#1

「高校時代?そうだなー、一番たのしかったのは、文化祭の委員長やったことかなー!あれは、楽しかった。」

「へー!そうなんだ!偶然おれも同じく文化祭。委員長とかはやらなかったけど、舞台装置の係で。意外と力入っててね!」

「そうだなー。軽音のラストライブ、かな。感慨深かったよ」

「まいは?」3人が一斉にこちらに顔を向けた。いまだに何も思いつかずにぼんやりしていた私は、とっさに学校とは関係のないことを口走った。

「そうだね、えーっと、ラジオでめっちゃ読まれたことかなー。🦦っていうバンドが好きで、めっちゃメール送ってたの。そしたら数撃ちゃ当たるで頻繁に読まれるようになったこと、かなー」

「えー!それは凄いけど、学校の話だって!今は!😂」

口々に笑いかけてくる彼らに私は言葉を選びながら1つだけ、口にした。

「強いて言うなら、1回、あんまり話したことがなかったけど面白くて手厳しい感じのクラスメイトと他数人と、ある教師の悪口を私がちょっと話してたら『めいちゃんの悪口聞くの楽しいんだけど笑』って1回だけ褒めてもらえたこと、かな…面白いね、って言ってもらえて凄く嬉しかったよ」

わりと真剣に話しすぎて周りを見てなかった。皆んな、ちょっとびっくりしてた。些細すぎたかな、このエピソード。これくらいしか無いんだけど笑

もうちょっと空気読まないといけなかったかな、エピソード無いけど。

一瞬の気づくか気づかないかくらいの不自然な間の後、すぐにコウキが口を出した。

「そういう小さなことでも覚えてられるのって流石まいだよねー!」

「ほんと、ほんと、そういう視点ってすごいと思うよ?」

次々とフォローをかましてくれる、優しすぎる彼らに救われつつも、多少の罪悪感を覚える。「ありがとう😊ありがとう!」笑顔で返す。

やっぱりな。ありがとうとは思いつつも、ちらりと明るみに出てしまったズレ。それには気づかずにはいられなかった。やっぱり、違うな。

「ちょっと、水追加してくる〜」

「いってら〜」

お気に入りのタンブラーを掴んで、部屋を出る。なんてことない、些細なズレ。それでも、そのズレ故に、輝かしい彼らの横に並んではいけない気がした。

やっぱり私は、ステージに立つべきではないのかもしれない。


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