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三島由紀夫 命売りますより

三島さんの豊饒の海の豊という文字の語源について
 https://note.com/marikannon/n/nbbd94cb160d2
 復習し直していたのは、豊の語源が雷鳴の音であるという文章を
 https://note.com/rukai/n/n4d3ee5109fb2
 こちら森山さんのnoteで拝見して稲妻が走ったからでした(←大げさです)

この秋のお式の当日私は愛知で作業をしていたのですが、豊川沿いを車で走りながらこの花嫁さんのことを同乗の人に話していました。

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亡くなられたお母様の大好きだった百合の花で会場を一杯にするんですと、彼女にお伺いして何となくお母様を身近に感じながら、本真珠の光沢と似たサテンシルクで胸元が百合の花びらのかたちをしたドレスをおつくりしました。色ドレスがエメラルドグリーンになったのは、屋久島に行かれたというお話をして下さったからでした。

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家出というようなことではなくて..ですが最愛のお父様にも誰にも黙って屋久島に行かれたそうで、屋久島では寝泊まりはテントとかですからね、女性が一人で屋久島になんか行って襲われでもしたらどうするつもりだったんだ?と父にいたく怒られました、それより一番恐れるべきは豪雨で本物の雷の落ちることでしたと、でも無事に還って来ましたと言われ何か心に残ったことがあったせいか..印象的過ぎるような夢を見ました。

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内容は花嫁と私の師匠以外にはないしょでしたが、白黒の映像で吊り橋が出てきました。大音量の静寂の聴こえたような夢でした。師匠はその夢の話を聞いてくれて、希少価値のある淡水真珠を滝のように長く垂らしてつくりますねと言ってネックレスを完成されました。何か蛇みたいなのも出来たからお付けするねと笑って言われ、そのフェイクパールのアクセサリーワイヤーはヘッドドレスになりました。


前書きのつもりが異様に長くなってしまいましたが、以下からこそやっと三島さんの。三島さんの中では命売りますの文章がいちばん好きです。


「というのは、エメラルドという宝石の説明からはじめなければなりません。
大ていの宝石は、澄明なことを以って最上の値打とされているのですが、エメラルドに限ってそうではない。天然のエメラルドには必ずヒビが入っています。

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 このヒビが、緑の海をのぞくような宝石の一つの趣きでもありますし、ヒビの入り具合でも美術的価値が出て来ます。エメラルドはいわば、ダイヤなどとちがって、肉体的な宝石だといえるかもしれません。なぜなら、このかすかな、煙るようなヒビが、美しい緑の宝石の生命でもあるとすれば、それはこの宝石に、何か有機的な神秘を与えずにはおかないからです。

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 大使は婦人にこの頸飾をプレゼントするとき、中に一粒だけ、人工のエメラルドをまぜておきました。
これが実にみごとな人造宝石で、ほかの三十四粒と並べて、ほとんど見分けがつかないほど、ヒビの入り具合といい、色合といい、よくできているのです。」

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「『君のものにまちがいがないね』
 『ええ、まちがいございませんとも』
 婦人は朝の光りの中へ、三十五粒のエメラルドの美しい頸飾をかざして、ゆらしてみせました。
 大使は手にとって、お目当ての一粒を探しました。そしてすぐに気が付きました。その一粒だけが天然のエメラルドにすりかえられていたのです」

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