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第3章-4 (#16) このままでいいの?[小説]34年の距離感 - 別離編 -

 3学期。これが中学最後の席替え。朔玖さくは窓際の一番後ろ。わたしはその前の前。

 くじ運がいいのか悪いのか? 朝学習のプリントは、一番後ろの人が列ごとに回収することになっているから、毎朝必ず朔玖にプリントを渡すことになる。たかが紙っぺら一枚渡すだけなのに。このぎこちなさたるや。これじゃまるで、毎朝クラスメイトに「朔玖が好きです」って公言しているみたいだ。

 朔玖とわたしの間に座っている美琴みことに、毎回のようにからかわれる。

「後ろ振り返って『月桜るなが朔玖のこと好きだって』って言ってあげようか?」

 うわぁ。きっと今わたし顔が赤くなってる。恥ずかしくて俯いていると、美琴がさらに煽ってくる。

「月桜。もうすぐ卒業だよ。朔玖と逢えなくなっちゃうよ。このままでいいの?」

 朔玖が好きだなんて、誰にも打ち明けたことがなかった。だけど、なんかもう限界。クラス全員が知ってるっぽいし。毎朝美琴に煽られるし。もう素直に認めて楽になりたい。

 親友の浩緋はるひとの帰り道。「今日こそは浩緋に打ち明ける」という決意を心に固めながら歩いていた。受験生なのにごめん。いつもならすんなり帰るところを、浩緋との分かれ道で呼び止めた。

「浩緋。相談したいことがあるの」

 ずっと前から朔玖が好きだったこと。毎朝美琴にからかわれてること。告白しようか悩んでいること。やっと言えた。

「月桜の態度見てたら、誰だって気づくよ。でもさ。なんか意外なんだよね。月桜が選ぶ人が朔玖っていうのが」

「朔玖じゃ……へん?」

「男の趣味は人それぞれ。でもよかった! わたし絶対月桜とは被らないわ」

 それじゃオトコノシュミガワルイみたい。なんか傷つく。

「告白……した方がいいよ。月桜が気持ち伝えたいなら」

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