ぼうず。
お商売をしている私の生まれ育った家では、
予約もなく、
まるっきりお客さんの来ない日を「ぼうず」といい、
忌み嫌っています。
昔から物があふれていたら、入ってくる隙間がない、
隙間がないっちゅうことは、お客さんも来ん。
そこいらに物を置いていればまたぐ、またぐ行為は、物を粗末に扱っているんやで!
片付けられへん私は、そんな風に叱られたもんです。
昨今先が見えぬ日々が続くと、自分に理由はなくとも、
嫌になってきます。
「げんかつぎ」と、ばかりに娘が始めだした大掃除と断捨離。
「これいつの?」「使うん?」
片っ端からゴミ袋に入れる娘。
お見事っ!としか言いようがない。
娘がゴミ袋に入れたもんを漁る母。
幼き頃、祖母や母に叱られた私は、躾けたはずの娘に叱られる。
店の片付けだけやなく、見て見ぬふりをしていた物置となっていた部屋も片付けだした。
出てくるもんは母が残していたんだろう、娘息子の通信簿や図工やら…
「可愛いかったなぁ」感傷にしたる私の横で、ポイポイ捨てていく娘。
「あんたには思い出もないんか」
そんなことお構いなし!
突然亡くなった母、そのまんま忘れていた生前使っていたバッグ、
「こんなとこにあったわ」
財布にぶら下げた懐かしい鈴の音。
財布を開ければ「うふふ」
片付けも悪ないなぁ。
ほくそ笑みながらも、封印している母の顔が思い出され急に涙が溢れ出した。
「おばあちゃんのもんは捨てんでもええ」
娘が言う。
スッキリした部屋に店。
日常が戻ることを願う。
#京都 #料理屋#京都の日常#女将#スキしてみて
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