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技術書典16 サークル参加レポ 頒布物編

今春のイベント(技術書典16、技書博10)で頒布した書籍について、その執筆中のことと、直接頂いたご意見・ご感想等を振り返ります。
(技術書典16は6月9日までオンラインマーケットが開催されていますのでぜひご覧ください)

今回は2冊の新刊をリリースしました。
1冊は最適化問題として考える組込み製品開発(組込み本)、もう1冊は会社大爆散 残った人、辞めた人、アメリカに行った人(爆散本)で、後者は自分を含めた3人で書く合同本です。
それぞれ、執筆開始から入稿までの様子を簡単に書きます。

執筆の流れ 組込み本編

2023年11月 アイディア出し

技術書典15、技書博9で頂いたご感想等を振り返り、つぎの本の案を練り始めました。
まず最初に進めたのが関数近似に関する本でした。ニューラルネットワークやRBFネットワークは汎用的な関数近似器ですが、これらの他にも多くの関数近似手法が存在します。様々な関数近似器を集めてその特徴やアルゴリズムを書いた本を作るのが面白いのでは?と思って始めました。

12月 調査

関数近似について文献調査やプログラム実装を進めました。なんとなくこのテーマで書くの無理かもと思い始めました。

2024年1月 方向転換 & 執筆

色々考えた結果、関数近似本をあきらめ、組込み開発本に着手することにしました。なぜ組込み開発をテーマにしたか。思いつきというか、アイディアが降ってきたというか。一気に書き進めて、1月終了時点で6割くらい書けていたと思います。

2月 引き続き執筆

引き続き執筆……。具体的事例を載せたいが良い例が思い浮かばないので、他のパートを書き進めました。補足と調査が必要な項目以外はだいたいできていたはずです。

3月 執筆 & 虚無

具体的事例が思い浮かばない & 後回しにしていた項目の執筆が滞り、時間を浪費しました。書きづらいところは載せないことにしました。筆が乗らない虚無の時間は、ひたすら羽田空港行きのリムジンバスの車窓動画を見てました……。

4月 完成 & 入稿

具体的事例はあきらめ、なんとか本文を完成させました。そして組版、図の制作、数式入力を進め、初稿を作りました。この時点でスケジュールはぴったりくらい。校正を3~4回重ね、最終版を発行しました。
表紙も作りましたが、前回イベントで作った"最適化問題として考える開発と設計"のものを流用したので、30分もかけずに作りました。

結局、印刷会社 ねこのしっぽさんの早割期限の5~6日前くらいに完成したので、スケジュール管理はうまくできたのかなと思います。

執筆の流れ 爆散本編

2023年8月 思いつき

大井競馬での雑談のなかでこんな本書いたら面白いのでは!という流れになり、なるほど、複数人で書くという手があったかと気づきました。

11月 執筆者決定

大井競馬に行った人とアメリカに住んでいる人で書くことにしました。

12月 執筆開始 & 計画立案

どんな内容にするか、どのような日程で進めるかといった計画を他の執筆者に説明しました。この時点で技術書典の日程がわかっていなかったので、技書博より早い場合と遅い場合の2パターンの計画を立てました。
執筆者のうち1人は説明後、数日でかなりの量の原稿を書いてきてくれました。

2024年1月 執筆1

まずそれぞれのパートの骨子、プロットを作りました。この時点では進捗良好、余裕でできそうな感じでした。

2月 執筆2

本文はおおよそ完成。本文デザインも大枠は完成しました。タイトル案を考えてくる宿題を3人中2人が忘れてきて決定できませんでした。

3月 執筆3

執筆者ごとの進捗に差がでてきて、校正ができるパートとできないパートにわかれました。とはいえ、まあ4月に頑張ればなんとかなるはず!という感じでした。
あと、タイトルが決定しました。

4月 なんとか完成 & 入稿

いろいろあって用意していたバッファをすべて使い切り、校正を1回スキップして入稿しました。なんとか完成させましたが、奥付に誤りを発見しました。やはりチェックを怠るといけませんね。
あと、価格も決定しました。会場では800円、オンラインでは1000円としました。1冊あたりの印刷費が790円台と、原価率98%超の本が誕生してしまいました。まあ同人誌なのでね……。

5月 修正

奥付の誤りを修正しました。これで頒布できるようになりました。

[新刊] 会社大爆散 残った人、辞めた人、アメリカに行った人

前日の技術書典オープニングセレモニーで笑いが起きた一冊。なんと14時過ぎに持ち込み分が売り切れてしまいました。
お買い上げいただいた方々、ありがとうございました。また、売り切れ後にお越しくださった方々、申し訳ありませんでした。

いただいたご意見・お話した内容等

  • 残って良かった?辞めて良かった?

