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第4章-1 (#20) 逢いたい[小説]34年の距離感 - 別離編 -

 才女で清楚なお嬢様。星ケ丘女子高の生徒は男子の憧れ。高嶺の花。制服のセーラーの襟に付いている星は、星ケ丘女子伝統のステイタス。入学して2ヶ月。すでにこの学校の古くからのイメージに辟易している。

「先生。うちの親は勉強できるとかえって迷惑だって言ってる。進学させる気はない。星ケ丘女子でがんばって勉強したって無駄なんだよ」

「星ケ丘南じゃ、ぶっちぎりの一番です。なんでこんなに優秀なのにって、周りから浮くよ。それよりなにより、月桜るな自身が物足りなくなる。月桜、よく考えて」

 将来なんて諦めてたから、星ケ丘南でいいと思ってた。だけど、担任のこの言葉がずっと引っかかっていた。大学進学なんて、とてもじゃないけど親に言い出せなかったわたしの代わりに、三者面談で担任が親に言ってくれたんだよね。

月桜るなは力のある子なんですよ。星ケ丘女子に行かなきゃもったいない。お母さん。大学進学を視野に月桜を星ケ丘女子に行かせてください」

 先生。あなたの言ったとおり、レベルは星ケ丘女子で間違いなかった。だけど、この学校でも十分浮いてるよ。わたし、ここで友だちはできそうにない。

 あれから朔玖さくには気持ちを伝えられないまま、和乃かずのとも絶交したまま、すでに高校生活も2ヶ月が過ぎようとしている。

 和乃は同じ星ケ丘女子高に進学したから、ときどき校内で見かけている。廊下や自転車置き場で鉢合わせるたびに、おもいっきり視線を反らされて無視される。無視されるたびに心が痛むけど、その数秒だけ耐え忍べば、後はなんとか頭の隅に追いやることができるようになっていた。クラスが分かれたことがせめてもの救いだ。

 和乃には、高校入学前、春休みに手紙を書いた。わたしの言動が和乃を深く傷つけてしまった。反省している。許してほしい。

 和乃はちゃんと郵送で返事を送ってくれた。だけど、内容はより厳しいものだった。

 “月桜は八方美人だから、そうやって誰にでも優しくするんでしょう? ほんとはわたしのことなんか大嫌いなくせに。そういう、月桜のいいこぶりっ子なところ大嫌い。わたしは月桜と仲直りするつもりはない”

 いいこぶりっ子か……もう何かアクションを起こせば起こすほど、和乃との溝は深くなるだけだ。朔玖のことを諦めたところで、和乃に許してもらえるわけじゃない。わたし何のために、こんなに我慢してるの? 朔玖が好き。朔玖に逢いたい。

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