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上りの新幹線で思い出すこと

2021年4月
私は就職を機に東京で一人暮らしをすることになった。

そして一人暮らしを始めて1週間後、祖母が亡くなった。

引越しの1週間前には就職祝いにご飯を一緒に食べた。

「今年はおじいちゃんの7回忌どうしようかねー」
そんなことを話しながら、祖母としては珍しくデザートまで完食していた。

そんな祖母が突然死したのだ。

「は?いやいや先週まで元気だったじゃん。」
理解が追いつかぬまま動揺するまま新幹線に飛び乗り、地元に帰省した。
そこには美しく化粧してもらった祖母が眠っていた。

祖母は昔からシャンソンが好きで、裁縫が好きで、料理が好きで、多趣味な人だった。
オシャレが大好きで、祖母のクローゼットには豪華なアクセサリーや服がたくさん入っていた。
私はそんな祖母が昔から好きだった。

そんな祖母が目の前で棺に入って眠っていた。

信じられなかった。

正直通夜や葬儀のことはあまり覚えてない。
突然のことに祖母が亡くなったと理解できなかった。

もうこの世にいない。
少しだけそう実感したのは帰りの新幹線の中。

葬儀の後、会社の研修のため帰らないといけなかった私は1人新幹線に乗った。

イヤホンをつけ、流したのは越路吹雪。

祖母の好きな昭和歌手だ。

葬儀の時にも祖母のために越路吹雪を流してお別れをした。

新幹線の窓から見える景色を眺めながら曲を聴いてると、突然祖母が亡くなったことを実感し始めた。

一人でちゃんと暮らせてるよ、会社でも立派にやれてるよ、東京のお土産持ってきたよ、そんなやりとりができると思っていた祖母はもういない。

新幹線の中で急に涙が止まらなくなった。

泣いてることを周りの客に悟られまいと必死にハンカチで涙を拭い、声を押し殺して泣いた。



それから一年たった。

今でも帰省から帰る上り新幹線の中で、
私は越路吹雪を聞く。

一年前、車内で声を押し殺して泣いていた自分を思い出す。

一人暮らしも会社も楽しいけど、その瞬間だけすごく帰りたくなくなる。

だけど、上り新幹線の中では祖母を思い出す時間になる。

これからも私はこの瞬間、祖母を思い出すだろう

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