  • 前日配信で気になっていた

  • タイトルがとても気になる

  • アメリカ行くのはすごい

  • 良い紙を使っている

感想

多くの方が読みやすいタイトル・内容かと思いますが、興味を持ってきてくださる方は3~4パターンくらいだったと思います。

  • 自分も近い境遇だった人(会社が無くなった・切り離されたなど)

  • 労務 / 人事 / 労働問題等に興味がある人

  • アメリカでの就職、留学等興味がある人

  • 経営者・経営に近い人

この本は、書いてみるか!のようなノリで始まったので、あまり明確な読者をイメージせずに作っていました。同人誌は書きたいことを書けばよいと思っているのでそれでよいと思うのですが、なんとなく紹介文が書きづらいんですよね。

[新刊] 最適化問題として考える組込み製品開発

前回の技術書典15で書いた「最適化問題として考える開発と設計」の考え方をハードとソフトが共存する組込み製品の開発プロセスに応用した本です。基本的にはハードの抽象化に伴う問題と開発プロセスが内包する不確実性の処理について述べています。

いただいたご意見・お話した内容等

  • ハードの人なのにファームのことまで書いていて良い

  • この本の内容はどんな製品向けか

  • 組込み製品関連の技術はどうやって習得したのか

感想

この本は当初、具体的な製品開発事例を載せようと思っていたのですが、良い例が思い浮かばなかったことと、時間切れになってしまったことから、削除してしまいました。その結果、抽象的な視点での記述のみになったわけですが、なんとなく反応から、組込みerは具体的な内容のほうが好きなのではないかと感じました。日頃から感じている基礎と応用の距離、理論と実際の距離を改めて実感しました。

[既刊] 最適化問題として考える開発と設計

アジャイルやウォーターフォールなどの開発プロセスを最適化問題として捉えて理解を試みた本です。

いただいたご意見・お話した内容等

  • 開発プロセスを最適化問題として記述する考え方はよくあるのか

  • 実問題で具体的に定式化するのは難しいのでは?

  • おもしろい

感想

前回の技術書典15につづき、概ね好評でした。やはり開発プロセスはなんとなく捉えるのが難しいのか、新しい視点を求めていることが感じられました。

[既刊] オームの法則だけで理解するスイッチ・FET・IOポート

マイコンなどのIOポートの物理層をオームの法則だけで理解しようという本です。

いただいたご意見・お話した内容等

  • ハードをこれからやろうとする人にはおすすめか

  • 初学者にFETを増幅から教えるのは良くないと感じていたのでこの本は良いと思う

感想

前回から引き続きあまり多くのお買い上げが無い本ですが、今回はとても良いご意見をもらえました。
これまで、この本は電子工作初心者向けに勧めていましたが、そのような方々は、具体的な回路例か特定のマイコンや部品の使いこなしを求めている傾向があり、理論よりの内容は必要としていないようでした。
今回、工業高校で教えていたことがある方が、従来の増幅から入るFETの説明だと理解が難しくなることがよくあると教えて下さいました。スイッチングから入るべきだと。
なるほど、これか!と思いました。電子回路を作りたい人ではなく、電子回路を勉強したい人、または教えている人かと。たしかに、電子工作やっている人って自分で学びますからね。

次の構想

もしまた技術系同人誌を作るとしたら何を書こうか考えているので、さらっと書いておきます。

  • 最適化問題として考える競馬 [理論編]

  • 最適化問題として考える競馬 [実践編]

  • Juliaで書くメタヒューリスティクス

  • 最適化手法のカタログ

  • 関数近似のカタログ

  • ディスプレイの色

全く違うテーマで書いているかもしれないし、何も書かないかもしれません。次回のイベントがいつになるかはわかりませんが、またよろしくお願いします!

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