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忘れまじ食べ物の恨み

仕事恋愛金銭関係、怨恨にも色々あるけれど、意外と気が付くとスーッと忘れていることが多い。が!やっぱり忘れられないのは、食べ物の恨み!!!実は今までで一番ヒドイ夫婦喧嘩も、食べ物をめぐってだったような気がする・・(後述致します・・)。

料理したり美味しいものを食べたり、食べ物の事を考えるのは好きだけれど、記憶に残る怨恨が食べ物ばかりというのは、やっぱり自分はイジキタナイのかなぁ・・とちょっと悩んでしまう。でも食べることは生きる基本だし、きっと本能がそうさせるに違いない・・・ということにしておいてください・・

フルフルの恨み

一番古い食べ物の恨みの思い出。その矛先が向けられるのは、やはり弟。幼少時、我が家ではなぜか親に頼んでも絶対に買ってくれない食品があった。それは・・・

フルーチェ

牛乳と混ぜるだけで・・・なんだかふるふる、爽やかで美味しそうなデザートができるのに・・。

シャービックとか、ゼリエースとか、プリンのやつとかはオッケーだったのに、なぜフルーチェだけ、買ってくれなかったのかは未だに不明。

が、とうとう我が家にもイチゴ味のフルーチェを家で作る機会が訪れた!!ボウルに牛乳とフルーチェの素を入れてかき混ぜ、ちょっと冷やしておこうとラップを掛けて冷蔵庫へ。

いい感じに固まったところでさあ食べよう、とワクワクして冷蔵庫を開け、ボウルを取り出したとたん・・・弟に奪われ全部食べられた・・・!

あれだけ憧れだった食べ物を、小さな弟が全部食べてしまった時のショック。

・・目が覚めた後も、私は恐ろしいくらい怒りに打ち震えておりました。

はい、フルーチェを作ったのも、弟に食べられたのも、全部夢だったのです。

でも私の怒りは収まらず、夢の中で盗み食いをした無実の弟をぶった。弟、理不尽すぎてごめん。忘れられない、幼稚園か、小学校1−2年生ぐらいの時の話。

砂糖と空気の恨み

旦那が忘れない、食べ物の恨み。

ワシントンDCに住んでいた2004年、最近日本では縮小しつつあるらしい「クリスピー・クリーム」の店舗がとうとうDCにもオープンした。開店前から皆その話で持ちきりで、開店準備中の店のウィンドウは店内を覗く人の手形や顔の脂でとってもキタナクなっていたくらい。

給食の揚げパンが一番キライなメニューだった私は、ホーマー・シンプソンがなぜあんなにドーナツを愛するのか理解できなかったけれど、クリスピー・クリームのドーナツはアメリカでも他のドーナツとは「分けて」語られるほど別格なんだとか。

まず宣伝をほとんどしていない。レシピも秘密。ダンキンドーナツと比べても、店舗も少ない。でも店頭で作られるドーナツは、「砂糖と空気を食べているような」感じで一度食べたら忘れられない、らしい。クリスピー・クリームが株式上場したときにはえらい騒ぎになっていたくらい。

オープンの日は早朝から並んで一番乗りの人にドーナツ一年分がプレゼントされるというので、朝からものすごい人が店を囲んでいた。笑えることに一番乗りした人はオーソドックス・ジューイッシュの人で、クリスピー・クリームのドーナツはすべてコーシャー(ユダヤ式にお祈りしたり処理したりした食材)じゃないからもらっても食べられなかったらしい(なら何故並んだー!)。

我が家も店に足を運んでみたが、夜中なのに大混雑。匂いは日本のミスドみたいな感じ、でもなぜか店にいる人たちの顔は皆ニヤニヤ。それもそのはず・・ショーケースに並ぶドーナツはぴかぴかつやつや光り輝いていたのだった。

狭いフロアの後ろから、さらに揚げたてのドーナツがガンガン運ばれて来て、それをみんな12個とか箱買いしていくのだけれど、横を見ると衣装ボックスぐらいの箱に20個ほど詰め込まれたドーナツを、野獣のように食い漁っている大学生が二人。

そしてドーナツを買いにくるオマワリサン、というのをはじめて目撃したのもここだった(アメリカではなぜか警察=ドーナツ好きのイメージがある)。自分にとってはバナナの皮で滑って転んだ人を目の前で見るくらいの快挙!!!!!

店の中にいるたくさんのお客は並んでいるのだと思っていたら、ただただショーケースに見とれて何を選んでいいかわからず軽い錯乱状態に陥っている様子。みんな「お先にどうぞ」とめちゃめちゃ笑顔である。

もちろんそんな中から我が家がチョイスしたのは、オリジナル・グレーズド。確か、1個75セントぐらいだったと思う。注文したら、裏からできたてほやほやを持ってきてくれた。

一口食べて、Oh my gosh! 

奥さん、何なのこれは!!!ドーナツじゃなくて、これは本当に空気と砂糖だよ!!!

