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【エッセイ】ワタシの生活

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ワタシの何気ない生活をエッセイにしようと、月に1回ひねり出して書いています。 それらをココに残したいと思います。 一つでも読んでいただけたら嬉しいです。
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#創作大賞2023

【エッセイ】推しの歯科衛生士

定期的に通っている所がある。美容室とネイルサロンと、そして歯科医院。かかりつけの歯科医ではなくて、歯科衛生士がいる。今どきの言葉を使うと、私は彼女を推している。 彼女との出会いは、かれこれ10年前に遡る。歯に違和感があり、近所の歯科医院へ飛び込むと彼女がいた。年齢は私と同じくらい。 「歯茎の色が良くないですね。まずはお口の中をきれいにした方がいいですよね?」 彼女がそう言うと、歯科医は「そうだね。そうして」と答えて、奥に引っ込んでいった。 「この歯科医院は、先生より歯科

【エッセイ】私たちの先生が「時の人」となった

「本当にありがとう。僕は幸せな男だよ」 河崎先生のこの言葉を聞いたとき、「お祝い会」を開催してよかったと思った。「令和のわらしべ長者」となった先生を、旧受講生たちと祝うことができて本当によかった。 2019年、河崎先生による「令和版わらしべ物語」が始まる。 朝日新聞の投稿欄に、亡き奥様の遺品を手放す真情を吐露すると、多くの励ましや賛同の声が届いた。「泣ける」「前向きに終活できそう」とSNS等で大反響を呼び、あっという間にラジオ放送、テレビ放映、新聞特集、私たちの先生は「

【エッセイ】noteという街に住まう

 私には裏の顔がある。本名を出さないからできることがある。といっても、世間様に顔向けできないようなことではなくて、エッセイや写真日記を細々と書いては投稿している。だから本名だとばつが悪い。  裏の私は「はられ」と名乗って、noteというインターネット上の街に住んでいる。街のことは、エッセイ講座のNさんに教えてもらった。  note編集部の言葉を借りると 「だれもが創作をたのしみ、その過程や作品を発表して、応援しあう場所です。アマチュア、プロ、個人、法人を問わず、たくさん

【エッセイ】カイロなメイドさん

「まあ、仲良くやってよ!」 夫はそう言うと、仕事に出かけた。 エジプト・カイロに着いたのはクリスマス前。カイロで働く夫と年末年始を過ごし、3月には夫の誕生日を祝い、4月中旬に帰国する、そんな予定で日本からやって来た。  はるばる来たのだから、街歩きを楽しみたい。しかし、ここカイロもコロナ禍にある。ステイホームとなる私にとって、一番の関心事は、毎日やってくるメイド。どんな人だろう? 気が合う人なら、きっとステイホームも楽しくなるはず……。  午前10時半、ドアベルが鳴っ

【エッセイ】真珠のネックレス(テーマ:糸)

今から30年前、真珠のネックレスを譲り受けた。 「これをあげるわ。結婚したら、冠婚葬祭のお付き合いが増えるでしょう」 母が大切に身につけていたもので、一人前として認められたようで嬉しかった。 o゚o。o゚o。o゚ 初めてつけたのは、自分たちの結婚式。ウエディングドレスと一緒に、キラキラ光るネックレスも準備していたが、式の当日、「違う!」と思った。そばにいた母は、真珠だと地味になると反対したが、彼と生きていくという決意表明の場なのだ。派手なイミテーションよりも、作り物ではな

【エッセイ】19歳の思い出

先日、大掃除をしていたら『フィリピン体験学習の思い出』という文集が出てきた。 o゚o。o゚o。o゚ 今から35年前の夏休み、同年代の男女20人とフィリピンを訪れ、帰国後、みんなで感想を1冊にまとめた。当19歳の私にとって、初めての海外旅行だった。どんなことを感じ、どんなことを書いたのだろう。恐る恐るページをめくる。 まず、2週間の旅のスケジュールが書かれていた。首都マニラでは、マザーテレサの孤児院などを訪れた。その後、バギオという地方都市に移動して、ホームステイを体験し

【エッセイ】ワタシのカイロな生活

6時15分、スマホのアラームが鳴った。起きる時間だ。寒いので、ベッドの中でストレッチをしてから起きる。2月になっても最低気温は11度まで下がる、なんて言ったら、日本にいる人々に怒られそうだ。 台所へ行く。昨晩から水に浸けていたお米に、蜂蜜を少し垂らして炊飯器にセットする。こうするとエジプトのお米も日本人好みになる。ザクロとマンゴーを切る。エジプトは果物が安いので、果物好きの私は本当に嬉しい。夫がノートパソコンを持ってダイニングに来た。インターネットにつなげば、NHKのニュー