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サッスオーロ戦の試合レビュー ( SerieA 18/19シーズン 第7節 )

リーグでは劇的勝利を収めた3節ローマ戦以降勝ちがなく、3戦連続で引き分けている厳しい中で、リーグ2位の得点をあげている好調サッスオーロとのアウェイでの対戦。リーノの後任の噂が飛び交い始めた中での負けの許されないプレッシャーのかかる一戦となった。

目次

1. スタメン
2. サッスオーロ、攻撃時のフォーメーション
3. ミランの守備ブロック
4. サッスオーロの守備ブロック
5. ミラン、カウンターからの3得点
6. ミランのカウンター3つの特徴
7. 失点シーン
8. 総評


スタメン

この試合の1つの注目ポイントはミランのCFに誰を起用するかであった。イグアンは怪我で招集外。クトローネもアンダー代表での負傷が長引き本調子でないうえに、前節CFで緊急起用されたボリーニまでも怪我で欠くことになり、カスティジェホがトップに起用されることになった。
対するサッスオーロは、前節SPAL戦でターンオーバーし今節に万全を期した状態であった。


サッスオーロ、攻撃時のフォーメーション

これまでのレビューでは毎回、得失点のシーンの振り返りから行っていたが今回は、相手の攻撃フォーメーションから見ていきたい。

イタリア版グアルディオラと形容されるデゼルビは、この試合ポジショナルプレーを志向する監督らしく、ポジショナルプレーではオーソドックスな2-3-2-3のフォーメーションで来た。スクショだと見切れてしまうので俯瞰図を用意した。

まず、最後列では2人のセンターバックがハーフスペースに位置取る。下から2列目ではロカテッリをセンターに、両SBがワイドに開く。そして、そのまた1列前では、ハーフスペースに2人のCMFがポジションを取る。最前列では、プリンスがセンターに、両WGがワイドに開く。これがサッスオーロの攻撃時の基本のフォーメーションである。


ミランの守備ブロック

これに対して、ミランはいつもと少しだけ違う守備ブロックの敷いた。サッスオーロに対して対策を練ってきたのだろう。そこを説明する。

まず、ミランの通常時の守備陣形は4-5-1である。この画像は開幕戦のナポリ戦のものである。CFが相手のアンカーを抑え、CBがボールを持つとそれぞれのサイドのCMFがチェックし、SBにはWGが対応するという決まりごとがある。ICCでもこのカタチであった。


サッスオーロ戦でも、基本はこのカタチでボールチェックするのだが、いつもと違うところは、CMFが自分のサイドにボールがない時に、一列後ろのブラビアとセンシ(#68と#12)をケアしている点と、ビリアが1列下がり、ボールがある側のブラビアかセンシをマークしている。画像で説明する。

まず、これが基本のカタチ。4-1-4-1である。CFがアンカーのロカテッリに付き、その背後に4人のライン、そして最終ラインとの間にビリアがポジションを取る。

そしてこれが左CBがボールを持った時の守備である。CFはそのままアンカーを抑え、ケシエがボールチェックに出る。このとき、ビリアはボールサイド側のセンシとの距離を縮めている。奥にいるボナベントゥーラはいつもであれば、もう1人のCBにもっと体の前面が向いているが、この試合では、ブラビアをケアできるポジジョンに留まっている。

これは、逆に右CBがボールを持ったシーン。ボナベントゥーラがボールチェックに行き、ビリアはブラビアに寄せる。ケシエも位置が下がり、センシとCBのどちらにも注意を払っている。

ボールの位置が1列上がりSBがボールを持ったシーンでは、ケシエはよりセンシに密着してマークしている。そして、サイドのカスティジェホ(この時間帯はチャルハノールがCFの位置、カスティジェホがWGの位置にいた)が、SBにマークに、ブラビアをビリアがマークしようとしている。

