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ITの進歩と幸福度の低下について

皆さんご存じのように、近年のIT(Information Technology(情報技術))の発展はめざましく、特に最近はAI(Artificial Intelligence(人工知能))がさまざまなビジネスにおいて積極的に用いられるようになり、社会の動きはますます早くなると同時に便利になりつつあります。

例えば、従来であればあるサービスや商品を宣伝するマーケティング用のセールスレターを1ページ書き上げるのに丸一日かかっていたのが、今ではAIを用いることで1時間で作れるようになったりしています。

検索用ブラウザに表示される広告は、あなたの閲覧履歴などに基づいて自動的にあなたの興味関心のある分野の商品やサービスに関連するものになっています。

AIとまではいかなくても、さまざまなWebサービスやSNSの発展もめざましいものがあり、以前に比べたらよりリアルタイムに必要なサービスや商品の購入ができたり、見知らぬ人といつでも何らかのつながりをもつことができるようになりました。

例えば、新幹線のチケットを予約したり購入したりする場合、昔であれば、わざわざ最寄りの駅まで足を運んで、みどりの窓口に並んで購入しなければなりませんでした。
それが今だったら、携帯基地局を通して電波を送受信できる環境であれば、世界中のどこに居てもスマホ一台あれば、数分で予約したり購入したりすることがいとも簡単にできてしまいます。

例を上げればキリがありませんが、ITの進歩のおかげで私たちの生活はとても便利になっているというのは紛れもない事実です。

ただ、私がいつも言っているように、世の中のあらゆる物事や事象には、コインの表と裏のような二元性があります。

二元性というのは、わかりやすく言うと、私たち人間にとって良いと感じる面と悪いと感じる面の両極端な性質が、その物事や事象の中に同時に内包されているということです。

そして、この二元性というのは、良いと感じる面が大きくなるほど、それに比例して悪いと感じる面も大きくなります。

いつでもどこでも欲しいサービスや商品がリアルタイムに享受できる環境が当たり前になってしまうと、それができない時のストレスも大きくなります。
また、サービスや商品を提供する側においても、以前よりもさらに迅速な対応をすることが余儀なくされ、万が一体調不良などでそれができなくなると、あっという間に競合他社に奪われてしまいます。

私たち日本人は、ただでさえ勤勉で真面目であるがゆえに精神的ストレスを抱え込みやすい傾向にあるのに、提供する商品やサービスの質の高さやスピードがますます求められようになるにつれて、ますますストレスフルな労働環境になってしまいます。

そういった社会の流れの中で、あまりのストレスに耐えられず精神を病んでしまい、心療内科を受診する人がますます増えてしまうのはある意味当然のことなのかもしれません。

生まれつき体力や精神力、好奇心などが旺盛な人や、商才に長けた性質をもつ人は、ますます高い質やスピードが必要とされている競争の激しいビジネスの場においても、それを強い精神力やハードワークによって乗り越えて勝ち残っていくことができます。

同時に、生まれつき体力や精神力がそこまで強くなく、商才も持ち合わせていない圧倒的大多数の人々は、それについていけず、過剰な精神的あるいは肉体的ストレスに耐えながら働くことを余儀なくされ、レースから脱落する人も当然増えてくるわけです。

そうすると、必然的にこの弱肉強食の資本主義社会では、貧富の格差が広がってきて、ごく一握りの成功者(と一般に思われている人たち)とそれ以外の人たちの経済格差がますます広がってくるという、極めていびつな社会構造が生まれてしまいます。

このいびつな社会構造によって、人々のストレスの増加やあらゆる犯罪行為、悲惨な出来事の増加、ひいては国家間の戦争にまでつながってしまう可能性が高くなります。

世の中が便利になって暮らしやすくなると同時に、ますます日々の生活や人生が苦しくなるという何とも皮肉な結果につながってしまうのです。

結局のところ、私たち人間は自分たちで自分たちの首を絞めているということです。

しかし、お金が無くなることに対する恐れやそれに基づく過剰なお金への執着には根深いものがあり、そのことが見えず盲目的に疲弊した資本主義社会の歯車となってしまっているのが現状です。

「資本論」を書いたカール・マルクスの予言は、この意味においては的を得ていたと言えるでしょう。
ただ、共産主義という一種の理想郷が人間のエゴ(恐れ)を包容できるものでは無かったということは、20世紀の歴史を見れば明らかです。

ということで、現代社会が抱える闇というマイナスに見える側面はますます大きくなりつつあるのですが、コインの表と裏のように、同時にプラスに見える側面もますます大きくなりつつあります。

そのプラスに見える側面の例としては、まず、人々の意識が進化していることが挙げられます。

あまりにも目の前に展開する物質社会が混乱してくるにつれて、私たちの精神はそこに違和感を見出しやすくなり、外側の物質社会にはない何か精神的な豊かさを心の内側に求めるようになるのは、ある意味必然的と言えるかもしれません。

心の中に精神的な豊かさを求めるプロセスにおいて、私たちは、もっと人と人とのつながりの素晴らしさやお互いを支え合い愛し合うことの喜びに生きる価値を見出しつつあります。

それは、利益を度外視したネットワークの普及や、さまざまなスピリチュアルな教えの広まりなどに見られます。

歪んだ競争社会で多大なストレスを抱えたり脱落したりして苦しんだ人ほど、内面の豊かさを求める衝動は大きく、結果、人生に本当の幸せを見出して生きることができるようになるのです。

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