気がついたら、30秒ぐらいでペロッと一つ食べていた・・。

そしてふと横を見ると、ドーナツを2人で分けようと、一個しか注文しなかった旦那が恨めしそうに立っていたのであった・・・。Σ(゚Д゚)

1個75セントだし、あんな小さくて軽くて美味しいものを分けようなんて考えそのものが間違っている!ともう一個後で頼んだのに、今でも時々言われます。

旦那、すまん。

最近は公平を期すため、何かシェアする時には軍事境界線がしっかり引かれるようになりました。

・・・気が付くとどうも私が謝るべきばかりの事例を挙げてしまったが、「6つあるものを旦那が4個食べた」とか「夏、久しぶりの日本帰省時、今半の前を通りかかり、すき焼きを食べたいという私の切実な希望を、暑さにやられた旦那が『この暑いのに狂っている』と無碍に却下して喧嘩になり、食べられなかった」とか、旦那に対する食べ物の恨みだってつらつらと・・

一番恐ろしい、母の恨み

と、上記はくだらないアホ話ばかりだが、食べ物に関して、絶対ないがしろにしてはいけないと思うのは、妊婦、そして授乳中のお母さんの食欲と、ホルモンでおかしくなっちゃった感情で間違いない。

妊婦になり、出産を経験し、母になるという過程で、何か今まで蓋をされていた、人間の動物としての本能を呼び覚ますような感覚を沢山経験したなーと今でも思う。

自分ではない、お腹の中にいる小さい人を育てるため、自分の頭とは全く別のところで何かが食べたくなる。しかも何でも食べればいいというわけではなく、その時々によって取り憑かれたように特定のものが食べたくなったりする。

さらに妊娠中はホルモンのせいで涙もろくなったり感情的になったりするので大変。妊娠初期には、近所のスーパーで買ってきたごく普通のピザがあまりに美味しくて感動し(味覚もおかしくなる)、皿の上の最後の1スライスを食べてしまった時、

今この瞬間に、私の目の前にあった、あんなに素晴らしく美味しかったこのピザという唯一無二の存在が、この世から完全に消えてなくなってしまった・・・・!」ということが異様に悲しくなり、大号泣した。

妊娠も中盤から後半に入るとそれもだいぶ落ち着くけれど、出産後今度は授乳の時が大変。授乳ってそれだけで毎日10キロぐらい走っているのと同じくらいカロリーを消費するとか何とか。実際、お腹がぐうぐう鳴るとか、そういうレベルではない、もっと根本的な飢えというか、飢餓の感覚に襲われた。

しかし、赤子といると最初は自分の時間どころかトイレに行ったりシャワーを浴びる時間さえうまく取れないような状態では、ろくに食事を作ったり摂ったりできない。とにかくあいた時間にキッチンで立って何かをかき込む、毎日が立食パーティー状態。

なので、出産前にすこしづつ用意して、冷凍しておいた食糧を、気づけば育児休暇で2週間ほど家にいた旦那がほぼ平らげた時にはものっっすごい殺意を感じたし、親戚が子供を見にどやどやとやってきた時も、食料調達を申し出る親戚に「菓子パンでいいよ」と対応している旦那に、菓子パンじゃ足りん!!!飢え死にさせる気か!と号泣したことも・・(苦笑)

一番激しく旦那と喧嘩したのも、妊婦の時。きっかけは、散歩しながら美味しいお米について話をしていたこと。日本では品種改良をすすめ、いかに美味しいお米を作るか新しい品種が色々出ている話をしたところで旦那がひとこと「米なんて、みんな同じじゃん」。

なぜかこれにぶっちーんと切れた私、驚くほど頭にカーッと血が上り、タイ米も中国米も日本米も全部味が一緒だというのか〜!!日本のコメ農家の努力を鼻で笑うのか〜!!!オイコラ!!!!!!と泣きながら怒り、口論になった。しかも路上で。

あー恥ずかし。

食べ物の恨みなんだか、妊婦のホルモン怖い話なんだか最後はわからなくなってしまったので、とりあえず今回、これを書くにあたって、恨みの一つを成仏させるため、フルーチェをとうとう買ってみた。

カリフォルニアに住んでいると、日系スーパーで普通に買えるのが有難い。知らない間にフルーチェも進化していたようで、「贅沢フルーチェ」みたいな豪華版ばかり売っていたが、敢えて夢見ていた普通のを試してみた。

夢のなかでは冷蔵庫に入れてワクワクしていたが、おお、冷たい牛乳と混ぜればすぐに固まる。

いい大人なので、これをボウルごと食べることも可能だが、家族と仲良く分けてみた。・・・が、選んだフレーバーが悪かったのか、甘い咳止めシロップみたいな味で3口でギブアップ。5歳の娘に至っては「ママ、これはもう次買わなくていいよ」Σ(゚Д゚)ガーン

親が買ってくれなかったのは、実は正解だったのか・・マジでこれを食べてスッキリしようと思ったのに、思わぬ結果に、親ゴメン、とまた私が心のなかで謝る結果となったのであった。トホホ。

(皆さんの恨みエピソードもぜひ知りたいです。(笑))

Cover photo by Scott Ableman via Flickr

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