まとめると、アンカーはCFが抑える。CBがボールを持った時、同じサイドのCMFがボールチェックに行き、ビリアがそのサイドのセンシ/ブラビアを抑える。余ったセンシ/ブラビアをボールがない方のCMFがケアする。SBはWGが対応といった具合だ。もちろんある程度流動的になることもあるが、基本的にはこのような決まりごとで、リーノはサッスオーロのフォーメーションに対策を打ってきていた。


サッスオーロの守備ブロック

対してサッスオーロの守備ブロックも、同じく4-1-4-1であった。縦と横にコンパクトなブロックで効果的に思えたが、この試合でミランは、ポジトラの場面では縦に素早い攻撃を主に行っており、そこで多くチャンスを作っていた上に、守備ブロックを作られた状態でも左右に揺さぶりチャンスを作れていた。3点目のカスティジェホのゴールはうまくこの守備ブロックを攻略し生まれた。まずはそのゴールシーンを振り返る。

カスティジェホのゴールシーン

最終ラインから攻撃を作り直すシーン。ミランから見て右サイドに選手を寄せたところで、ビリアから左サイドでアイソレーションな状態になっていたチャルハノールにパスが出る。この時、リロラとベラルディの2人がチャルハノールに寄せ、左SBとCB2人は、ファーサイド側に走りこむボナベントゥーラとスソに合わせてファーサイド側に下がって行く。この時、ボナベントゥーラが開けたバイタルにぽっかりとスペースが空く。ベラルディはチャルハノールにマークに行ったこともあり、このスペースとカスティジェホがどフリーな状態になり、チャルハノールからパスを受けたカスティジェホがフリーでシュートを放ちそれがサッスオーロのゴールに吸い込まれることになる。



ミラン、カウンターからの3得点

この試合ミランは計4得点をあげるが、先に解説したカスティジェホのゴール以外は全てカウンターに関連して生まれる。2点はカウンターから、もう1点もカウンターから得たFKからの得点である。得点シーンを振り返りながら、この試合での主な攻撃手段となったカウンターのカタチを振り返っていく。

ケシエのゴールシーン

まずはケシエの先制点のシーン。サッスオーロの左サイドからのクロスがアバーテにカットされるところからカウンターははじまる。アバーテが横にいたビリアにボールを預け、ビリアは下がってきたスソにボールを出す。スソはフリックでケシエの走る先にパスを出す。そのパスを奪いにきたロカテッリとケシエが接触し運良くケシエの前にボールが溢れる。この時点で、2対3の数的優位の局面が生まれる。カスティジェホとチャルハノールはそれ添えrサイドに開きながら前線へ走り込み、ケシエはそのままドリブルで前進する。カスティジェホをケアしていたフェラーリがペナルティエリアに侵入される前にケシエに寄せようとしたタイミングでケシエがシュートを放ちそれが決まる。

スソのゴールシーン

ベラルディのパスがずれロマニョーリにボールが渡るところからカウンターが始まる。ロマニョーリはボナベントゥーラにボールを預け、ボナベントゥーラは、逆サイドを走るスソに向けて一気にボールを展開する。スソには2枚がマークについていたがうまく収める。ペナルティエリアの角で、切り返すタイミングでカスティジェホが、スソより内側の位置でデコイで走り抜け、スソについていたマークを内側のマークの注意を引きつける。スソは残る1枚のマークを引き剝がしシュートを打ちそれが決まる。

得点をあげるFKを獲得するに至ったカウンター

4点目のスソのフリーキックを獲得するに至ったカウンター。ロジェリオがクトローネに突っかけられボールがケシエに溢れるところからカウンターは始まる。クトローネとスソは開きながら前線に走る。ケシエは走りこむスソの先にボールを出す。クトローネはそのままファー側のサイドに走り、ボールを出したケシエはスソをサポートできる位置に付ける。このシーンでもペナルティエリアの角でスソが切り返すタイミングでケシエが内から外に向けてデコイに走り内側のディフェンスを1枚引き受ける。それでもサッスオーロは枚数が揃っていたのでスソを止めることができただろうが、ファールで止めてしまい失点につながるFKを与えてしまう。
FK自体はスソが直接狙ったシュートが壁にあたり、スソの前に戻ってきたボールをもう1度スソがシュート。それがロカテッリの足に当たりディフレクションしたボールがゴールに吸い込まれた。


