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振り売り。

桜の花が葉桜へと移りゆく頃、上賀茂から大八車を引いて採れたての野菜を荷台に乗せ訪ねてくれはります。
最初はそんなに品数もあらしまへん。

毎日来られるわけやおへんのどすが、暗黙のルールみたいなんがおして、
足らんようになっても違う畑から買うことはおへん。我が家の東隣りは違う畑、西隣りは同じ畑、おんなじ町内でもバラバラ。

採れたてで旬のお野菜、多めに買うても次に来られる日まであるとは限らしまへん。幼いころ違う畑からの荷台に苺が積んであって甘い香りが漂うてくる、
「あの苺買うて」祖母に言うても買ってくれはらへん。
「なんでなん?」不貞腐れましたが、幾日が過ぎた頃、学校から帰ると大きなザルに山盛りの苺。採れるタイミングが違うのを知ってんのに他所の方が先に食べはると思うと腹が立つ。

夏休みになったらザルを持って大八車まで受け取りに行くのは私の仕事。
もんぺ姿のおばあちゃんが「おおきゅうなったなぁ」言うて不揃いなトマト、きゅうり、ししとうに賀茂茄子「これおまけ」ザルに多めに入れてくれはります。

値札なんてついてしまへん。

採れたての野菜だけやのうて、ちょっと傷んだきゅうりをどぼ漬けにして分けてくれはるんですが、薄く切って生姜醤油でまぶしたら暑い夏の日、食欲がなくともどぼつけとお茶漬けでサラサラ。

娘や息子の仕事になってもたまに会えば「あんたなんぼになった」「お母さん元気か」おばあちゃんからしたら私は子供のまんま。

お地蔵さんが過ぎ秋の気配を感じると、おばあちゃんともしばらくのお別れ。
上賀茂の畑はすぐきへとかわります。
寒い冬が近づくと「すぐき漬かったえ」の、電話で今度は私が訪ねて行きます。
いつのまにか大八車が軽トラックになり、しまいには運転手つき(笑)

少し前までお元気でお過ごしと伺いましたが、最近は軽トラも回って来ず、お孫さんが作られたお野菜を私が買いに行くようになりました。
スーパーで何でも揃う世の中どすが、我が家の夏は変わらず上賀茂の野菜が並びます。
すぐきもそろそろ終わりかな?

#京都 #料理屋#女将#京都の日常#スキしてみて

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