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東京へ来た理由とイラストレーション

2020年4月19日。親元を離れ、引っ越してから1年です。今日はお祝いに自分に(節約しなきゃいけないのに)贅沢にも海鮮丼を初のウーバーイーツで注文してあげました。


今年が始まった時、世界中の人がお家時間を過ごし、ネットの力を最大限に駆使する日々が来るなんて誰が想像したでしょう。少なくとも私は考えていなかったです。私も含めて世の中多大なる影響を受けていますが、今まで当てることの出来なかったことに時間をかけることができて、ありがたい気もします。勤めている会社が1ヶ月お休みになり、ほぼ毎日のように母親とビデオチャットもしていて、家族を今まで以上に近く感じます。今日なんか妹と画面共有をして映画を見ました。2人で盛り上がり、とても楽しかったです。朝起きてもバタバタ準備せずにゆっくり体をほぐしながら朝の陽気を体に吸収しながらラジオ体操をしたり、生地を1から作ってピザを食べたりしています。

そんなここ数週間ですが、通常形態は正社員で働きながら、イラストを制作してSNSで発信する生活を送る人間です。

今回は折角なので、1年を振り返りながら何故東京に来ることを決めたのか、今何を思っているのか、そして少しだけこれからのことなど書き起こすことにしました。


元々日本へ引っ越すことはカナダへ行った当初から考えていました。高校生の頃は、やはり思春期ということもあり友達と一緒にいたい、好きなことをしたいという気持ちから日本へ帰りたいと思っていました(詳しくはnoteに公開しているマガジン「JAPAN⇄CANADA」をご覧ください)。しかし、カナダでの生活が長くなるにつれて、価値観の構築や精神的成長、さらに目標や憧れが出来て、日本でまた暮らしたいと思う理由がシフトしていきました。日本を客観的に見ると文化や習慣、景色など魅力が多いです。やっぱりそういった環境でもう1度暮らしたいと思いました。でも理由はそれだけではありません。

では日本に帰ってこようと思った大きな理由はなんなのか?それはイラストレーターとして日本で活動したいと思ったからです。


大学の進路について悩んでいた高校3年生(当時19歳)の私に、父が思いもよらぬ言葉をかけました。

「絵を描くの好きだし、ものを作り出すのも得意だからデザインみたいなことをするのが合ってるんじゃない?」(英語で言われたのですが、ここは訳しました。)

私はこの一言でイラストレーション(コミュニケーションデザイン)の世界を目指すようになりました。小さい頃から絵を描くのは好きでした。誕生日のカードも、いつもイラストを添えて手作りしていました。絵を描くことが私の人生において必要不可欠になった大きな転機は、カナダの高校で美術を選択科目で受けるようになったことです。越したばかりで友達もおらず精神的にも疲れていたので、1人で黙々と作業することが当時の私には心地よく、またヒーリング効果にもなっていました。いつしか頭の片隅に絵をずっと描いてたい、という気持ちが芽生えていました。そして次第に描く作品を通してメッセージを伝えられるような作品づくりを意識していくようになりました。絵はコミュニケーションツールの1つとして使われていますが、それを強く考えるようになったのが3年目の美術の授業を通してです。そんな時に言われた父の言葉に行動しない訳がありません。必死にイラストレーションが勉強できる大学を探しました。なかなか見つからずどうしようか迷っていたある日、高校でPost Secondary Fare(ポストセカンダリーフェア:大学・短大勧誘フェア)が行われました。様々な大学のブースを見ながらめちゃくちゃ広いわけではない体育館をまわっていると、私にとって理想の大学のブースが目に入ったのです。勇気を出して話しかけ、パンフレットなどを貰いました。

こうして入学することになったAlberta University of the Arts(アルバータ美術大学、当時はAlberta College of Art + Design)でイラストレーション学科を専攻しました。最初の年はもちろん基礎をつける年でした。デッサンの課題が毎週のようにあり、1週間で制作した課題を提出してまた新たな課題をもらう。それを1週間で仕上げてまた提出、といった感じでした。
講義内容はもちろんデッサンだけではありません。構図の勉強、色の勉強、美術史や英語もありました。

毎日挑戦の日々でとても充実していました。いろんな角度からモノを見て考えることが楽しくて仕方なかったです。ネットで見るイラストレーターさん(9.5割は日本人の方)の作品を見てはいつか私も、と想いを馳せていました。好きなイラストレーターさんや、憧れの方は皆さん東京で生活しながら制作活動を行なっていました。そういう方を海外の8000キロ離れた地から見ていて自然と私も東京に行くことを考えるようになりました。特にカナダから日本のイラストレーションを見ていたので、その世界の中に物理的に存在しながら活動したいという気持ちが人一倍あったと思います。東京は、ギャラリーがいっぱいあり、多くの方が個展を行っているのもこの時知りました。こうして「日本でイラストレーターとして活動したい」という思いが構築されていきました。


