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非常時だからこそ、気づく幸せもある

台風から一夜明け、すっきりと晴れた朝。
近所で停電になっていたところもあったみたいだけれど、幸運なことにライフラインも無事だった。

とはいえ、「経験したことのないほどの巨大台風」はさすがに怖い。
平日中に食材や水の確保、できる限りの充電もしていた。それでも、テレビでは1日中台風の中継が目に入り、現実を目の当たりにしながら感じていたのは言葉にできないぐらいの不安と恐怖。

台風15号の被害の甚大さをつい先月思い知らされた直後に、初めての大雨特別警報、鳴り続ける緊急速報、テレビから流れる荒川が氾濫した場合のシミュレーション映像……。荒川が氾濫したらこのあたりはどうなるんだろう、海抜低いけど、1階に住んでいるわけじゃないから家にいた方がいいのかな、それとも避難した方がいいのかな、なんていつもぼんやりどこか他人事のように考えていたことがいざ自分事になると思考が止まる。正解が分からない判断を迫られ続けるストレスは相当で、避難が遅れる気持ちも分かった気がする。

気圧の変化に体調もどんどん悪くなり、近所が停電するぐらいに暴風雨が吹き荒れる中、一向に眠れそうにない夜を過ごしていた。

台風の目に入ったのか外が静かになった時間、インスタグラムを開くと、ちょうど知り合いのヨガインストラクターが「シンギングボウル」の演奏をライブ配信を始めたところだった。台風で不安な夜だから、少しでも癒しを……とのことで配信を決めたらしい。

初めて演奏を聴いたけれど、不安で胸の中に真っ黒なものを抱えていたような気持ちが、するするほどけていった。やわらかい音色が心の奥まで染み込んできて、深く息ができるようになってじんわりと体の力が抜けていくような不思議な時間。

あれだけ吹き戻しにおびえていたのに、いつの間にかすっと眠りに落ちていて、気づいたら差し込んでくる明るい陽射しに起こされる心地のいい朝を迎えていた。

まだ停電していたり、河川の氾濫や浸水によって大きな被害が出ていることは胸が痛いし、ボランティアなのか募金なのか自分ができることはやりたいと思う。当たり前の毎日を脅かされる恐怖を身をもって体感したから。

*

一方で、どうにもできないことで不安になったときの対処法を1つ覚えることができた。
シンギングボウルの音色の様にやわらかい時間をつくること。自分が落ち込んだところで何もできないし、少しでも元気でいることの方が大事だと思うから。そうでないと、人に手を差し伸べるなんてできないし、変なところ繊細で生きていくのがしんどくなってしまう自分はいつまでも沈んでしまう。

そういえば、と思い返すと、
つらいときやしんどいとき、元気を出したいときに有効なのは特別な経験をすることだけじゃない。

好きな音楽を聴く、紅茶をいつもよりも丁寧に入れて少し甘くしてみる、スキを押しておいていた記事を読み返す、本を読み返す、お気に入りの映画を見直す、ときめく写真を見返す、うれしかった言葉を思い返す……

自分を立て直す方法は自分の中にあったり、自分の周りにいる人に教えてもらえることがほとんど。
そう考えると、自分のやってきたことや築いてきたことはきっと間違っていなくて、近くに幸せってあると思う。使い古されている言葉だけれど、きっと真理。わくわくするのか、噛みしめたくなる喜びなのか、ふと立ち止まって切り替えるスイッチなのか、の差はあれど。

フラットな自分で入れる方法を思い出す・レパートリーを増やすことの大切さを、緊急時に教えてもらった気がする。そして、少しだけでも不安を感じている人の助けになりたい、とも思うようになった。
皆様が早く平穏な日々に戻れますように。

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