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青の一辺


さっきまでさえずっていた鳥たちが一斉に舞い上がる
緑は光の陰影を地面に落とし 風に瞬きをする

ざわめく森が大きく揺れる音 
波は指の間から砂をさらっていく

この心臓を脈打つ力が、風や波を起こす力と同じだとしたら
潮の満ち引きに呼応するこの身体にも同じ力が働いている

なぜだか踏み込むことを拒んでいた土地
覗きこむのを避けていた水面

自然に呼応する力を信じて 大きく深呼吸
遠くから見つめるだけだった水平線は大きな立体の一辺で、
その向こうには恐ろしいほど美しい生命の営みが永遠に続いていた


強すぎる感情は、ときに無感覚になる 
ピカソが喪失の傷を表現し、青に癒しを求めたように
慈しみや優しさという感覚に手を伸ばす

そういう時間に寄り添うのが青だった


もはや何が悲しくて何が辛かったなんてことは覚えていない
そういう輪郭なくつかみどころのない水温と同化して溶解する

新月の闇夜、境界をなくした水平線は 
幾千もの星たちに囲まれて青が極まったことを告げた


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