2019年4月19日、私は日本へ到着しました。カナダへ引っ越してからの8年間は、年1ペースで帰ってきてはいましたが、今回は「引っ越し」です。気持ちのあり方も全然違いました。カナダを離れるのがとても悲しかったし、家族と離れる寂しさもありました。本当にこれでよかったのか何度も何度も頭の中で考えました。最初の数ヶ月は3日に1回の頻度で泣いていました。しかし、充実もしていました。行きたい個展や作品展にすぐに足を運ぶことができたし、多くのイラストレーターの方とお話ししていろんなことを学びました。私のイラストレーターとして書籍に関わりたいという目標も今まで以上に強いものになっています。

この1年は沢山のものを蓄えました。次の1年は、それをアウトプットしていく年だと考えています。イラストレーターとして仕事を得るための行動を始めたいです。ただ、今のご時世のことを考えるとすぐに行動を起こすのは難しいので、それに向けて少しずつではありますが温めているところです。

例えばですが、今ポートフォリオを新調しています。「けねでぃまりぃ」というブランドを確立させる (けねでぃまりぃといったらこれ!と認識してもらうようなイラスト作りを行う)ために作品の統一性を意識しながら新しいものにチャレンジしています。今まで学校にいる時はいろんな方法を試して自分のスタイルを模索していました。作風もバラバラでなにが1番しっくりくるのかあまりピンと来ていませんでした。しかし今は、自分の描きたいものや方向性が定まったので次のステップとして描けるモノや構図を増やしています。


私の描くイラストレーションは浮世絵、木版画、そしてアールヌーボの影響を受けて出来上がったスタイルです。線を多用し作品を描いています。大学2年生で最初の壁にぶち当たった時、当時教わっていた先生に

君のルーツである日本の美術は素晴らしいスタイルがいっぱいある。特に濃淡はとってもいいスタイルだし、君に合ってる気するんだ。

とアドバイスをいただきました。これを境にに繊細な線のタッチで濃淡を意識して描くようになりました。しかしだからといって統一性があったかというとそうではありませんでした。意識はあったもののまだまだでした。


ここ最近、この「統一性」というテーマにいつて大きな転機がありました。それは今年の1月末、あるイラストレーターさんの個展に行ってお話しさせていただいた時です。その方は

「自分はこれだっていうものを持っている人は強い」

とおっしゃっていました。思えば私が尊敬するイラストレーターの方々の作品を思い浮かべると、いつも同じモチーフが出てきたりテーマ性を感じたりします。同じものを繰り返す。決まったモチーフは確かに強い。そう感じました。

私といったらこれ。すぐにピンときました。

私は「山」が好き!

登るのも好きだし、遠くに見える山脈も好きです。カナダの恋しいモノの1つにロッキー山脈があります。毎日通学時に見ていた山々。東京では全然見かけません。これをモチーフとしていっぱいイラストに入れようと思いました。勿論、山を入れないイラストも制作しますが、山脈を入れたイラストを少しずつ増やしていきたいです。

「富嶽三十六景」
葛飾北斎が制作した浮世絵の名所絵集。日本人は山に魅せられ、約200年前から山を題材に作品作りをしています。山脈なんて私にぴったりのモチーフです。というわけで今後はそこにも注目してみていただけると少しだけ楽しくなるかもしれません。

あとは2月にポートフォリオを見ていただける機会があったのですが、人物が統一性に欠けているとコメントをいただきました。自分ではそう思っていなかったのでびっくりしましたが、確かに東京へ来てきてから人物スケッチから離れていました。人物を(実物でも写真でも)じっくり観察していなかったと気づきました。それからは少しずつ人物練習を再開しております。継続させていきたいです。

余談ですが、つい先日描いた人物練習の表情がとても納得いくものでした。ラフで描いたものが良くて、清書描きの時もラフの線をそのまま使ったのですが、ラフが良ければわざわざ描き直さなくてもいいんじゃんという学びにも繋がりました。


今後は、制作以外にはイラストの制作過程をまとめたいと思っています。長い間考えていたのでこれを実現させたいです。(時間もありますし)。他のイラストレーターの方の制作過程って凄く興味深いんですよね。自分となにが違うのか、自分も取り入れるといい、参考になるようなものはないか研究ができます。あと単純に個人の記録としてもいいなと思いました。私も今後こういった記事を書いてみたいと思いました。あとはイラストに対しての考えなど、ふと思ったことを書き留めたいと思います。グッズ製作と販売もしたいです。やりたいことは尽きません。

目先の目標はこんな感じですが、大きな目標は個展をすることと画集を出版社を通して発売したいです。いっきにトントンとできるとはもちろん思っていませんが、夢は大きく明確に!そう思っています。


改めて東京に来てから季節を一巡したのかと思うとびっくりです。あっという間に駆け抜けた1年でした。昨年、今借りてるアパートの部屋の入り口から見える桜の木を初めて見た時、来年が楽しみだなと思いました。今年その木々が満開になっているのを見てなんだか感慨深いものがありました。ようやく出会えたような気分になりました。そして久しぶりの桜に懐かしさを感じました。私のイラストレーションもそういった存在になってほしいです。

今はまだ暗いトンネルの中ですが、近いうちにそのトンネルを出て、そこに続く道を景色を楽しみながら歩いて行きたいです。


これからもけねでぃまりぃをよろしくお願いいたします。
2020年4月19日

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