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おさがり習慣がつくりだすぬくもり型サステイナブルな暮らし

「おさがり」と聞くと、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。時代遅れ、ダサい、お古・・・メルカリを連想される方も多いかもしれません。数年前に会社の先輩が「メルカリで子供服がかなり売れる」と話していたのをよく覚えています。最近では、年下の出品者から物品を購入する「逆おさがり」という新しい現象もひそかなムーブメントになっているそう。他にも、おさがりは持続可能な社会を目指すSDGsと関連づけて語られることもあり、時代の流れと共におさがりの価値が多様化してきているように感じます。

でも、自分の身の回りのおさがりはどうでしょうか。とある論文によると、かつて日本では、家族や親族、ご近所さん、交友関係で頻繁におさがりのやり取りがされてきました。しかし、地域のつながりが薄れ多様な価値観が生まれると、自分がいるコミュニティでのおさがりは徐々に姿を消していき、昔ほど活発なやり取りは見られなくなったといいます。<金子 紀子, 石垣 和子, 阿川 啓子『おさがり文化と子育て中の母親のソーシャルキャピタルとの関連』、文化看護学会誌、 2018年。>

それでも、インターネットが普及してメルカリのようなシェアプラットフォームが確立され、形を変えておさがりが受け継がれているとの声もあるでしょう。いま世界中で重要視されているサステイナビリティの文脈で、この形を変えたおさがりにはとても価値があると思います。

このnoteではそれとは別の視点から、おさがりのさらなる付加価値「ぬくもり」についてお話をします。そして、そのぬくもりがサステイナブルな暮らしを後世まで代々つなげていってくれると私は信じています。

ここまで言えるのは、私が大のおさがり好きだから。幼い頃から大人になった今もおさがりを愛用しています。

小学生のときは年の離れた兄弟の時代遅れなおさがり服を着ることが多く、特に記憶に残っているのは、卒業式に着たおさがりの晴れ着です。同級生の女子はみんな揃ってチェックのひだスカートを着ている中、私は姉のおさがりである花柄のフレアスカートを身に纏っていました。

一番左。今でこそ花柄は人気ですが、当時は流行しておらず、いかにもおばさんくさい印象でした。

一人だけおさがりで壇上に上がって卒業証書を受け取るのが、なんだか恥ずかしかった記憶があります。この頃はまだおさがりの尊さに気づいていませんでした。でも、中学生では母の浴衣を、大学生では母の振袖を着て、当時流通していた柄とは違う古典柄がとても気に入りましたし、着るたびに母が目を輝かせていたのが嬉しくて、次第におさがりの虜になっていきました。おさがりはダサいという感覚から、おさがりは本当にありがたいと思えるようになってきたんです。

母から譲り受けた浴衣はさすがに生地が傷んでしまったので、その後自身でティッシュケース等に裁縫させてもらいました(これもまたサステイナビリティ!)。ちなみにこのnote記事のアイキャッチは自分の着なくなったワンピースでポケットティッシュケースを作った写真です。

社会人になっても、私は母からおさがりをもらい続けました。むしろ社会人になってからの方がおさがりが増えた気がします(笑)

私は決して母と趣味は似ていないし、遅い子だったので年も相当離れています。唯一ふたりとも体型が似ているのが幸いし、こうしておさがりが成立しているわけですが、何も服だけではなく、バッグやアクセサリー、スカーフ、ハンカチ、ゴルフウェア、スポーツウェア、何から何までおさがりするようになりました(笑)そして、姉からは結婚式のドレスを2着おさがりし、大活躍しています。このnoteを書くのを機にざっといくつかおさがりを集めてみたら、山のようにありました・・・

中にはババくさい物もたくさんあるんですが、おさがりをもらう度に「これはお母さんがお父さんから初めて買ってもらったアクセサリーなのよ」と言われたり、私がおさがりを身に着けた写真を母に送ると「このスカーフは通勤でよくつけていた思い出の品なの!あなたがつけてくれて嬉しい!」と喜んでくれたり。また、実際にそのおさがりを着ていた当時の母や姉の写真を見せてくれたりします。母や姉は当時の思い出を多くは語らないですが、私はそのときの二人の姿や心情を想像していつも胸が熱くなります。

おさがりした人ともらった人の双方がこの「ぬくもり」を直に感じられることが、おさがりの醍醐味であると私は思うのです。もちろんメルカリでも同じように出品者の温かさが感じられ、背景には様々なドラマがありますが、私が言いたいのは、自分にとって身近で大切な人のまごごろを受け継いでいくことの大切さ。親子や血縁関係に限らず、交友関係や自分がいるコミュニティの人もそうです。しまいには夫も私の母や父からおさがりをもらうようになり、私もまた夫のお義母さんからもらったバッグと服を今も使っています(笑)

おさがりの輪がどんどん広がっていく。

ここまでおさがりが習慣化しそのぬくもりの良さを知った私は、いつか周りの人や自分の子に何かを譲り渡してあげられたらいいなと考えるようになりました。そうすると、必然的に日頃の買い物では長く持ちそうなものを選択し、モノをより一層丁寧に大切に扱うようになるんですよね。母がここまで私におさがりを残すことができたのは、品質の良いものを選んで買っていたこともありますが、何よりモノを大切に扱うことを大事にしていたからだと思います。こうしておさがりの「ぬくもり」によって、世代を超えた超循環型ライフができあがっていく・・・

姉が自身で手作りした子育て用おもちゃたちをいつか私におさがりするため、大事にとってくれているそうです。

これが(自称)ぬくもり型サステイナブルな暮らしです!

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