べて、陸上自衛隊全体として外国部隊との訓練の数がかなり増えています

空挺団の場合は、降投下訓練を米軍と共同で行うようになりました

10年前には無かったことです。

僕が所属していた時期には外国の部隊との空挺降投下の共同訓練は一度もありませんでした

下の写真は、最近行われた米軍との共同訓練の写真です。

図1
図2

在日米軍横田基地所属のCー130 Super Herculesを使用した降投下訓練を行っています。

図8

僕が所属していた当時は、国産のC-1輸送機での降下がメインでした。

図1

このC-1輸送機は、C-130輸送機と比較して機体が小さいため、それほど多くの人員を輸送する事ができません

ちなみに、数年前よりC-1輸送機の後継である、国産のC-2輸送機が配備されています。
C-2輸送機は、C-1輸送機の約4倍の航続距離、約3倍の搭載重量を誇る大型機です。

図1

もちろん、この輸送機を使用しての空挺降下訓練も行われています。

それぞれの機種を比較してみるとこのようになります。

図1

C-1輸送機を使用した片側扉の降下は下の写真のような感じになります。

図4

現在は、米軍との共同訓練により米軍が所有する大型のC-130輸送機を使用した降下が行われています。

航空自衛隊もC-130輸送機は保有していますが、自衛隊だけでこのような複数のC-130輸送機を使用した訓練は難しいと思います。

航空自衛隊は実任務で航空機を使用していますので、空挺降下訓練のために複数のC-130輸送機を確保する事が難しいからです。

空挺降下訓練を計画する際には、いつも航空機の確保の問題が付きまといます

米軍と共同することで、航空機の不足という問題を解消するとともに、米軍との空挺作戦の相互運用性を向上する事ができているのですね。

そして、このような訓練を行うことで、中国等の日本の離島侵攻を企図する国に対して抑止力の効果も期待できます

⏩ 大規模連続降下

図1

僕が所属していた頃は、『696MI』、通称『12傘(ひとにぃさん)』と呼ばれる落下傘を使用していました。平成12年に正式導入された傘になります。

この落下傘は、従来の落下傘(60式空挺傘)と比較して、装着が容易となり操縦性も向上しました。

しかし、落下傘の性能上の問題で大規模な連続降下ができませんでした

図2

ご覧の通り、傘体に複数の大きな穴が開いていることが確認できると思います。

この傘体に穴が開いている事で、空中で他の隊員と接触すると傘が縮んでしまい落下事故が発生する可能性があったためです。

実際に、僕が所属していた期間にも空中で傘同士が接触して、傘が萎んでしまって落下したという事案が複数回ありました。幸い骨折程度の事故ですみましたが・・・

このような安全上の理由から、
12傘では航空機の両側扉を使用しての降下ができず、片側扉からの少人数での降下しかできなかったのです。

結果的に、非常にショボい降下訓練しかできていなかったというのが実情でした。

図4

しかし、平成25年に新しい落下傘が採用されたことにより、両側扉を使用した大規模な降下ができるようになりました。

この新しい落下傘は、🪂『13式空挺傘』。
平成25年度に採用された藤倉航装製のパラシュートです。

図3

僕が所属していた頃から、フランス製のものか、藤倉航装製のものかという事で検討されていたことを覚えています。

結果的には、日本製(藤倉航装製)の落下傘を採用することになったようです。

この落下傘の大きな特徴は、空中で傘と傘が接触したとしても傘が萎まないことにあります。12傘の最大の欠点を解消した装備品です。

この傘を採用したことにより、『集団密集降下』が可能となりました。
僕が空挺団にいた時から、『集団密集降下』は空挺団として追求していた降下スタイルでした。

落下傘の最大の欠点が解消されて航空機の両扉からの降下が可能となることで、一度に大量の隊員を降下させる事ができるようになりました。

図1

最近では、米軍の複数のC-130大型機を使用した500名規模の大規模な降下訓練も行われているようです。

ご覧の通り、大変見応えのある風景です。
これぞ空挺降下という感じですね。

10年前には想像できなかった光景です!

現在、空挺団には離島防衛の任務も付与されています。
狭い地域に大量の戦闘力を一気に投入する必要があるため、現在使用されている落下傘は任務に適合している装備品と言えます。

空挺団が次に目指す目標は、1コ大隊規模での『夜間』の『集団密集降下』というところでしょうか。

習志野演習場での夜間降下は定期的に行われていますが、演習場が街の中にあることもあり比較的明るい中での降下です。

図1

東富士演習場での夜間降下となるとかなり難易度が上がると思いますが、いつか普通科大隊の訓練検閲で、夜間降下で始まるような訓練検閲が行われる日を楽しみにしています。

⏩ 女性空挺隊員の誕生!

図3

3つ目は、第1空挺団初の女性隊員誕生です!

2020年3月5日、橋場麗奈(れいな)3等陸曹が、空挺の基本降下課程を修了し、初の女性空挺隊員となりました。

この話題は、ニュースにもなりました。

米軍をはじめ各国の軍隊では、女性のAirborne隊員は普通にいますが、この時までは、第1空挺団は100%男性隊員の部隊でした。

僕が所属していた当時は、まさか女性の空挺隊員が誕生するなどとは思ってもいませんでした。

空挺団の歴史を変え、未来を切り拓いた彼女を称賛したいと思います。

間も無くして、2人目の女性空挺隊員が誕生しました!

図1

空挺団の演習の時は、通常の部隊とは異なって長期間、かつハードな訓練なのでかなり大変だと思いますが、頑張ってほしいものです。

彼女たちも、ゆくゆくは『空挺レンジャー課程』を目指すことになるのでしょうか。

女性自衛官初の空挺レンジャーが誕生する日もそんなに遠くないかもしれません。

⏩ 最後に

元空挺隊員だった僕が勝手に考える第1空挺団の10年前からの大きな変化、3つを紹介しました。

1.外国部隊との空挺降投下訓練
2.大規模連続降下
3.女性空挺隊員の誕生

陸上自衛隊創設以来の大規模改革の真っ只中で、空挺団だけでなく、陸上自衛隊全部隊が大きな変革を迫られています。

隊員達は大きな環境変化の中で柔軟に対応していくことが求められ、また10年前よりも任務が多様化して、隊員一人一人あたりにかかる負荷も大きくなっているのではないかと推測します。

大変な時期だとは思いますが、
日本のため、国民のために日々頑張っていただいていることに感謝致します。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

元国防男子 Mr.K


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