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4年半ぶりに日本に帰って素朴に思ったこと

日本に戻ったら、4年半もいたロンドンの生活のいろんなものが恋しくなったりするかな、どうかなと思ってここ1週間過ごしているが、あの商品が恋しいとか、あの景色に戻りたいとか、日本語のない世界に戻りたいなどというノスタルジーが1ミリも湧き上がってこない。(ロンドンの友達と簡単に会えないという寂しさはあるけど、ご縁ができた人との繋がりはこれからもきちんと続くだろうという確信があり、あまり心配していない。zoom慣れしたせいで、時空を超えるとも思っている)

スーパーに行って、棚に並んでいる紅茶の種類がものすごく少ないことに驚いたが、「ロンドンのスーパーに売っている○○ティーが飲みたい」などと全く思わず、リプトンやらセブンイレブンの紅茶にすぐ満足した。

新宿歌舞伎町という風情もへったくれもない街で隔離生活を送っているため、「職業イケメン」と書かれたホストの広告車をよく見る。オフィスビルとゴミゴミした小さい店の集合体の街で、どこを切り取っても絵になる感じのロンドンの街とは全く対照的であるが、それでも、あのビンテージの家家が並んだ街に帰りたいとは今のところ思わない。

一個だけイギリスがよかったと思ったのはテレビである。何の専門家でもないコメンテーターが何かしゃべるというのが普通の日本のテレビを見ているとウンザリするから、隔離生活中はずっとBBCワールドをかけているし、ついにVPNを契約して(1ヶ月300円だったから)、大好きなBBC iplayerまで見られるようになった。

日本語しか聞こえない世界で、これからきっといろんな同調圧力みたいなものを感じてウンザリもするんだろうし、歌舞伎町の露骨な性の商品化にもすでにウンザリしているのだけれど、それでもロンドンに帰りたいと思わない。

これは私が日本人だから、という”血”とか”国籍”の問題ではなくて、この土地に長く育ってこの文化が骨身に染みついているから、ということにすぎない。(私は東京出身なので、この歌舞伎町の感じとかも慣れっこである)

あと、日本への愛とかそういうものでもない。
イギリスにいて、日本のダメなところとか、自分が嫌っている部分も余計に見えたけど、それも全部ひっくるめて、30数年間骨身に染みついているこの土地を軸に生きたいし、そこでできることをしたい(困難な状況にある日本の子ども・若者のための仕事がしたい)と思っているだけである。
ぜんぶわかっているとはとても言えないけれど、よく知っているし、鼻がきく”日本”の中のほうが、自分のエージェンシーが発揮できるだろうと思うから、日本を拠点にしたいと思っているに過ぎない。

多分日本文化からたまに抜け出したくなって、イギリスに遊びにいったりするかもしれなくて、逃避できる場所があるという心理的安全性もあるし、ある種日本を相対化できるようになった4年間とそこでしかできなかった様々な経験は今後の活動の血肉にもなるだろうから、感謝している。

まあ、もともと日本の子ども・若者問題をライフワークにしたいという思いの下で、イギリスに修行に行ったわけなので、それが揺らがなくて本当によかった。

隔離が退屈でしかたないのだけど、ようやく第二の人生のスタートラインに立てる、その激動の前の静けさなのだろう。


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