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第3章-5 (#17) 宣戦布告[小説]34年の距離感 - 別離編 -

 話に夢中でぜんぜん気づかなかった。和乃かずの、いつからそこにいたの? 今の話、聞いてた? 朔玖さくが好きだって。告白したいって。どうしよう。和乃に知られてしまった!

 わたしたちに追いついた和乃は、追い抜いて帰ることもできずに、角の酒屋の物陰に隠れていたらしい。浩緋はるひと別れて、同じ道に向かう和乃とふたりで歩いていた。

 和乃にだけは知られたくなかった。長濱ながはまくんの悲しい思い出が、浮かんでは消え、浮かんでは消え、また和乃に余計なことをされるんじゃないか? という不安が大きくなっていく。和乃もきっと長濱くんのことが好きだったんだろう。

 どうしてまた同じ人……実は密かに気になっていた。和乃も朔玖が好きなんじゃないか? って。今度は邪魔しないで。この恋は失いたくない。

 和乃の軽い嫉妬が原因であんなことになったなんて、和乃は知るよしもない。和乃は何も知らないとわかっているのに、それでも抑えていた怒りが爆発してしまった。もう止められない。

「さっきの話、聞こえてたよね?」

「うん」

「もし和乃も朔玖が好きだとしても、わたし気持ちが抑えられない。友だちなのに、とか。抜け駆けして、とか。そんなふうに思われたくない」

 好きとも好きじゃないとも言わず、和乃はずっと黙っている。

「もし和乃も朔玖が好きなら、フェアに戦って」

 宣戦布告。堂々、恋のライバル宣言だ!

 どうしてまた同じ人……和乃に嫉妬されて邪魔されるのは、もう嫌なんだよ。誰かに遠慮して気持ちが伝えられないのは、もう嫌なんだよ。我慢するのは、ひとりで泣くのは、もう嫌なんだよ。朔玖は失いたくない。

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