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Nobody Knows

誰も知らない

それまで笑って誰かと話をしていて

その10分後の仕事帰りに

車の中で一人になって 

泣いている私を

誰もいない暗い駐車場で

携帯も機内モードにして

誰にも知られないように

泣いている私を


誰も知らない

心も体も痛くてつらくて悲鳴をあげているのに

元気? と聞かれれば笑顔で元気と答え

人の痛みをとる仕事をしているのだと

自分の痛みには耐えるだけで

人の日常話に耳を傾け

元気を装っている私を


誰も知らない

涙でいっぱいにふくらんだ風船のような心をかかえながら

その何一つ匂わせず

楽しそうに言葉を紡ぐことができる私を

針で軽くつつけば

風船はいともかんたんに破れて

つまっていた涙があふれ出てくるというのに

誰にも何も匂わせず

明るく振る舞うことのできる私を


誰にも見せない

そうやって生きてきた

それが私

心のうちを誰にも言わず

一人で抱えてきた

誰にも見せず

誰にも知られないように

悲しみを 苦しみを 怒りを 愛する気持ちを

一瞬で隠すことができる

私自身からも


あなたは知らない

私の心はたえず揺れ続けていることを

ときに荒れる海のように

ときに暖かい春の匂いのように

ときに木々を揺らす風のように

ときに雨を待ち望む砂漠の砂のように

ひとつだけ変わらないのは

あなたのことを想い続けているということ

私の中でなにが起こっているのか

あなたはなにも知らない

なぜなら私は

あなたに何も見せないから

誰にも何も 知られないように

一人で抱えているから


誰一人、私の心を知らない

ただ一人、空の上にいるあの人は知っている

私が子供の頃から

あの人だけはずっと本当の私を見ていてくれた

だけど私に教えてはくれない

どうしたらいいのか

どこへ行けばいいのか

私は自分で決めなければいけない

自分で歩いていかなければいけない

これまでも、これからも

恐怖に立ち向かい

失敗を恐れずに

人に知られることを恐れずに


閉めっぱなしにしていたブラインドを開けて

窓を開ける

誰かが見たといって

それがどうなるというのか?

知られたくなかっただけ

知られたら、笑われると思っていたから

笑われたからといって

それがどうだというのか?

誰かからどんな評価を受けたからといって

それがどうだというのか?


誰も知らなかった

私の心の中を

あなたは私の心の中を知って

今さらなんだと笑うのかもしれない

それまでの愛の言葉を撤回して

私を嘲笑うのかもしれない

それがあなたの本当の心なのなら

もう憎しみしか残っていないなら

私はそれを捨てる最初の人になりましょう

私は自分の心に素直になりたいから

私の心を外に出してあげるのは私自身だけなのだから

誰にもわかってもらえなくてもいい

誰に笑われてもいい

馬鹿にされてもいい

呆れられてもいい

私だけは

私の心を欺いてはいけないのだとわかったから

たとえどんな心であろうが

それが私の抱えている心なのだとわかったから

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