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BBCドラマ ”Years and Years”

(2020/03/14)
NGOのLiに勧められてみたBBCドラマ、”Years and Years”が秀逸だったため、最近私は初めてBBCiplayerからダウンロードして、歩いている時も電車の中でもみている。

いわゆる社会派のドラマというのだろうか、2019ー2034年の15年をLyons一家の目線から、彼らがどのように時代に翻弄されるのかを描いている。一家の物語なのだけどそれが社会的な縮図にもなっていて、近未来予想図が、さもありなんという感じである。

長男ステファンはファイナンシャルアドバイザーで、黒人系のセレースと娘2人、
次男ダニエルは公務員でハウジングオフィサーでゲイ、長女エディスは活動家で、次女ロージーは栄養士、先天性の病気で車椅子で暮らしている。

1話目はまず、2019年にはじまり、一家はそれぞれの家でたまたま同じテレビ番組をみている。ヴィヴィアン・ルークという経営者(のちの首相)がテレビの討論会でパネリストとして参加しているのだが、パレスチナや中東の話題になり「パレスチナに関して言うと(ガザで電気がなかろうが何だろうが)、そんなのどうでもいいわ」と言ってのけるのを、それぞれの家族が驚きと怒りと感嘆をあらわにしながら眺めていると、ステファンの電話がなり、ロージーの陣痛が始まり病院に向かっているという。

ロージーは中国人とのハーフである、リンカンを未婚で出産。リンカンを抱きながら、ダニエルが、「極右の政治家が登場し、銀行も大企業も我々をアルゴリズムのように扱って、環境汚染はひどくなる一方で、ISISもいて、アメリカを脅威に思ったこともなかったのに今やアメリカは脅威で、フェイクニュースや嘘の事実にあふれていて、何が真実かもわからない。一体どんな世の中に我々はいるんだ。この子は一体どんな世の中に育つのか」と言う。


その後、トランプは大統領選で勝利、2期目に突入するが、米中戦争に突入し、ある中国の島に核弾頭をぶち込み、世界戦争の危機が勃発。そこからほどないところにいた長女のエディスは被爆し、イギリスに戻ってくる。

ロシアがウクライナを占領し、大量のウクライナ難民がイギリスに押し寄せるが、難民キャンプの住宅を管理していたダニエルは、難民のヴィクターに会い恋に落ちる。

ステファン一家のベスニーは、トランスになりたいと両親に打ち明け、トランスジェンダーのことかと思いきや、「トランスヒューマン」で、肉体から解放されてデータ化されたいと言う。

未曾有の経済危機がおき、銀行は破綻し、住宅を売ったばかりのステファン一家は預金を失う。極右のヴィヴィアンルックはついには首相になり、未曾有の世界恐慌、異常気象で80日も雨が続きイギリス全土が水浸しになったりするなかで、強権を発動し、軽度のルール違反(そのルールもナンセンスなんだが)をした人を「犯罪者」として隔離したゾーンに住まわせたり、劣悪な難民キャンプを作り、秘密裏にそこに人々を送り込み、劣悪な環境で病気が「自然に」人口をコントロールするように仕向ける。

家族全員が集った中で、おばあちゃんのミュリアルが、「この世紀は本当に過酷だ。想像以上に。そしてこれらは全部我々のせいだ」と話し出すシーンは圧巻だ。

「政府も、銀行も、不況も、アメリカも、首相も。全部我々のせいだ」と。
「え、おばあちゃん、私たちは批判してたし、世界中全部のことに責任持てるわけないじゃない」
「じゃあ、あなたたちは何をしたんですか?例えば、スーパーのセルフチェックマシーンが導入された時、会社に文句の手紙かきましたか?何をしましたか?
この仕組みを気に入ったんじゃない。そして低賃金のレジ打ちの彼女たちを見る必要もなくなって、彼女たちはいなくなってしまった。よくやりました。だからこれは私たちの責任です。これは我々が作った世界です。おめでとうみなさん。Well done. So, yes, it’s OUR fault. This is the world WE built. Congratulation. Cheers, all.」

そしてドラマの終盤、「これはやっぱり我々のせいだった」と家族が革命を起こす。

*****
Liがaccurateとこのドラマを評した理由も見てみて納得した。ありそうな未来。気持ちの暗くなる近未来図だが、このドラマのエンディングは一応ハッピーエンドだろう。
我々も「It’s our fault」と認めて、世界を変えていけるのだろうか。

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