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社会への危機感と自分の幸福感

(2018/06/04)

テストが終わった。ここ10年の人生の中で、かなり辛い時間だった。でも、職場で辛い目にあっている、とかそういう状況とは違い、自分でコントロールできる範疇の話ではあるし、勉強できるっていうのは幸せなことなので、ゆるく生きてきた自分にとって単に大変厳しい戦いだった、ということだけではあった。

この苦しいテスト期間の唯一の息抜きはツイッターとヤフーニュースであった。でも正直、どっちもロクでもない日本のニュースばかりで、日本の状況に危機感が募る一方で余計に暗澹たる気持ちになった。国会の質疑応答が日本語になってない内閣総理大臣とか、改竄が悪質でないとのたまる財務大臣とか、嘘をついてましたという嘘をオフィシャルに言う某学園とか、自分たちの利益のために過労死を招くような法案を通してしまうとか(まだ衆院通過の段階だけど)、子供は三人以上うむべきとのたまる年配自民党代議士とか、もう正気の沙汰ではない。

日大アメフト部の問題は叩くくせに、政権のことはメディアは全然叩かないし、世論も全くである。
日本の経済がよいような気がしているのはうわべだけで、東京オリンピックがおわれば、下降局面に入るだろう。また、教育の面も悲惨である。文系学部を重んじず、(短期的に)お金になりそうな学部だけ重宝しようとするのは、国の衰退を余計に招くだろう。哲学、社会学、政治学等は社会の屋台骨なのに、それがなくなったらおしまいである。欧米の大学は社会科学を大事にしているのに、全く逆の動きである。そして大学院で仲の良い優秀なアジア系の学生と話すと余計に、アジアの中でも日本がかなりまずい状況にあるのを実感する。

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そんな中、余計もやもやする出来事があった。テスト終了後の翌日に出席した、大学のOBOG会である。そこで、久しぶりに再会したという同級生の二人がおり(男性)、目の前に座っていた私は会話を聞いていたのだが、その会話の節々から、私は彼ら二人の「社会経済背景」を知り、大学院で履修した「understanding social advantage and disadvantage」を思い出していた。一人はイギリスに中学生くらいまでいた帰国子女、もう一人も2歳までロンドンにいたという(父親が大企業の海外駐在員)。そうやって話を聞いていた私のとなりに座っていた現役大学生(当地に留学中)のお父様は、私の前職の会社にお勤めで、かつイギリスの大学に社費留学されていたという。そんなこんなで、中学までイギリスの方が言った一言は、「世界は狭いなあ。まあ同じようなクラスの人がやはり集まるからね」。

この一言は、全くもって真理である。advantageとdisadvantageは世代間で継承されるのだ。ミドルクラスの親たちは、子供を私立に入れて、教育資本を身につけさせ、いい大学に入れる。ポスト工業社会においては、スキル知識と”よい”職業は密接に関連する。(さらに上のエリートが継承される装置ももちろんある)。

でもこの一言が私を苛立たせるのは、このおじさんたちは、この同じような階層(日本だと上の中とか下なのか)の世界だけを相手にしていて、それが当たり前という前提を感じたからである。もちろん、世の中にはそうじゃない世界もあるのだとは知っているだろうけど、それは多分、彼らには関係ないのだ。でも、関係ないわけないのだ。
エリート的な人たちや上層部の何が問題って、下の人を搾取したり、社会的規範を作り、スティグマを生み出したりするのは、この上の方の人たちだから。

このロンドンで日本人に会って親の話をすると、みんなちゃんといいところのお家出身であることに改めて気づく(まあ、それは日本でも思っていたけど)。
私の家の話なぞ、絶対にできない(父親が生ゴミとか言えない。ここで言ってるけど)。特に父方の親戚なぞ、貧乏・不幸カタログもいいところである。借金で自殺、夜逃げ、失踪など枚挙にいとまがない。

でも別に生まれがどうこうなのではない。それは自分ではコントロールできないから。
問題は、この小エリートたちの見識の低さは、世の中をダメにするのである。自分が所属する会社とその周りだけ見てるから、その仕組みがいかに不平等にできてて、その仕組みに加担しているとか、そういうことは考えないし、日本の政治が腐敗してても、それを話題にしたり運動したりするのは、タブーみたいなものだから、やらない(し関心もない)。

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社会への危機感と、個人の幸福感は別なんだろうけど、今私は非常に厭世的な気分になっている。(東京の老母に電話したことで影響を受けているのだろうか・・
電話口で激しく日本を憂いていた。)
ほったらかしでまずい状態の修士論文を粛々と進めながら、私なりに社会を変えることにどう貢献できるか考えようかと思う。あと、私自身の幸福感をどう高めるかについても。


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