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06 Rainy Harmony

こちらにきて1ヶ月半くらいにして(夜間を除き)初めての雨。濡れた石畳はどうぞ滑ってくださいと言わんばかりのつるつる具合。空は白くて遠くの景色には霧がかかっている。風と気温はちょうどいい。さて、私が何を言いたいのかというと、今は心がとても落ち着いているということ。こちらに来てから1番の平穏さ。

憂鬱だと沈みすぎで、快晴だと眩しすぎる。リスボンに旅行で来るなら雲ひとつない快晴がおすすめ(真夏も冬も春も初夏も知らないけど)。どこまでも広がる青い空と海が清々しい。人が多いことがそれを邪魔をしてるは、まあしょうがない。私だって人だから。

こちらに来てから今までをちょっと振り返ってみようかなと思う。そう、今日は日本を出発する前の写真や動画も見てみた。今まで、それを見るのさえ、ハードルが高かった。戻りたくなってしまうというか、恋しく寂しくなってしまいそうな気がして。もうその時点で寂しいんだと思うけどね。そのうち”Role of tears ”を書きたいと思う。(序幕)

私がこちらに到着したのは9月16日。

最初の1週間か2週間かは忘れたけど、そのくらいは雲ひとつない青い空が毎日街の上に広がっていた。そして鋭い日差しが照りつけていた。どこに差し込む隙間があるのかというくらい一面の青。(第1幕)

この頃は、(今もそうといえばそう)何もかもと言ったら言いすぎたけど、新しいことが溢れてて、ミッションをひとつひとつクリアしていく感覚だった。空港から家まで来るのにも、バスの乗り方が分からなくて1時間空港を彷徨ったし、乗ったはいいけど乗り換える場所も降りる場所も怪しいし、インターネットは繋がってないし、なんとか降りたけど、とてつもない石畳坂だし、3階だし、大家さんいないし(約束の時間過ぎた私のせい)。こんな感じで携帯を手に入れたり、定期を手に入れたり、スーパーで美味しいヨーグルトを手に入れたりするのに、一苦労どころじゃなくて3苦労くらいはしてる。でも実写版ゲームみたいで楽しい。なんとなくなんとかなるし、まあいっかと思えばことは済む。確実にまあいっか精神は強くなってる。良くも悪くも。

学校はというと、着いたときは2週目でグループワークのチームも既に決まっていた。先生に入れてあげてと言われた2人に入れてもらった。このとき、留学生私たちのグループに入れるの?オーラを感じた。本当にそう思っていたのか、私が思っただけなのかは分からないけど。それで、グループワークでの話し合いは聞き取れないし、話せないし、私にとっては話し合いになってない。耳と頭は必死に理解しようとしてるけど、見かけは佇んでるだけ。ずっしり先が思いやられた。

第1幕とか書いたけど、やっぱりそんなに区切れない。

連続的に変化する。取り止めもなく書くことにする(得意技)。時系列はたぶん前後左右してる。

学校のことについて続きを書くと、今のところの結論からいうとグループワークはうまくいっていると思うし、このグループに入れてよかったと思う。今は、私より後からきた留学生も入って4人グループ。4人になってから、置いてかれることが増えた気がするけど、それは単純に数のせいということにする。デザインに関していえば、言葉よりビジュアルの方が説得力を持つときが往々にしてある。メンバーの優しさにもたくさん助けられている。距離感がちょうどいい。そして、ハードワーカーだ。やる気がある。私が絶大なやる気になってるかと言われるとそうではないが、周りの影響は受けるタイプなのでこれは大きなプラス。そして、同じクラスで同じ授業を取っているので、クラスメイトとも少しは仲良くなれたと思う。ちなみに学部2年生のクラスにいる。授業前に作業スペースに座っていると、自然と一緒のテーブルに座ってくれるし、すれ違う時には、手を振って挨拶をする。初めにはなかった親近感が大きくなった。多分クラスの半分くらいがポルトガル人で、半分くらいが他の国。そして、クラスの4分の1くらいが留学生。これも最近わかってきた。初めは、もう誰がどの国かは分からなかった。みんな日本人じゃないことだけは確か。

9月の終わり頃か10月に入って雲が出てきた。

青い空ところどころに白い雲。(第2幕)

