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少女怪談  膨張する頭

 頭が膨張している”感じ”がする時があります。

 いつも、という訳ではなくて、夜中や朝早くにふと目が覚めた時にそんな感じがするのです。鼻の上、眉間のあたりから耳の後ろを通ってぐるっと一周、頭の上半分がぼわんぼわんと広がっていく感じ。
 すぐになくなるあの”感じ”が今日はずっと続いています。でも感じがするだけなので鏡で見ても昨日のわたしとなんら変わりなく、人より小さい頭が映っているだけです。
 膨張する頭のまま外に出てみました。頭の上がフラフラと頼りなく、まっすぐに歩いていても右に左に傾きます。人とすれ違うのにも頭がぶつかりそうで大きくよけてしまい、不審な目で見られてしまいました。

 疲れたので公園のベンチでひと休みです。
 ぐらつく頭を固定するようにほおづえをついて、自分の影を見つめます。影もいつもの小さな頭。
「ふうせん、ふうせん」
 声がしたので顔を上げると、小さな男の子がよたよたとわたしの方に近づいてきました。後ろを振り返っても風船などありません。 
 母親らしき女性が
「やーねえ、風船なんてないでしょ」
と、男の子を抱き上げて砂場の方に行ってしまいました。

 砂場で遊び出した男の子をぼうっと眺めていてふと
「あの子にはわたしの膨張する頭が見えているのかも?」
 と思いました。

 確認してみようと、帰るようなそぶりで歩き出し砂場に近付きました。頭の膨張はまだ続いているようでフラフラします。
 男の子はプラスチックのシャベルで砂山を作り、枝を刺しています。
「何を作ってるの?」
 わたしは男の子の前にしゃがみました。
 男の子は
「ゴーエンジャ」
 と言いながらわたしの頭をじっと見て、持っていた枝を振り上げました。
「ふうせん、ぱん」


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