２８.「令和の白拍子」番外編！金木犀の香りに包まれて

令和の白拍子こと、花柳まり草こと、まりちゃんです。
突然ですが、私は金木犀の香りが大好きです。

どこからともなく金木犀の甘い香りが漂ってくると、とても幸せな気持ちになります。

と同時に、少し物哀しい様な、寂しい様な、そんな心持ちにもなるのです。

私は日本の四季はどの季節も大好きなのですが、特に季節が移っていくほんの短い間が大好きです。季節と季節の境界線。狭間。

秋から冬にかけて、全てが静かに沈んでいく感じ。
肌寒くなって、暦上での一年も終わって、人間も木々もお花もそのサイクルを終えて、命の輪っかが閉じていく感じ。

ちょっと感傷的になりましたが・・・しっかりとその輪郭を捉えようとしても指の隙間から逃げていってしまう様な、曖昧であっという間に過ぎていく季節がとっても好きです。

金木犀の香りに包まれると、自分がその境界線の上に立っているのだという気持ちにもなりますし、幼い頃の記憶や、音楽学校時代の記憶が思い出されます。

幼い頃の記憶と申しましても、どこでどうしたという特定の思い出はないのです。

なんというか、無条件に「守られていた」という感覚です。

「私は私のままで、子供であることで、それだけで無条件に愛されていた」という感覚は、温かい毛布にくるまっていつまでも眠っている感覚に似ています。

大人になるとその毛布を脱いで、自力で獣道を進んでいかなければならないし、時にはアホらしい承認欲求や愛情欲求に翻弄されたりして、自分で自分の手綱を持って、自分自身をコントロールすることに結構疲れたりします笑。

戻りたいとは思わないけれど、その時の毛布の感触がとっても懐かしくなるわけです。

音楽学校の記憶の方はと言いますと、また詳しく本編でも書きますが、実家を離れてずっと寮生活になる訳です。

それまでアルバイトもしたことがなく、社会と積極的に関わってこなかったまりちゃんとしては、知らない土地での生活の中で、普段は忘れていてもちょっとした瞬間に「郷愁」の念がふつふつと湧き上がってくることがありました。

ちょうど、予科生生活の中で一番しんどかったと思われる行事が１０月にあり、精神的にも肉体的に疲労が頂点に達していました。
同期をまとめなければいけない立場にあったのに、満足に出来ない。
自分の不甲斐なさに打ちのめされる日々。

そんな時期の休日、宝塚南口にあるイカリスーパーの前を一人でとぼとぼと歩いていました。

その日は、すごく美しい日だったんです。

秋晴れで、暖かくて、陽の光がキラキラしていて。
で、どこからともなく金木犀の香りがふあ～っと漂ってきて。

その瞬間、ぶああああああああ、と涙が溢れて止まらなくなりました。

本当に、漫画みたいです。
ぶああああああああ、って。

しかも、笑えるくらい止まらないんです。

多分、「毛布」のことを思い出したんだと思います。

予科生の時は、外を歩いている時の手の位置を「気をつけ」のボジションから崩せなかったので、溢れ出る涙を拭うこともできませんでした・・・笑

涙を流しながら、ひたすら前を見つめて歩いる女子。怖いですね～！笑

人って、なかなか「弱さ」とか「短所」って認めたくありません。

考え方や見方を変えれば、それらは「強み」であり「長所」にもなる、とも言われます。

でも、本当にそれらを「強み」にするならば、まずは「弱さ」をきちんと「弱さ」として認めて、向き合わなければならないと思います。

すぐに考え方や見方を翻してしまったら、そこから逃げてしまうことになる。

予科生の秋は確かにしんどい時期ではありましたが、自分の欠点と弱さに否が応でも向き合わされた時期でもあり、その時があったからこそ、今の自分が構築されたなぁという気持ちです。

今もそんなことを繰り返しながら、歩いています。
師匠にもよく言われますが、一生「人間修行」ですね・・・。

金木犀の香りと共に蘇る、ほろ苦くも大切な思い出をご紹介させて頂きました。

これから、金木犀の香りをかいだら、どんなことをまりちゃんは思うのか。
どんなステキな思い出が、この先の人生で増えていくのか。

その時は「辛い」と感じても、後々そのことを振り返れば、無駄だと思われる様なことは何一つ自分の身には起こっていません。

やったね！！！！

今から、とっても楽しみにしているまりちゃんなのでした。

まり草

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