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クリスマスのミルクティー

ここはオシャレなカフェ。
普段はこんなオシャレなカフェなんかにはいかない。

12月の特別な日、夫の仕事が遅く終わると言うので、ここで気分転換でもすることにした。
雪が降ってきて、少しロマンチックな気分になってきた。

ミルクティーを飲んでいると、身体が温かくなってきて、居眠りしてしまった。
なんか、凄く変な夢を見た。

私は、ミルクティーの湯船に浸かっていた。
そこから、紅茶の葉っぱの魔物が出てきた。

「おい!ちょっと聞いてくれよ!
何でまた牛乳と同じ湯に入れられるんだよ!
訳わかんね!
私はね、私本来の味と香りをそいつに邪魔されたくないのに!」

そう言ってその魔物は、なぜか泣いてしまった。
私はどうすれば良いか分からなくて、ただ黙って聞いていた。
しばらく経つと、ミルクの魔物が現れた。

「ごめんね。紅茶の葉っぱさん。
なんでこんなに嫌われなくちゃいけないのか分かんないけど、悪気はないのよ。
ごめんねえ。私はどうすれば良いのかねえ。」

「私はミルクさんが嫌いなんかじゃない。
でもね、私は私なの!
本当はミルクティーなんかになりたくないのに!
本来の味でいられる紅茶達が羨ましい!
今日だけでも良い、ミルクティーではなく紅茶になりたい。お願い、今日だけで良いから。」

すると、ミルクティーの湯船が紅茶の湯船へと変わった。

目の前に広がるアッサムティーの良い香り。
こんなに心地良いのは、初めてかもしれない。
時間が止まってしまえば良いのに。

時間は止まってはくれなかった。
誰かの声に起こされた。
「ここにいたのか!
日が暮れても帰って来ないから心配したんだよ。」
「何でここにいると分かったの?」
「仕事帰りたまに見かけるから。長居する場所ここしかないだろ?」
私は夫とこっそり手を繋いで家路に向かった。
今日は一緒に湯船に浸かろうかな。

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#冬
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#小説 #紅茶 #ミルクティー

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