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『CROSS DRESSER』Vol.9

本作は女装How toメールマガジン『CROSS DRESSER』をリライトしたものです。

◆How to メイク:アイライン
ファンデーションをつけおわり眉を描きおえたあとはアイライン。異論もあろうが私はこの順序。

およそメイクのなかでこのアイラインが最も難しい。そのくせ口紅やアイシャドーといったアイテムにくらべると派手さに欠けるので、ややもすると手を抜かれがち。なかにはめんどうがって描かない人さえいる。
 
これはいけない。アイラインはメイクのなかで最も重要なアイテムであり、その成否がメイクの明暗をわける。それはそのまま表情に顕れ印象を決定づける。ルージュを怠っても、アイラインを怠ってはならない。
 
上まぶたはリキッドタイプ、下まぶたはペンシルタイプのアイライナーで目頭から目尻にかけてまつ毛の根元にぴったり沿ったラインを引く。上まぶたは持上げて、下まぶたは引下げて固定し、まつ毛の隙間を埋めるようにラインを入れる。
 
上のラインは目頭から三回に分けて、下のラインは目尻からすこしずつ描き足していくと失敗しにくい。もし失敗したら綿棒で修正。ただしリキッドタイプは乾ききってから。アイブロウ同様、アイラインも太くなりがち。ゆめゆめパンダにならないように。
 
アイラインはまばたきが許されず、描き損じるとやっかいなので失敗も許されない。危険をともなう作業であり、針に糸を通す集中力と一筆書のテクニックが要求される。それだけに、きれいに引けたときの悦びはひとしおである。

◆Nightcap〈9〉
建物自体は雑居ビルだったようで二階から上が売場になっている。エレベーターは見当らず、うす暗い階段の壁には輸入ランジェリーや女装ビデオのポスター、ビッグバーゲンの手書きポップなどが貼られている。
 
開け放しのドアを入ると店内はめったに客の来ないスーパー二階の婦人用衣料品売場のような趣だった。さまざまなハンガーに吊るされたワンピースやブラウスやスカート、壁際の棚に並べられた夥しい数のショーツ、ブラジャー、ガードル、その脇に化粧品、その横に靴とかつら、そしてつくねんと立つマネキン人形……。
 
レジは入口の横。珍しく、いや、むしろふさわしくと云うべきか、女性が坐っている。彼女は手許の台帳に目をおとしたままいっかな顔をあげようとはしない。

Thanks reading, See you…



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