「まだ先は見えねども」の裏(メイキング)
今回は、上の作品「まだ先は見えねども」(英語名:Even Though)の
メイキングを紹介したいと思います。
このイラストのテーマは過去と未来です。
4月からのもろもろで、先の予定が立てづらい日々が続き靄がかかったような生活を送っていますが、そんな状況もいつかは過去となり、そして当たり前のように未来がやってくるのです。だからこそまだ先は見えねども、今を大切にしながら自分のあってほしい未来にむけて突き進む。
そんな気持ちをイラストに込めました。
冬のホームから電車を待つ様子でその気持ちを表現しています。
ホームを映した構図はよく見かけますが、ホームからの構図はあまり見たことがないのでそこも面白いかなと思いました。
①写真からイメージを膨らませる
イラストの元写真は、2019年2月まだカナダにいた頃大学の通学中に駅のホームで撮ったものです。撮った理由は覚えていないのですが、写真を見返した時いつかイラストに描き落としたいとぼんやり考えていました。そして今、ついに温めていた思いにようやく取りかかることができました。
ただ、写真をこのまま作品にするのは模写しただけだし全然面白くないのでここからイメージを膨らませて最初の原案を描きました。写真がカナダなので、もちろんイラストの世界もカナダを想定しています。
原案を見るとわかりますが、建物をごっそり削りました。
そしてイラストの中の世界に奥行きが欲しくて山を加えました。
②ラフ制作
原案を元にラフを制作します。
線路に長さが欲しかったので横長に変えて、さらに左右を反転させました。反転させた理由は電車をホームから待つ感じを強めたかったからです。カナダは車同様、電車も右車線です。原案のままだと電車の向かう方向を見ているなと思い逆向きにしました。
さらに、人物を入れて風景画から物語のあるイラストにしていきます。もちろん風景画に物語性がないわけではないのですが、人物が入ると感情移入しやすいし、「何考えているんだろう?」という空想ができます。
ラフはグレースケールで制作しました。
③ラフ修正と色調整
ラフをさらに修正していきます。最初のラフではせっかく入れた山が人物で見えなくなってしまいました。さらに建物が右に詰まっているので、背景のものを移動させ空の割合を増やし抜け感を出します。
色はテーマにも合っていると思い、以前から挑戦したいと考えていた寒色のブルーバイオレットを中心とした類似色にしました。
類似色は、色彩学ではAnalogous Colour(アナロガス)(*)といいます。円形の色の図である、色相環で隣り合わせの色を使用した配色のことで調和が取りやすいです。
細かい調整を行い、下の色に落ち着きました。
抜け感がでると右上がスッキリしました。
④加筆・修正
ラフができたので、背景から加筆と修正をしていきます。今まではラフの後は線画に進んでいたのですが、この段階でだいぶ形ができていたので、塗りながら調整しました。
このイラストは雪が多いのですが、線画で描くより表現しやすかったです。そして形が曖昧なところは塗りつぶせばいいだけだったので線画がある時より自由に修正ができました。
後ろ(背景)から描いてレイヤーを少なくしながら作業を進めます。レイヤーが少ない方が作業しやすかっだです。
⑤フェンスと影を描く
フェンスは細かい作業で楽しい反面苦しかったです。ブラシを作れば簡単かもしれません。私はコピーとペーストを繰り返しながら描きました。
さらに形が整ったものから影を入れて立体感を出していきます。線から描く時は影も線で済ます事が多かったのですが、今回は背景の線は少なくしようと考えていたので色で影を描きました。
パースも少しずつ整えていきます。
⑥ホーム、線路と雪を描く
後ろが終わったら前にあるものを描いていきます。ホームや踏切の上にある少し残ったような雪を描くのはなかなか大変でした。どういう風に描くとそれみたく見えるのか考えて描く、イラスト制作は毎回全く同じようには描けません。モチーフによって表現や描き方は様々あります。新たなイラストのチャレンジは大好きです。
ホームは、タイル独特のゴツゴツ感を出すためにテクスチャを貼りました。写真の色やレイヤーの調節を行ってペーストします。このテクスチャは最初に紹介した自分で撮った写真を使用して制作しました。
⑦人物を描く
人物も形と面で塗っていきます。ラフでかなりしっかり人物を描いていたのでラフをかなり参考にしながら描きました。人物には影を入れていません。それは人物は線で影を入れると決めていたからです。私のイラストの良さは線の繊細さにあると思っています。今までのイラストの良さを取り入れるなら、イラストの一番メインのものに入れようと考えました。
最後に人物以外の細かい加筆と修正をして、とりあえず塗りの作業はここでおしまいです。
(これはこれでいいなと密かに思ってもいます。)
⑧線を入れる
人物を中心に線を描きました。ここで人物にも影が入り立体感がでました。自分の中でこのイラストの世界は曇りの日と考えていたので地面に影は入れていません。(経験上、雪が積もっていて寒い時は基本曇ってます。)
そして、人物だけ線があると変に浮いてしまうので背景の建物にも線を少し描き一体感を出します。
⑨最終調整
線を入れたあとは最後の細かい調整です。全体を遠くから見たときに、山があまりにもはっきりしすぎていると感じたので、上に白を薄くかけて遠くにあるような距離感を演出します。基本的に被写体が遠くにあればあるほど白みが増しぼんやりして見えます。山をより遠くに置くことでイラスト内の世界により広がりができました。
イラストは画面上だけで完結せずに、見えないところも想像できるとより深みが増すと個人的に思います。
⑩仕上げ
1番最後に絞まりと一体感を出すために、全体にテクスチャをかけて完成です。
私の他の作品は下のリンクから閲覧できます。ぜひチェックしてください。
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(*)カナダで「色」の綴りはcolour
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