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32.「令和の白拍子」清く、正しく、逞しく〜宝塚音楽学校ライフ(予科生編③)

令和の白拍子こと、花柳まり草こと、まりちゃんです。

私の住んでいる地域では秋晴れの日が続いて嬉しい限り。
皆様はお元気でお過ごしでしょうか。

前回は、宝塚音楽学校の入学式を迎えるまでの「ガイダンス期間」についてお話をさせて頂きました。

まさに「洗礼」。そんな行事が目白押しだった一週間のガイダンス。

今回は、そんな日々を何とか生き残り迎える事が出来た「入学式」について書いていきたいと思います。

何度も申し上げますが、具体的な「武庫川ルール」の内容には触れられません。空気感というか雰囲気というか・・ニュアンスが少しでも皆様に伝われば幸いです。

それでは、参りましょう!

■デコボコを叩き潰す場所

「武庫川ルール」

その内容を詳細に書き記したい。皆様とも共有したい。

・・・そんな悪魔的誘惑に心が折れそうになります。

が!本当にいろいろな方面からお叱りを受けそうなのでやめておきます。

あ〜〜、それにしても・・・!!

本当に面白い規則ばっかりなんですよっ!!!

そして、何が一番面白いって、我らはそんな超絶面白い武庫川ルールを死ぬ気で遵守していた事です。

ちなみに、他の同期生から話を聞くと、学校生活の後半では気持ちに余裕が出て来て、かなりリラックスしながらサバイバル生活を送っていたそうです。

ツワモノーーー!!!

ただ、私はアホでヘタレなので、最後まで本気で死ぬ気で「武庫川ルール」に身を捧げていたタイプの生徒でした笑。

強くなりたい・・・。

さ、こうしたエピソードからもお分かりになる様に、「宝塚の同期生」と一言で言っても、出身地もバラバラ、それまでのお稽古歴もバラバラ、当たり前ですけれど生活様式もバラバラ。
何度も申し上げますが、受験戦争をくぐり抜けてきたアクの強い子たちばかりな上に、この様になんでも「バラバラ」。

なので、普通の学校生活を送ってしまうと、良くも悪くも個性的すぎて尖りすぎている私たちですから、「集団で何かをする」という事を学ぶ事ができないと思うんです。

舞台の上においては「個人戦」で各々が光を放つからこそ素晴らしいのですが、一つの作品を作ってお客様に提供するという点においては「チーム戦」でもあります。その作品の中で自分はどう立ち回ったらいいか、自分に課せられた役割は何か、を舞台の上においても、舞台の裏側においても考える視点は大切です。

そこで重要になってくるのが「武庫川ルール」なのです。

とにかく一度、個性的すぎる「デコボコ」な我らを、「規則」と「慣習」の名の下にめっちゃくちゃに叩きのめして、平にならすこと
何が何でも「カラスは白い」という事を飲み込ませ、出身地がバラバラの人間たちを「武庫川の水に染める」ということ。

そこで叩かれても叩かれても拭う事ができないもの、残るもの、壊せないもの、譲れないもの、生まれてくるもの・・・それが、本当に各々の個性だと思います。

「チーム」として動くために必要な集団意識を育てつつ、さらに、ぶっ潰されても伸びてくる強靭な「個性」を自身に再発見させる。

「武庫川ルール」、なんて合理的なのでしょう!!!!

「個性を伸ばす」とか「自分を大切に」って世の中的には割とラフに言われている様に感じるのですが、そんな簡単に個性って伸ばせるもんなの?脆弱な自分で満足なの?ってたまに思います。

あと、「こんな事をやるために会社に入ったのではない」という言葉もよく聞きますが、その世界に足を踏み入れた最初の頃っていうのはそんなものなんじゃないかなって思います。

私たちだって「こんな事をやるために宝塚に入ったのではい」と思う毎日でしたけど、やはり、この道のりは必要だったのです。

あくまでも私の個人的な意見ですが

めちゃくちゃに叩き潰されることは、時として必要なのでは。

無駄と思える事を、全力でやることは、時として必要なのでは。

その分、やりたい事をやれる様になったときのありがたみや、その道のりのゴールポイントに辿り着いた時の達成感は何にも変えがたいと思います。

■涙、涙の入学式

話を戻しまして、いよいよ迎えた入学式です。

音楽学校の講堂に入った時のまりちゃんの目に飛び込んできたのは、もちろん本科生の皆様の顔、それに加えて久しぶりに見る母の顔、保護者の皆様の顔、取材にいらした記者の人の顔・・・。

「ガイダンスを、本当にやり切ったんだ」とか「いよいよ授業が始まるんだ」とか「入学を認められて嬉しい」という気持ちもありましたが、それ以上に忘れられないのが、この時の景色なんです。

私は講堂に集まった沢山の人たちの顔を見て「あぁ、私たちの周りには、これまで通りの日常世界が広がっているんだ」と強く思ったんです。

入学式に考える事としてはちょっとズレていると思うのですが、この時、私が感じたのは「違和感」以外の何ものでもなかったのです。

世間と隔絶され、学校と寮の往復で過ぎていったガイダンスの日々。テレビも見ていません。同期と本科生と、たまに音楽学校の先生と寮母さん・・・関わった人間はこれだけ。しかも「人間らしい普通の会話」をできるのは同期とだけでした。同期生以外の人とお話しする時は、「武庫川ルール」に則った言葉しか使えませんでした。

部屋を一歩出たら、声を上げて笑うことは許されませんでした。

ソフトに監禁され、武庫川ルールをハードに洗脳され続け、「予科生」というアンドロイドとして振舞う様になった毎日。

自分たちだけ、世界との関わり方がこれまでとかなり大きく変わってしまった、でも世界はそんな私たちに見向きもせず、変わる事なく回り続けている。

私が死ぬほどの気持ちで守ろうとしている「鬼の武庫川ルール」なんて、音楽学校以外の人たちにとってはなんの価値もないし、全く重要ではないのです。

ものすっごい、違和感でした。

この場で、私の母に笑顔で振り返ったらどうなるんだろう。この隊列を乱して、隣の同期に話しかけたりしたらどうなるんだろう。

同期は泣いていました。何ならさっきまで鬼の様だった本科生の皆様も泣いて下さっていました。そうしたら、涙が私にも感染しました。お陰で、上記の様な悪魔的誘惑から逃れる事ができました笑。

あと、どうしても忘れられない思い出がもう一つあります。

入学式では、先生から一人一人名前を呼ばれるですが、その時に私は思いっきり名前を間違えられました!!!

「私の次の人の苗字+私の下の名前」で呼ばれてしまったのです。

一瞬躊躇したものの、私は「はい!」と大きな返事をして立ち上がりました。

心の中では、「そんな人おらんけど・・・!!!!!誰それ!?」と超大声で叫んでいました。

もう少し感動的な入学式となる予定でしたが、感じたのは「とてつもない違和感」、そして名前を間違えられるというまさかの珍事件に見舞われてしまったまりちゃんなのでありました。

さ、というわけで本日はこれ切り・・・是非、次回も逢いにいらしてください♪

ドタバタ武庫川ライフ、続きます!!

いよいよ始まる音楽学校生活!!!

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