ミランのカウンター3つの特徴

得点につながったミランのカウンターには、ゴール前でのデコイラン、ボール奪取時に奪取サイドと逆サイドに一気に展開、前線に走る選手はワイドに展開という3つの特徴が見られた。ゴールシーン以外でのカウンターを振り返りながらこの傾向がみられるか確かめてみる。

前半のケシエの決定機

このシーン、正確にはカウンターではないのかもしれないがボール奪取後に相手は前線から奪おうとしてきており前に多くの選手が残っていた。左サイドで奪ったボールがGKを経由しアバーテにわたる。アバーテはサイドで降りてきたスソにボールを預け、いったんムサッキオを経由しケシエにわたる。ケシエは強めの守備を受けていたので少し下がりながら、スソに渡す。スソはここから逆サイドを駆け上がるチャルハノールに向けて一気にサイドチェンジのボールを入れる。少し手前にボールの落下点があったため、チャルハノールはいったんボナベントゥーラに預けるがすぐにリターンをもらいドリブルで前進する。この時、中央にはカスティジェホ、逆サイドには大外からケシエが走りこんできている。カスティジェホは、ボール側にデコイで走り(または自分で受けようとして)、ケシエがどフリーな状況で中央に走り込み、そこからチャルハノールのボールが出る。キーパーをうまくループシュートでかわしゴール確実かと思われたが寸前のところで相手DFに掻き出された。今シーンには、逆サイドへの大きな展開、ゴール前でのデコイ、両サイドが走ると言ったすべての特徴が現れていた。
動画を置いておくのでぜひ見てみてほしい。


このシーン以外にも、53分コーナーキックからのカウンターのシーンでも両サイドにワイドに開きながらカウンターするシーンが見られる。

スソにボールが渡り、ボールを持たないチャルハノールが外に開き、ボールを持つスソが中に入りながらボールを持たない選手がワイドに、持つ選手が中央に向かうカタチでカウンターを始めている。

途中でチャルハノールにボールを出し、スソが中央、ムサッキオがワイドに走る。

29分も同じパターン。

ケシエがボールを持って中央を爆進。カスティジェホとチャルハノールが外に開きながら前線に走る。

79分のカウンター

奪ったところから開きながら走るクトローネに向けて、一気に逆サイドに展開。

矢継ぎ早にカウンターシーンを振り返ったが、ボール奪取ポイントからの逆サイドへの展開、ボールを受ける選手は両サイドに開きながら前線に走りボールを持ち上がる選手は中央に進む、ゴール前でのデコイでシュートを助けるといったのはミランのカウンターの特徴と言えるかもしれない。まだ、この1試合では断定できないので今後レビューする際の着眼点としたい。


失点シーン

最後に失点シーンを振り返りたい。このシーンはシステマチックに崩されたというよりも、アバーテがサイドで突破されたために生まれた失点と言える。サイドにボールが渡り、サイドを突破されたためそれを止めるためにムサッキオが釣り出され、そのフォローに動いたビリアがジュリチッチから少し離れたタイミングで、ジュリチッチにボールが渡り、DFがブラインドになりシュートが見えずらかったこともあり失点してしまった。あまりにも簡単にサイドを突破され中の準備ができていなかったことが失点の原因と言える。




総評

なかなか勝ちがつかめなかった中で、4点を奪っての快勝はチームにとって勢いをもたらしたことは間違いない。アタランタ戦以降にみられていた、縦に速い攻撃でこの試合直接2得点、プラスそれで得たFKで合計3点をあげ、また相手に守備ブロックを作られた状態でもアイソレーションの生み出し、そこを使い1点をあげている。守備においても守備組織はしっかりとシステマチックに機能しており、リーグ屈指の得点力をもつサッスオーロから失点を1に抑えたことは評価できる。まだまだ連戦が続くが、控えメンバーを使いながらもクオリティーを保ち、勝ち点を積み上げていきたい。




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