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なぜ、ムール貝にはシャブリがあうのか?

シャブリとムール貝の組み合わせは、相性がよいとされています。土壌の石灰や貝の化石がワインのミネラル感に寄与するという〝キンメリジャン説〟は、長い間ワイン界で語り継がれてきました。しかし、ぶどうの根が土壌から吸収するのは水と栄養素であり、キンメリジャン土壌に含まれる石灰質や貝の化石、ミネラル分がそのままワインの味に直接的な影響を与えることはないと考える科学者や研究者は少なくありません。

では、なぜシャブリがムール貝にこれほどよくあうのでしょうか?それは、シャブリが有する「神秘性」にあるとわたしは考えています。「キンメリジャン」という土壌が持つ壮大な物語が、シャブリを楽しむわたしたちに「神秘的な感覚」を呼び起こしているのです。数千万年前、この地が海であったことを想像するとき、ムール貝の自然な海の風味とシャブリの澄んだ酸味の組み合わせは、まるで1億年以上前の白亜紀時代がワインを通じてフラッシュバックするかのような意味を感じさせます。これこそが、わたしが唱える「神秘性」なのです。

「J. モロー エ フィス」の2021年ヴィンテージとムール貝のワイン蒸し~レモンバターソース~とのマリアージュ。シャブリは洗練されたミネラル感と酸味で、ムール貝の豊かな風味を引き立てますが、「神秘性」を考えると、味覚の相性以上に、両者の関係には、地質学的かつロマンチックな物語が広がる夜となるのです。


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