時間はいろんなことを解決する。段々と慣れないことに慣れてきた。あとは、家から一番近いスーパーを見つけたり、そのスーパーから家への小道が好きだったり、水道水を飲み始めたり。

9人のシェアハウスに住んでいる。値段と学校までの距離はみてたけど、人数をみてなかったので、若干多さに戸惑うかと思ったけど、そんなに戸惑わなかった。戸惑うところまでいかなくて、とても不思議だった。今になって思うようになったのは、顔を知ってる人が大体毎日家にいて、顔を合わせてちょっと会話をするっていうことにだいぶ助けられていると思う。家としての安心感がちゃんとある。一人暮らしのときより暖色な感じがする(単純に家の照明が暖色なせいかもしれない。)まあでも、寂しさを感じる原因にもなったりもする。ルームメイトはEU圏出身なので、友達や恋人、家族が次々と訪ねてきたり、訪ねに行ったりする。それが少し羨ましくて、日本の遠さと独りさを実感する。日本にいたとしてもそうだったりするし、自分で選んで来たのだけど。さて、この流れで今までで一番心にズサっときた出来事を書いてとく。そんなに書きたくないけどなにかの記念に。その日は家でパーティーをしていて、その後に、外に行こうとなってみんなで家を出た。出たところで、それぞれの友達と別々のところに行ったり、友達のところへ向かったりした。この時点で、あ、これは家にいればよかった。と思ったけど、時すでに遅し。家に帰るとも言い出せず、イタリアグループについて行った。いつもgo out, join with usと誘ってくれるパーティー大好きな人たちだ。で、頑張って話したり、頑張って話しかけてもらったりするけど、やっぱりスムーズに会話できないし、疲れてくると顔にもでる。それを見かねたルームメイトが、日本人の友達を見つけた方がいいよ。僕たちもイタリア人と一緒にいるし。と。ごもっともだし、少し悔しかったし、寂しかった。けど、傷ついたわけではない。そんな日だった。

私はどちらかというと少人数の方が好き。何か討論が始まると置いてきぼりで、帰りたいモードが現れることもあるけど。政治のことを聞かれた時はドキッとした。日本語でも答えられないよ。と、でもとりあえずありきたりな答えを答えた。もうすでに理解していることについて、読み取るのは簡単であると思う。少し違うけど、名前についても同じことが言える。こちらにきて、名前が覚えられない問題が発生してる。まず聞き取れない。ただの文字列で、文字の形さえ違うのだから。すぐ覚えられる名前は、聞いたことのある名前だ。例えば、ジョセフとか。

10月に入って出てきた雲の白とその影が空の青に溶けていって、青というより、灰色と水色の間みたいな空の日が増えていった。(第3幕)

冬服をほとんど持ってこれなかったので、冬服を探していた。ショッピングは楽しい。見てるのもそうだし、お気に入りの服に出会えたときは心がぴょんぴょんしてしまう。ぴょんぴょんしすぎて、赤いコートに1人で乾杯した。機能性を考えたら良い選択ではないのだけど、まあいいの大切に着る予定。

最近、スーパーでこなれた感じでパンが買えるようになってきた。手順は簡単。ola~と話しかけて、買いたいパンを指差す。その後に、1か2を指で示すのと同時に、um か doisと言ってみる。そうするとこれでいい?と(多分)聞いてくれるので、Sin (うん)と言う。そこからパンを袋に詰めて秤ではかって、金額のシールを貼って渡してくれる。そこでobrigada.  はいこれで美味しいパンが私のものに。

そしてついに雨が降った。

昨日から心が落ち着いているのだが、昨日は、2週間前にスロベニアからきた友人と近代美術館に行った。美術館の雰囲気に心が喜んだのと、彼女ととても自然体で回れたことが雨のほかのきっかけになってると思う。

ここで良いことを思いついた。この続きも天気の変わり目を目印にして書いていこうかな。

もう一個、なんのために留学に行くのかがはっきりとわからないままだった。でも何がしたいか、どうなりたいか、現時点で思う目標ができた。それは自己表現度を高めることである。これまでは、踏み入れられるのが、否定されるのが、違う風に受け取られるのが怖くて、留めたままだったり、調整したりすることが多かったように思う。でも、こうやって書くこともそうだし、知って欲しい、見て欲しい、聞いて欲しいと思ったことは、できるだけ自分の外に出していきたいと思う。そして、それが人に伝わったらもっといい。


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