ロリータ、歌えさあ今〜映画のような、3月の夜の話。〜
生ぬるい、土砂降りの夜だった。
3両編成の列車を降りて、静まりかえった帰り道、
ふとイヤホンから流れ始めたその歌に、私は声をあげて泣いた。
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7.8年ぶりくらいだろうか。
高校時代に勤しんだ吹奏楽部のOB演奏会のために、私はやや重い腰を上げて故郷に向かっていた。
あらかじめ言っておくと、私は吹奏楽が嫌いなわけではない。
青春時代に私を守り、私の土台を作ってくれたのは、紛れもなくこの吹奏楽である。
当時の私のアイデンティティだったし、音楽で"自分"を保つ、最初のきっか