愛情を持たない人が「愛する」恋愛をするために

愛されること、愛すること

恋人に求めることってなんだろうか。
「好きだと言われたい、触れ合いたい」「自分が抱えている話を聞いてほしい」「一緒に楽しい時間を過ごしたい」「辛い時に励ましてほしい」「一人ではできなかったことに挑戦したい」…。

どちらかというと、相手に何かをしてほしいと期待してしまうことが多いようだ。一言でまとめると「愛されたい」。
けれど、愛されたいという期待は常には叶わないし、むしろ叶わないことだって多い。期待したことが得られないことで、自分が落ち込んだり、不安定になったりするなど、困ったことになる。

相手に「愛されたい」と期待するのは、実はリスキーな行為なのだ。
いつクビを切られるか冷や冷やしながら経営者の顔色を伺う労働者のようなものだ。相手が愛してくれなければ不安を感じたり物足りなさや怒りさえも感じたりするし、つなぎ止めるために自分を犠牲にしたり、束縛してしまうことだってありうる。「愛されたい」を恋愛の基本にすると、関係を悪化させてしまう恐れがある。

愛情の収支

そこで、恋愛に対するパラダイムを変えてみる。恋愛とは「愛すること」だと考える。つまり、自分主体の行為であるということだ。

「笑顔を向ける」「どんな話でも親身に聞いてあげる」「あなたの味方であるという態度を貫く」「できる限り相手の優先してあげる」「良いところを見つけてあげる」「楽しさや嬉しさ、ドキドキを感じさせてあげる」…。

相手に「愛されている」と感じてもらう。
すると、複数の人間の関係性でありながら、それをコントロールすることができるようになる。相手を変えることは難しいが、自分を変えることならできる。「愛すること」で恋愛を成り立たせようとする時、コントロールするのは「相手」ではなく「自分」なのだ。

これは、先の例に例えると、経営者の立場になるということでもある。
あなたの愛情事業だ。自分が持っている愛情を投入し、相手に愛を感じてもらう。その後で、相手からも愛情を返してもらう。ただし期待通りの結果が返ってこなくても、その責任は経営者であるあなたにある。その収支が合わなくなれば、破産ーつまり関係性の崩壊が起こるということだ。

あなたは自分の愛情事業の収支を保たなければならないが、それは関係性をみずから管理できるということなので、気持ちが安定する。無理をしなくなり、事業が崩壊しない範囲(自分が崩れてしまわない範囲)で相手に愛情を与えることができるようになる。


愛情を持たない人はどうすればよいか

しかしながら、愛情を与えられてこなかった人、失ってしまった人が、誰かを愛することは難しい。自分が愛されたくて必死なのに、無いものを与えることなんて簡単にできることではない。

だから、まずは自分の中で愛情を育てる必要がある。
相手に与えてもらおうと探し歩くのは辛い作業になる。それよりも自分で栽培しよう。それは可能だ。

「自分を愛せ」とはよく言われることだが、具体的にはまずは自分の中にあるこだわり(こうでなくてはならないという観念)を、いったん手放すことだ。
そして、気分や感情を大切にすること。自分を傷つけたり、不安にさせたりする言葉や、考え方はしないようにする。そういった気持ちになる人や場面は避ける。また、自分を裁いたり傷つけたくなったとしても、そうなってしまう自分を許してあげる。認めてあげる。一緒に悲しんであげる。

まずはそれだけを心がけよう。一日中寝てたりだらだらしたっていい。やりたく無いことを無理してやる必要はないし、やりたかったことを我慢する必要もない。そして、自分の感情を何よりも大切にしてあげること。
これが愛情を育てるための土壌になる。


「善玉」の自尊心を育てる

自分の気持ちを最優先できるようになったら、次に自尊心を育てるとよい。
自尊心とは「自分には愛される価値がある」ということだ。だから自分の感情を大切にすることは、自尊心を育むためにも必要だ。

自尊心には2種類あると考えていて、私はそれをコレステロールの種類にちなんで「善玉」と「悪玉」と呼んでいる。

善玉の自尊心は、先にも述べた「自分には愛される価値がある」と信じることだ。健全な自尊心は、生き生きとした毎日を送るために必要なものだ。
自然と余裕が生まれて、誰かを助けることも容易になる。相手を信頼することができて、人間関係を良好にすることができるようになる。

悪玉の自尊心は、少し厄介なもので、根っこには「愛されたい」や「見返したい」「傷つきたくない」というような気持ちがある。これが強いと、向上心があったり努力家にも見える反面、自分の成果にとらわれるあまりに周囲をないがしろにしたり、自分より劣った存在を蔑んだりする。時には攻撃的にもなる。
良い子でいなければならないとか、優秀でなければ価値がないという考え方をもっていると、悪玉の自尊心を生みやすくなる。

善玉の自尊心を増やすためにオススメなのは、生活習慣を改めてみることだ。
習慣化することで自尊心も育まれ、さらに身体が健康になることで心にも良い影響がでてくる。コツは、「義務感」からではなく「自分をコントロールしたい」という気持ちでやること。
例えば目が覚めたらまず体重を測るようにする。毎日3分間1箇所だけ片付けする。家計簿をつけて少しでも貯金できるようにする。体を鍛えてみたり、何を食べるかを考える。無理ないところから始めて、余裕ができたら、新しい習慣を追加していこう。
個人的に気に入っているのがFabulousというアプリで、習慣化をサポートしてくれるツールとしておすすめだ(英語版しかないのが難点だが)。


愛し愛される喜びを知る

健全な自尊心が育ったら、それは「愛する」準備ができたということ。
自分の中でできるだけの「愛情」を、あなたが「愛したい人」に与えることができる。自分がどうすれば苦しくなるのかを知っているから、無理をしなくてすむ。あなたは愛情事業を経営しているので、見通しの立たない極端な関係からは離れることができるし、誰に対して愛情を与えるかを主体的に選ぶことができる。素敵な毎日を送れるように、自分の人生をコントロールできるようになる。

自分を本当に愛してくれる人というのは、身内だったり、親友だったり、数少ないものだと思う。大人になると、愛情を与えられることは少なくなる。「愛情を与えてくれる人」というのは貴重なのだ。何も見えない暗闇の中で、自分を照らしてくれる明かりなのだ。
だからこそ、自分が「愛する人」になろう。自分がこれから愛する人の光になろう。そのために、まず自分を愛することから始めよう。

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